第三話 夢寐反芻「孤」
12月25日。
私のキリストは死んだ。
三日たった今日も復活せず、もうすぐ四日目を迎えようとしている。
いや、正確には死んだというよりいなくなったが適切だろうか。
まぁその差など、私にとっては無いものに等しい。
縋っていたものが私から離れ消えた失せた。
これは揺るぎない事実だ。
「……醜いな」
声は部屋の中を巡るも、すぐさま静寂が帰ってきた。
――何を間違えたのだろうか。
三日を費やしても解けなかった問題を、再び解き始める。
もう意味がないということは勿論理解している、つもりだ。
これはただの逃避行為。
自身を傷つける事を罰として逃げているだけに過ぎない。
しかし、人間とは不思議なものだ。
頭では無駄ですらない、むしろマイナスなことだと理解しているのにもかかわらず、体は止まらない。
むしろ理解すればするほど、加速度的に自傷の頻度は高まっていく。
――スマホが鳴った。
上半身を起こし、スマホを取る。
音の正体は、0:00を示すアラームだった。
三日目が終わった。
四日目が始まった。
投げ捨てるように置いたスマホは、机を滑って落ちていった。
意味もなく少し見つめた後、体は倒れる。
視界いっぱいに天井が広がった。
どこまでも均一で、感情のない白。
それをぼんやりみていると、なぜか涙が溢れてきて、体は顔を枕にうずめた。
最高のマットレスに体を預け、最高の枕に顔を沈め、最高の布団に包まれる。
それなのに、眠気が訪れる気配はない。
腕を伸ばし、周りに居る四体のぬいぐるみを抱き寄せた。
陸軍総司令官のオオカミ・リュカオーン。
誕生日に歩さんから貰った。
海軍総司令官のサメ・カモホアリ。
ゲームセンターであなたが取ってくれた。
空軍総司令官のタカ・ヴェズルフェルニル。
空が居ないから自分で買った。
そして……本夫の黒猫・ペチュニア。
あなたから初めて貰った、誕生日プレゼント。
柔らかなぬいぐるみを抱きしめながら、記憶だけが鮮やかに蘇る。
今日は久しぶりに、心の狭さを思い出した。




