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選ばれなかった者
「あなたが、勇者……では、ありませんね」
目の前に現れたのは、白いローブを着た少女だった。
年は同じくらいに見えるのに、声は不思議と落ち着いている。
「え、勇者? じゃないの?」
思わず聞き返すと、少女は申し訳なさそうに首を振った。
「本来、この世界に呼ばれるのは“資質ある者”だけです。でも……」
彼女は言葉を選ぶように、少し間を置いた。
「あなたは、間違って来てしまった」
それは、あまりにも残酷で、正直な宣告だった。
剣も魔法も使えない。
特別な能力もない。
ステータス画面すら表示されない。
彼は、異世界に来たのに――
何者にもなれなかった。
「元の世界に戻れるの?」
そう聞くと、少女は首を横に振った。
「戻る方法は……まだ、見つかっていません」
「“まだ”?」
その言葉に、ほんの少しだけ希望が混じっていた。




