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第三話『信者』




「花食亭」で働き始めて三年。

あのクソ家族、いや元クソ家族が

アタシを探している様子はないようです。


覚える事が多すぎてあっという間に

三年経ってしまい、アタシもあの連中を

思い出す事はほとんどありませんでした。

すっかりマリーだなんて名前は枯れて、

「アネモネ」という名前だけが

胸に咲いています。


髪の毛の傷みも一度バッサリ切ったからか

マシになり、保湿クリームをもらえるお陰で

あかぎれもだいぶ良くなりました。

食事にも困らないので体重も増え、

食材を買うお使いも息切れなくこなせます。


パンジーさんからは料理や

店の仕事だけではなく、簡単な文字の

書き取りや計算も教えてもらいました。

メニューに書かれた金額をただ

受け取るだけじゃなく、複数人の会計も

計算出来るようになったんです!


お店に来てくれる人で友達が出来たり、

毎日が楽しくて仕方がないんです!

態度が悪いお客さんも時々いますが、

パンジーさんが叱りつけると

大人しくなるので怖くありません。

それに、アタシもこの三年で

かなり図太くなりました!




その日も一日の営業が終わり、

出たゴミを捨てるために店の勝手口から

裏手に出た時の事。



「……。」



「おわっ」って声が出ましたよ。

身体中に火傷の跡が残るボロボロの

見た目の男の人が、建物の壁に寄りかかる形で

倒れていましたから。

裏路地には時折死体が転がっている事が

ありますが、花食亭がある場所は

比較的治安の良いエリアです。


明らかに厄介事の男の人は、

今にも死にそうなほど痩せていて。

パンジーさんに拾われた頃のアタシみたいに

ガリガリで……放っておけなかった。



「……何の用だよ。」


「ここ、アタシが住んでるお店なので。」



近くで見て気付きましたが、

この人は身体だけじゃなく顔の半分にも

ひどい火傷を負っています。

少しほどけた包帯から見えた片目は

明らかに濁っていて、視力はないんでしょう。



「……放っとけ、オレに神なんて居なかった。」


「放っておけません!

いいから来てください!」



痩せた男の人は、感情のない掠れた声で

突き放すような言葉を話しました。

でも花食亭の裏で死なれても困りますし、

お腹が減ったままお客さんを帰す訳には

いかないんです!


彼のボロボロの服を引っ張って、

花食亭に入るように促します。

この人、ちょっと見た目が怖いですが……

パンジーさんみたいに胸を張って、気弱さから

程遠いふてぶてしさ満載で対応しました。


そうしたら男の人はしばらく無言でしたが、

ため息を吐いて諦めたように

空を見上げました。アタシの勝ちです!


すぐにパンジーさんに話して

空いている部屋に入れてもらいました。

運んだ時、アタシやパンジーさんより

うんと背が高いのにとても軽くて、

何故か泣きそうになりました。


で、この大男さん用に

アタシがここに連れてもらって来た時、

パンジーさんが食べさせてくれた

薄めのお粥を作って、部屋まで

持っていったんですけど……

全然食べてくれないんです!

アタシが頑張って作ったご飯を

食べないですって!?



「ここ、ご飯を食べるところなんですよ!

食事処で餓死者を出せって言うんですか?」


「……それがお前の“教え”か?」


「教え……?

たぶんそうです! はい口開けて!」


「……。」



口元までスプーンで掬って

うりうりしてたんですが、“教え”だとか

なんだとか言い始めたんです。


「変な人だなぁ」と思ってたら、急に

素直に食べてくれるようになって!

ご飯を食べ始めたら順調に体調も

回復したみたいで良かったん……ですけど……。







「おい、女神様。

次は何をすればいい?」


「アタシ、女神様なんて

大層なモノじゃないんですけど……

あそこのテーブルのお皿を下げて、

洗っといて。」


「ほいよ。」



何故か、「女神様」って

呼んでくるようになっちゃって……。

理由を聞いても「オレの信じる神が

お前になっただけ」とかよく分からない事を

言われました。

神様なんていませんよ、私を救ってくれたのは

神様じゃなくてパンジーさんでしたし。


でも、男手もいた方が楽だからって

パンジーさんが雇っちゃったんです!

確かに仕事は真面目にこなしますし、

暴れるお客さんとか無銭飲食したバカを

大人しくさせるのも簡単にやっちゃうし……。


あ、名前が無かったみたいなので

アタシがつけました。

アタシの信者だそうなので「シンジャ」さん。

本人も「それで良い」って言ってたので

正式に決定です!


シンジャさん、パンジーさんの

指示じゃなくて、アタシの言う事しか

聞いてくれないのでとっても大変で。

お客さんの一人がふざけて

アタシを「女神様」って呼んだら、

怒りに怒ってナイフ持ち出すしで……

何とか苦労しながら上手くやってます。

仕事はちゃんと出来る人なのになぁ……。


うわ、またアタシにお祈りしてる。















ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー



名前:シンジャ

赤ん坊の頃にとある女神を信仰する

カルト教団に誘拐され、そのまま暗殺者として

育てられた年齢不詳の男。


最初は教団の教えを信じていたが、

腐敗した実態を目の当たりにし

「女神はいなかった」として、

教団の教祖、幹部、信徒を全員殺す。


教団建物に放火して起こした火事で

自らも死のうとした。

しかし、全身に入れられていた

教団の紋章タトゥーが火傷により消えはしたが

死に切れず、そのまま放浪。

(暗殺者として育てられる過程で

施された“調整”により、異常なまでの

頑丈な身体をしていた為)


餓死しようとしていたところを

アネモネに拾われる。

問答無用で自分を生かそうと

食事を押し付けるアネモネに“女神”を見出し、

彼女の押し掛け信徒になった。

ちゃんとした宗教を信仰していた訳では

無いので、使う用語がズレていたりするが

本人は気にしていない。

同担拒否。



〖グラフ見本〗

危険性A……アネモネへの危険性(監禁など)

危険性B……アネモネ以外への危険性

戦闘力……どれだけゴリラか

知力……どれだけ賢いか

個別の何か……アネモネに対して抱いている何か


〖グラフ〗

危険性A……☆

アネモネにただ従う。

アネモネ以外には従わない。


危険性B……☆☆☆☆☆

普通に殺人が選択肢に入っているので

非常に危険。


戦闘力……☆☆☆☆☆

白兵戦は勿論、暗殺も得意。

どこからともなく現れる。


知力……☆☆☆

学自体は無いが、飲みこみが早いので

教えれば教えるだけ学習する。


崇拝度……☆☆☆☆☆

朝昼晩と三回、女神(アネモネ)

祈りを捧げている。

自分以外がアネモネを「女神」呼びすると

めちゃくちゃ怒るので注意。








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