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第十話『天国』




アタシがあのクソ実家を出てから

十年経ちました。

……節目とも言えるこの年、

王国を揺るがす大きな大きな騒動が

起きて、貴族も平民も大忙しの一年を

過ごしたんです。

勿論アタシも例外じゃありません。


まずは一つ目、アタシの

元両親が処刑されました。

際限なく悪事が発覚し続け、処刑が

決まるまで時間がかかってしまったとか。

妹は借金返済する為に労働刑になったそうです。

かなりの額の借金をしてたみたいで、

もう会う事はないでしょう。

冷たいかもしれませんが、アタシは

あの子にもう会いたくありませんし。


そして二つ目。

実は、この国の王様は亡くなられたんです。

突然の訃報でしたが、国民には持病を隠して

最期まで政務をこなしていらしたそう。

その後、第一王子様が次の王様になって

新しい国が始まりました。



しかもなんと! カミィはその王様の

実の子どもだったんですって!

でも王妃様の子ではないので、

継承権は持たないという扱いなんだとか。


カミィは「ボクはお婆ちゃんの孫で

お母さんの息子だよ」って言ってくれて……

世間へは素性を隠したままにするそうです。

あの子は今、王都の学園で花食亭の経営に

役立つ勉強をしているらしいんですけど、

卒業したら、王族になったりせず

戻ってきてくれるんですって。

ふふ、嬉しいですよね!



シンジャさんは昔から全く変わらず、

朝昼晩、独自のお祈りを欠かさない

熱狂的なアタシ信者のままです。


最近は暇な時に、木彫りの

女神(アタシ)の像を彫ってて……

アタシそっくりの手のひらサイズの

像から始まり、今は等身大の像を

彫ってるんですよ。

アタシ的にはやめて欲しいんですけど

これだけはやめてくれなくて……。

リコとかがこっそり買おうとしてましたけど

激怒して突っぱねてました。

良かった……いや、良くないけども!



リコは仕事が忙しかったらしく、

ここに来る度にげっそりとしてました。

あんまりにも疲れているのでデザートを

サービスしてたら、号泣されてしまいました。

そ、そんなに嬉しかったのかな……?

最近はようやく落ち着いたみたいですけど。



ウートウさんは一度、

彼の故郷に戻っていきました。

アタシも「一緒に来ないカ?」と

お誘いを受けましたけど、この花食亭を

長い間離れる訳には行かないので

お断りしました。


でも誘ってくれたのは嬉しかったので、

代わりにお土産話をお願いしました。

最近戻って来たみたいで、

会える日を楽しみにしています!



グローリーさんはお祖父さんの

クローバーさんが亡くなったので

跡を継いで例の組織、“エディブル”の

トップになったそうです。

相変わらずちょっと意地悪で、

アタシを困らせて楽しんでるから

苦手なんですよね……。

パンジーさんのお孫さんですし、

本人も怖いので扱いが難しいんですよ!



でもでも、一番驚いたのは公爵様です!

あの人、公爵を辞めちゃったんですよ!

しかも……しかも花食亭(ウチ)に従業員として

就職しちゃったんです!


突然「公爵は別の者に譲った。

ここで働かせてもらえないだろうか。」って

言われたら「は、はい。」としか

言えないですよね!?


領民としては元公爵様に注文を

聞いてもらったり、料理作ってもらう訳には

いかなくないですか?

だけど何故か、本人がすごい乗り気で!

目立つ金髪をわざわざ染め粉で

変えてまで働いてくれています。

うう、本人がいい人だけにストレスが……。



“恵み人”さんも前から変わりません。

……シンジャさんといい“恵み人”さんといい、

見た目が一切変わらないのは

どうしてなんでしょう?

そう言えば“恵み人”さんがくれるお花、

もう花束が出来るくらいの量が

溜まってるので、何かに使えないか

本人に聞いてみようと思います。



新しい領主様も優秀な方みたいで、

打ち出された色々な政策により

元々栄えていたこの場所は、他の領からも

多くの人が集まるようになりました。

働きに出てきた労働者の人も多いので、

花食亭は今日も大忙しです。

出前の依頼もあちこちから入っていて

嬉しい悲鳴ですね!


もう少しお金が貯まったら、

花食亭をリニューアルしようと

思ってるんです。

毎日の掃除も欠かしていませんし、

壊れた場所の修理もその都度

行っていますが……古い建物ですから

どうしてもガタが来ています。


見た目や雰囲気は残しつつ、

後世へ繋げられるような……

そんな、素敵なお店にしたいんですよ。

だから今日も仕事を頑張りますよ!




















「……で、またホイホイと

拾ってきたのかよ女神様。」


「ごめんなさい。」


「ウートウ聞いたヨ、アネモネサン。

この間も密輸で運ばれて来タ

虎型魔獣の子ども、捨て猫間違えて

ここに拾テ来たテ。」


「「虎柄の猫ちゃん!」と言いながら

魔獣を連れてくる愚かさが一周回って

愛おしいですね。


それに今は良くても、大きくなったら

飼えなくなるでしょうに。」


「ごめんなさい。」


「こここ、この前、お忍びで

やって、きき来てた、り、隣国の

だ、第二王子様に、気づかない内に、

親切にした結果、けけけ、結婚

申し込まれて、なかった?」


「ごめんなさい。」


「今回は人間の少女か……

年齢的には十歳にも満たないだろうな。

君が助けたいと思ったのならば

私はそれを尊重しよう。


すぐに湯浴みの用意をするから

待っていてくれ。」


「ごめんなさい……。」









出前の帰りに、路地で膝を抱えて

踞っていた小さな女の子を

連れて帰ったところ、皆さんからは

冷たいというか、呆れた表情を向けられました。

(元公爵様以外に)


ちなみに、アタシがトラ猫だと思って

拾ったのは密輸でこっそり連れてこられた

虎型魔獣の赤ちゃんだそうで。

(トラちゃんって呼んでます)

アタシ以外が触るとバチバチ火花を散らしながら

怒るので、臨時でウチで面倒見てます。

どれくらい大きくなるのかなぁ。


お付きの人を撒いて、街を歩いてた

第二王子様からの求婚は勿論お断りしました!

迷ってるのかと思って声かけただけですし、

王子妃とか絶対に無理ですもん……。


今回連れてきたこの子、

歌がすっっごく上手いんです。

お客さんから「出し物は無いのか」って

言われて何しようか考えていたところに

ちょうどよく彼女が!

昼の営業時、本人が望むなら

あの綺麗な声で歌って欲しいな!

……って思いながら連れてきたんですけども。


でも、みんな諦めた顔をして

捌けていきました。

これはOKって事ですよね!


不安そうな顔をした女の子に

ギュッと手を握られます。

これ以上不安にさせないように、

しゃがんで頭を撫でてあげました。



「ようこそ、アタシ達の花食亭へ!」








                     END.


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