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ピッピッピッ
「3点で950円になります。カードはお持ちですか?」
「あ、ないです」
「お支払いは現金ですか?」
「あ、現金で。」
「会計機2番へお願いします。」
宮島さんとの会話が終わる。
宮島さんの話す言葉はカタコトに聞こえる。
そのため、中国人ではと思い名札を確認した。それで彼女の名前を知った。
なお、下の名前までは見えず真偽は不明のままだ。
『スーパー蔵蔵』には毎日14:00過ぎ、昼ごはんを買いにきている。
売れない作詞家の私にとって、一日の中で唯一公共の場に出るタイミングだ。
公共の場ゆえスーパーでは買い物客という属性のみを纏う。ペンネーム「電気侍」たる私の個性は現れない。
だから寝癖でいい。シャツが出てていい。
夏なのに厚手のパーカーでいい。
ピッピッ
宮島さんがいつものようにレジをする。
「カードは持ってないですね?」
私、電気侍。