あの女は誰?
エレノアは、二階から庭園が見渡せるテラスに昼食を用意した。
その日のエレノアは薄い水色のドレスに着替え指にはラファエルと結婚した時に交換した指輪をつけて行った。
髪は緩くまとめダイヤで作った髪飾りをつけ、本妻らしい気品と余裕を心がけヘレンを迎えた。
一方でヘレンは薄いグリーンのドレスにラファエルからもらったヘレンの瞳と同じ色のエメラルドの指輪をつけ、髪はハーフアップにし、髪飾りはエメラルドとダイヤの飾りがついたものを選んだ。
「エレノア様、本日はお招き頂きありがとうございます。」
ヘレンはエレノアに挨拶をした。エレノアは微笑みを浮かべ、ヘレンに椅子をすすめた。
「こちらこそ、来てくださってありがとう、ヘレン様、こちらに、」
ヘレンはエレノアの左手の指輪を見て一瞬ムッとなったが、ヘレンも何気なく左手の指輪を見せながら椅子に腰をかけた。
エレノアはヘレンの指輪を見て可愛い顔しているけれど油断ならないと思った。
「少しは慣れましたか?」エレノアはヘレンに聞いた。
「はい、ラファエル様が優しくしてくださるので」ヘレンは微笑みながら言った。
「そうですね、ラファエル様はとてもお優しいから、私くしもこちらに来た当初は寂しくて四六時中ラファエル様に甘えておりましたわ」エレノアも負けていない。
「私くしも、ラファエル様にこちらに来る前に遠慮なく頼れと仰って頂いて、、本当に幸せですわ」
ヘレンは指輪に触りながらエレノアに言った。
……「さあ、料理が冷めてしまいますわ、」エレノアはヘレンを促し食事を始めた。
ラファエル様はヘレンにあの指輪を送ったのね。それに優しくしてもらっていると言った。
だけど正妻は私くし。ラファエルの横に立つのは私だけ。あなたは私より尊重されることはないの。
エレノアはにこやかに微笑みワインを飲んだ。
ヘレンは余裕たっぷりのエレノアに内心イライラしたが、勝負は始まったばかりだ。ラファエルの寵愛を受け、男児を孕れば立場が変わる。今に見てなさい。ヘレンも微笑みながらワインを口にした。
二人が見えない火花を散らしていた時庭園が騒がしくなった。
「ラファエル様が!」
その声を聞いてエレノアが視線を向けると皇帝を守るレッド、騎士達が庭園の池に集まっている。
池を見るとラファエルが誰かを抱き上げ池から上がる様子が見えた。何事?エレノアは立ち上がりラファエルを見るとラファエルは騎士から渡された大きなタオルを目の前の女にグルリと巻き、また抱き上げ歩き出した。
一体誰?あの女は何者なの?
エレノアはこの下を通るタイミングで声を掛けて確認しようとした。
ヘレンは突然エレノアが立ち上がり驚いた。エレノアは何かを見ているようだがヘレンからは見えない。
訳がわからずエレノアを見ていると突然「ラファエル様」と下に向かって声をかけた。ラファエル様がいるの?とヘレンは思ったが観に行くわけにいかず我慢して会話を聞いた。
「あはは!ユイカ、また落ちたな!」ラファエルが楽しそうに笑っている。
「ラファエル様、、助けようとしてくれたのに、、一緒に池に、、皇帝なのに、、私、、、」
腕の中で自分を見上げて不安そうな顔をしているユイカが愛しくて抱きしめる手に力が入った。
本当はこのままキスをしたい。
「ラファエル様!」皇帝を守るため騎士、レッド達がラファエルの所に集まってきた。「大丈夫だ、心配はいらない、」ラファエルはユイカを抱き上げ池からユイカ引き上げて自分も上がった。騎士から渡された大きなタオルをユイカにかけた。この間風邪を引いたばかりだから体が冷えるとぶり返す。戸惑うユイカにタオルを巻きつけそのまま抱き上げ城に向かって歩き出した。濡れたユイカを歩かせるわけにはいかない。
「ラファエル様,大丈夫です、歩けます」ユイカは腕の中でラファエルに言ったがラファエルはユイカの耳元で「私の大切なユイカをずぶ濡れのまま歩かせるわけにはいかない」そう言いながら楽しそうに歩いている。
ユイカは退屈な日常を輝かせてくれる天才だ。私はこの退屈な城がユイカがいるだけで楽しい場所に思えてくる。腕の中にいるユイカは申し訳なさそうな表情で見つめてくる。このままどこかに連れ去りたい。
「ラファエル様」
突然テラスから声をかけられた。声の方を見るとエレノアがこちらを見つめていた。エレノア、、見ていたんだな。この腕に誰がいるのか知りたいのか、、。
「なに?」ラファエルは短く応えた。
「池に落ちたのですか?お怪我はございませんか?、、、そちらの方は?」
案の定エレノアはラファエルの腕に抱かれているユイカを気にした。エレノアの思うようにはさせない。
「大丈夫だ、ありがとう」ラファエルはそれだけ言って立ち去り、城の中に入って行った。
エレノアは冷たいラファエルに怒りを感じたが、その矛先は常に女の方に向く。あの女は?ラファエルに抱かれていた女のブーツが見えた。
あの女はだれ?




