ラファエルの右腕に?
ユイカは貴賓室に連れて行かれ勧められるがままソファーに腰をかけた。
目の前に皇后が座り、先程のカラクリ箱が置いある。
ジャスミン!ピンチです!私、、作法がわからないわ!!ユイカは頭の中のジャスミンに声をかけるが反応がない。
どうしようと思っていると部屋のドアがひらき、皇帝とラファエルが一緒にやってきた。
驚いたユイカはとにかく立ち上がり挨拶をしようとした時に、
「ジャスミン、挨拶は良い、この箱をお前が開けたのか?」皇帝は言った。
「皇帝陛下、私の目の前で、数分で開けたのです!まさか女性が、、私動悸が止まりませんわ!」
皇后は興奮し皇帝に言った。ラファエルは箱を見つめユイカを見た。
「ジャスミン、もう一度開けてくれるか?」
皇帝は言った。
「はい。」
ユイカは一分もかからず箱を開け、また箱の形に戻した。
「おお!なんという、、ジャスミンは何故この箱が気になった?」
ユイカはどうにでもなれ!という気持ちで話し始めた。
「先ほど皇后様にも申し上げましたが、他の美品と違うものが一点だけあると違和感を感じ、さらにこのような箱ならなおさら、、」
皇帝はユイカの話を聞き頷いている。
「ふむ、ジャスミン、お前は妹達と雰囲気が違う、どう育ったのだ?」
想像もしなかった質問に一瞬身体がこわばった。私はジャスミンでは無い。
きっと皇帝は見逃さなかったと感じた。
ユイカは軽く息を吐き言った。
「幼い頃、双子の妹が出来てから両親も忙しくお世話も大変でしたから、私は本を読んで過ごすことが多く、人付き合いも得意ではありませんでしたし、あ、体も弱く家にずっとおりました。」
体が弱い設定を忘れかけていた。危ない危ない。こんな返しで良いだろう。
「ジャスミン、君は少しの違和感に気がつき、好奇心もあり、物を見抜く力もある。その能力が欲しい。ジャスミン、城でラファエルの右腕となって働かないか?」
「え?」
ユイカは思いもよらぬ言葉に頭の中が真っ白になった。この時代に女性が次期皇帝の右腕で働くってあるの?
「陛下、大変ありがたい御言葉ですが、私はそんな能力はありません、この箱を開けただけでそのような重要な事を決めてしまうのは、、」
しまった!皇帝に意見を言ってしまった。心の中で焦ったが,ポーカーフェイスで謝った。
「出過ぎた意見を、、失礼いたしました。」
皇帝はユイカのその堂々とした態度も気に入った。
「ジャスミン、お前の妹はラファエルの妻になる。だからお前はラファエルを裏切ることは無い」
皇帝は試すような言い方でユイカに言った。皇后もラファエルも黙って聞いている。
「、、逆を申せば,牛耳ると考える人間もおります。」
今表にいるのはユイカで、ジャスミンではない。ジャスミンに相談なく勝手に決めることはできない。
だから辞退したい気持ちを込めて言った。
「確かに、そうだな、でもそれをジャスミンはしないと思うがな」
ユイカは意外な言葉に心の中が明るくなるのを感じた。
妹が王子の妻だから私がそれを盾に利益を得ようと思ったら出来る、だけど皇帝はそんな事をする人には見えないと言ったのだ。そんな考えを持って信じてくれるのならジャスミンが男爵家から自立し、一人で生きられるかもしれない。
あの優雅なジャスミンは、本当はできる子。
この皇帝はきっとジャスミンの本質を見てくれる、その息子のラファエルも、、きっと、、。
「皇帝陛下、両親に相談しなければ決められません、そしてラファエル様はどうお考えか知りたいと思います。」
ユイカの瞳は輝いていた。皇帝はジャスミンを見て微笑みながら言った。
「お前の両親はダイヤモンドの原石を見つけることができなかった。意見を聞くまでも無い、で、ラファエル良いか?」
ラファエルはユイカをチラッと見て皇帝に言った。
「はい、陛下がそう仰るなら間違い無いでしょう。お任せいたします」
淡々と話すラファエルはユイカが助けたラファエルと同一人物に見えなかった。こんな人だったのかな、、
ユイカは少し残念に思った。
けれどそんなことよりも大事なこと、私たちは最初の一歩が進める。
まさか双子の妹たちよりも早く家を出ることになるとは誰も想像していなかった。
本物のジャスミンは怖がったが変わるチャンスだと説得し、行くことになった。