結婚したラファエルと、、
ラファエルのタウンハウスは街の真ん中にあった。
とても便利の良い場所で目の前に大きな公園がある。さすが皇帝のタウンハウスだけあって環境が良い。
部屋からは城も見える。
馬車は街を抜けて郊外の湖に隣接した素敵なレストランで停まった。
レストランを囲む木々に明りが灯され、湖畔もライトアップされ水面が輝いている。雰囲気のあるレストランだ。
ユイカはアディにエスコートされ中に入った。既に多くの人が集まっておりユイカは注目を浴びた。
なぜなら皇帝の執事にエスコートされる令嬢は未だかつていない。
ユイカは注目を浴びるに十分な要素があった。
うわ、なんだかなぁ。注目を浴びたユイカは少し足取りが重くなった。戸惑いながらため息をつくユイカをアディは会場の奥にあるプライベートルームに案内した。
「アディ様、ここは?」
ユイカは部屋を見渡しながら聞いた。全面ガラス張りで湖が見える素敵な部屋には座り心地の良さそうなソファーが備え付けられており、ソファーに腰をかけると湖が一望できる。
「ラファエル様がユイカ様の為に用意したお部屋でございます。」
アディは笑顔で答え飲み物を勧めてくれた。
「そっか、、なんだか申し訳ないですね。何から何まで、、私が突然現れちゃったから、、ご迷惑をおかけします」
「迷惑じゃない」
突然ドアが開きラファエルが現れた。
ラファエルは黒のコートに黒のトラウザー、ハーフブーツの出立ちで髪はオールバックにセットされている。
あまりのカッコ良さにユイカは言葉が出なかった。
驚いて立ち尽くすユイカに近づきラファエルは微笑んだ。
ユイカはその微笑みを見て我にかえり改めてラファエルに挨拶をした。
「ラファエル様、、改めまして、、ユイカです。、、、」
ユイカはラファエルに頭を下げて挨拶をした。うわぁ、声がうわずる、、緊張する、、。ユイカは上目遣いでラファエルを見た。
ラファエルは緊張気味のユイカを見て微笑みながら言った。
「ユイカ、久しぶりだな」
ユイカはラファエルを見て鼓動が早くなるのを感じながらも出来るだけ普通に対応しようとした。顔にかかる髪を耳にかけながらラファエルに言った。
「、、はい。ご無沙汰、、いえ、初めましてと言うべきでしょうか?」
やっぱり緊張する!!ユイカは緊張を隠す様にラファエルから視線を外し呟くように言った。
「ユイカ、本物のユイカに会えて、嬉しいと思う」
ラファエルは一歩近づきユイカを見つめ言った。
「私も、本当の自分に戻れて、こうして再びお会いできて、、嬉しいです。」
ユイカもラファエルを見つめた。ラファエルはグローブを外しユイカの顔に触れようとした。
その時左手の薬指に輝く指輪を見て、ユイカは一瞬息が止まった。
ああ、見たくなかった。
ラファエルの指がユイカの頬に触れた時ユイカはビクッと反応してしまった。
ラファエルの手が止まりユイカを見つめる。
「ご、ごめんなさい、驚いてしまって、」
ユイカは向かい合っていたラファエルを避け背を向けた。結婚指輪を見たく無かった。それを見た私の顔も見られたくない。笑顔になれない。
「ユイカ、、私は、、、あの日、、」
ラファエルは自分を避けようとするユイカを見て息が止まりそうになった。けれど自分の気持ちを伝えたい、そう思い言葉に詰まりながら話そうとした。
「ラファエル様、何も、何も言わないで下さい」
ユイカはラファエルの言葉を聞きたくなかった。聞いても今更、、何かできるわけがない。
ラファエルはエレノアと結婚した。
「、、ラファエル様、私はもう一度だけ皆に会いたいと願ったんです。だからここに来ることが出来た。でも、この先はわかりません」
だから、
「だからあまり、、優しくしないで下さい。」
優しくされると、、特別だと思いたくなる。愛されていると勘違いしてしまう。ユイカは気にしてもらえる喜びと、ラファエルにはエレノアがいる現実に両手を握った。諦めなきゃ。
「許さない、また突然いなくなったら許さない」
ラファエルは背を向けるユイカに言った。ずっと、、ずっと探していた。何度公園に、海岸に足を運んだんだろう?異世界から来た男アダムに会い異世界に行ける方法が無いか何度聞いただろう、、。奇跡が起き戻ってきてくれた本物のユイカを手放せるわけがない。また消えてしまうなど絶対に許さない。
ラファエルはユイカの背中を見つめ手を握りしめた。
許さない?
ラファエル様は許さないと言ったの?こんなこと言う人だった?いつも冷静で、淡々としていた人が?ユイカはその言葉を聞き不思議に思った。ラファエル様、、キャラ変わったの?!私がいなくなることを許さないって?!うそ?!可笑しい!!
「クスクス、ラファエル様、許さないって言ってもその時私はいないから」
ユイカはラファエルの言葉が嬉しくて可笑しくてついついツッコミを入れ口に手を当てて笑った。
「ふふふ、確かにそうだな」
ラファエルも笑った。ラファエルは先程まで気まずそうにしていたユイカが楽しそうに笑う姿をみて握りしめる手が緩んだ。ユイカを手離したくない。
ユイカはクスクスと笑いながらラファエルの方に振り向いた。ラファエル様って本当はわがままで可愛い人なのね。以前はわからない人だったけど、こんな一面があるのね。
「ラファエル様、住む場所とドレス、あとメイド達、、全て整えてくださってありがとうございました。こちらにいる間は働いてお返ししなきゃ。」
ユイカはドレスを持ち上げお礼を言ってラファエルに微笑んだ。ラファエルは首を小さく左右に振りながら言った。
「ユイカはジャスミンの中にいる時に莫大な利益をあげてくれた。気にするな。それに、私がそうしたいからしているだけだ」
ユイカはラファエルの言葉に体が熱くなった。ラファエルがしたいからしてくれる。この言葉、、誤解しちゃいそう。ときめく、、ユイカは胸が苦しくなり手を当てた時、ふと首にあるネックレスと指輪を思い出した。これも頂いたんだ、この分も働かなきゃ。
「あ、ラファエル様、これまだちゃんと持っています」
ユイカはハイネックのボタンを開けて首にかかっているネックレスと指輪を見せた。
ラファエルは驚いた。まさかユイカがずっと持っていてくれたとは、、。
エレノアとの結婚が決まり、あまりユイカが出てこなくなり、会いたくても会ってくれなくなった。
結婚式の当日もユイカに会いたくて、会って話がしたくて、でもユイカは一方的に話し目の前から消えてしまった。けれど、私がプレゼントした金のネックレスと指輪をずっと持っていてくれた。
ラファエルはそれを見た時、渇いた心が潤いで満たされた。初めて幸せだと感じた瞬間だった。
私をこんな気持ちにさせる人はユイカしかいない。ラファエルは目を細めユイカの目の前に立ち、その手をそっと取り優しくキスをした。
ユイカはラファエルの行動に戸惑った。もう心臓が破裂しそう。まるで愛されているかのようで、、嬉しくて幸せで、、どうしよう!手にキスをしながら上目遣いで見つめるラファエルにユイカは釘付けになった。ああ、目を逸らせない、逸らしたくない。
「コンコン」
ドアがノックされアディが声をかけてきた。
「ラファエル様、、エレノア様が、、到着されました」
ラファエルはエレノアをエスコートしなければならない。ユイカは頭から冷水をかけられたような気がした。これが現実なのだと思い知らされた。ああ、やっぱりラファエル様はエレノアのものなんだわ。ユイカはそっとラファエルから離れ笑顔で言った。
「ラファエル様、色々と心遣いありがとうございました。」
ラファエルは何も言わずに小さく首を左右に振り、ため息を吐き無言で部屋を出ていった。




