ラファエルのタウンハウス
ユイカは失敗したと思った。
皇帝のタウンハウスは部屋が十五室もあり、一般的にいう高級レジデンスの様なところだった。
もっと小さなところで良かったのに、、。今更撤回もできないし、本当に申し訳ない、、。ユイカは安易に決めてしまったことを反省し、部屋に案内してくれたアディに言った。
「アディ様、私がここにいたらラファエル様にご迷惑じゃないでしょうか?あ、しまった、、アディ様,初めまして」
ユイカは口に手を当て、慌てて言い直した。うっかりしていた。ジャスミンの中にいた時の感覚で普通に話しかけたが、アディにとってユイカは知らない人だ。
「いえ、ユイカ様、池に落ちた時にもお会いしておりますし、真珠の指輪をラファエル様がユイカ様に贈られた時も、、」
アディは優しく微笑みながらユイカを見ている。その様子を見て口に当た手を胸に当て安心した。オカシナ人に思われなくて良かった、、。
「お気づきでしたか、アディ様には色々とお世話になりました、、。あ,あの指輪ちゃんと持っているんです」
ユイカはラファエルにもらったネックレスに通してある真珠の指輪を見せ笑いかけた。
「ラファエル様がご覧になったら喜ばれるでしょう」
アディはそう言いながらユイカが居なくなってからのラファエルを思い出した。
ラファエル様はずっとユイカ様を探していた。世界中をどこを探しても黒髪と黒い瞳の女性はこの世界にいなかった。、、あの淡々としたラファエル様が誰かに興味を持つなど今までに無かった。
エレノア様に対してもそんな感情を持つことが無かったのにこのユイカ様だけは違った。そんなラファエル様を見たことがなかった。ユイカ様が戻ってきてくださって本当によかった。これでラファエル様は深夜、公園や海岸に出かけることなく眠れるだろう。アディは胸に手を当てホッと一息ついた。
その後、アディはユイカにメイドを紹介し夕方にチェスターとジャスミンのパーティがあるから迎えに来ると言って城に戻っていった。
アディが城に戻り程なくすると山の様にドレスやワンピース、靴,帽子などが部屋に運び込まれた。ユイカは驚き何事かとメイドに聞いた。
「これは??」
メイドはユイカに頭を下げ言った。
「ラファエル様よりユイカ様への贈り物でございます」
え?こんな沢山?ユイカは山の様なプレゼントを綺麗に整頓しているメイドに言った。
「この大量のドレス、、どれを着て良いのかも、、全くわかりません」
メイドはユイカに微笑みながら言った。
「私達が選んで差し上げますからユイカ様は心配なさらなくて大丈夫です」
うーん、、どうしよう、こんな沢山のプレゼント、、なんだか罪悪感が、、、。エレノアの夫で、この国の皇帝、、そんな人からいただいても良いのだろうか?こんな事されたら、、もっと気持ちが加速しそうで、、、。
ユイカは俯き自分の指先を見つめた。追いかけたいと思ってここに来たけど、実際に会って、、今、、捕まえたいと思ってしまう、。指先を丸め握りしめた。
ラファエル様って結婚している人で、そんな人がこんな事してもいいのかな、、。こんなこと、されても良いのかな?、、。何度も同じことを考え気持ちは行ったり来たりだ。ユイカは握った手を開いた。
久しぶりに会えたラファエルを見た時、なんの感情も湧かなかった。興味が無くなったとかじゃなくて会いたさが吹っ切って、心がついて行っていなくて、会えた事を実感している今,やっと嬉しいと思う感情が湧いている。
美しい横顔、一部の隙のない圧倒的なオーラ、あの輝く瞳、全てが愛しくて恋しくてたまらなかった。
だけど彼はもう結婚してしまった。エレノアのもの。私の様な人間が入る隙も無い。さっきも一緒にいたし、エレノアは私を見てた、、。どう思ったんだろう?ユイカはもう一度手を握った。
、、、、疲れた。
まさか戻れると思わなかったけど戻ってきたんだ。ユイカはソファーにもたれかけた。
今日友達の誕生会に行った。船上パーティで船が出港し、海を見つめていたらラファエルの事を思い出した。
ラファエルにジャスミンに、チェスターに会いたくて神様にお願いした。あの世界にもう一度行きたい、真剣に願って願って海に飛び込んだ。死んでも良いって、、どこかで思った。
でも本当に戻ってこれるとは。海は異世界への扉なの?、、、。
ユイカは入浴し、濡れた服から着替えた。
夕方までまだ時間がある。
メイドがお茶を用意してくれた。ソファーに腰掛け暖かいお茶を飲むと体の中の緊張感が緩む。
ここはラファエルのタウンハウス、、。この家にある全てがラファエルの物、、だからあの人の腕の中にいる様な気分。ユイカはクッションを胸に抱え瞳を閉じた。




