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妹達



 ユイカは本宅に行き両親に面会した。


「お前が訪ねてくるとはめずらしいな」


 父の執務室に入ると広いテーブルの上には沢山の書類がありその書類をみながらバーニーは言った。


 久しぶりに訪ねてきたジャスミン()の顔も見ないのね、、ユイカは本物のジャスミンのことを考えると可哀想で気持ちが暗くなった。


「お父様、最近ゴールドバーグ王国の王子様が行方不明だとご存知ですか?」


 ユイカは言った。実はもう声は出るがユイカはジャスミンが後々困ることがないよう王子様には話しかけなかった。


「ああ、大騒ぎしているが、それがなんだ?」


「私の部屋で保護しております。」


「?!」バーニーは書類を見ていたが視線をユイカに向けた。


「本宅にお連れしてお世話を、、王子様は今目があまりよく見えません、それに私が助けたとご存じありません」


「、、、わかった。すぐに行く」



 バーニーは使用人を連れてジャスミンの住む別宅に向かい王子を確認した。


「、、本物だ、、、すぐに本宅にお連れしろ」


 バーニーはラファエルを本宅の一番良い部屋にうつし、ダフニーとドリスがラファエルのお世話を始めた。


 ユイカはまた一人別宅に戻りいつも通りの日常送った。


 ジャスミンはは安心したのか表に出てきた。



 一週間も経たぬうちにゴールドバーグから迎えがきてラファエルはホワイト男爵家から城に帰って行った。


 そして一ヶ月後、ホワイト男爵一家はゴールドバーグの王室から招待を受けた。


 しかしジャスミンは招待されなかった。父親のバーニーと母親のコーデリアはダフニーとドリスのどちらかをラファエル王子に嫁がせたいと考えていた。


 現在ラファエル王子には婚約者のエレノア・ガーネット姫がいる。エレノア姫はレイランド王国の娘でラファエルの正妻になる。いわゆる王妃になる人だ。だからダフニーかドリスは第二夫人狙いなのだ。

 

 娘を王室に入れることに夢中で、同じ娘だが器量の悪いジャスミンの存在を忘れていたのだ。


 そして海でラファエルを見つけたのもダウニーとドリスになっていた。


 父のバーニーは「お前は元々こう言うことが嫌いだろうからお前の存在を言わなかった」と悪びれもなく言った。


 その瞬間ジャスミンは消えてユイカが表に出てきた。家族として存在を忘れられて居たことにジャスミンは傷ついた。ユイカ()はいつかジャスミンを蔑ろにしてきたことをこの男に後悔させてやると誓った。


 それから一ヶ月後、ホワイト男爵一家はゴールドバーグに向けて出発した。ジャスミンは一人別邸に残った。


 二週間後一家は帰ってきた。それと同時にダフニーとドリスはニュースの主役になっていた。


 ラファエル王子は命の恩人のダフニーとドリスのどちらかを第二夫人に迎えると発表した。


 それから毎日男爵家は多くの貴族が行き交い、賑やかになった。ジャスミンはその騒ぎを横目に、自分のペースで生活を送っていたがやはり数日で引っ込んでしまった。ユイカはジャスミンをそっとしておいた。


 表に出たユイカは新聞を見て、ラファエルの目が完治したことを知った。その瞳はまるでサファイヤのように輝き、強い意志が感じられる瞳だった。


 よかった。久しぶりにラファエルをみてあの共に過ごした日々を思い出しユイカは少しだけ寂しく思った。


 その新聞のトップページにはラファエルの両隣に立つダフニーとドリスの写真が載っていた。ラファエルの美しさに引けを取らず華やかで美しかった。


 その新聞を見たときに少しだけ胸が痛んだ。本物のジャスミンは彼女たちと容姿も性格も違う。だけどジャスミンは本で学んだ沢山の知識と教養がある。本当の美しさはそこだとユイカは思っている。

 

 ジャスミンに光を与えてあげたい。ユイカは常に思っている。

 


 ダフニーとドリスはゴールドバーグにタウンハウスを借り母親と住み始めた。父は月の半分はゴールドバーグに行く。




 

 ジャスミンはがらんとした男爵家の別邸で変わらず静かに生活をしていた。


 誰もいない男爵家、だけどユイカがいる。


 ジャスミンはユイカさえいればどんなに寂しくても耐えられると思っている。


 今日も静かに本を読み、ユイカと様々な話をした。



 ユイカは異世界で仕事をして居た時に心が疲れて心の病気になったと言っていた。


 静かに自分と向き合う日々の中で自分を肯定出来ずに苦しんだ日々


 考えることを強制的にやめさせる薬を飲んでただ生きて居た日々


 それから全てを受け入れて立ち直った長い戦いを話してくれた。


 だからジャスミンの気持ちは少し理解できるよと言って、でも世界は広いからジャスミンに知ってほしいと言ってくれる。


 ユイカと一緒なら進んでもいい、そう思い始めることが出来た。


 ジャスミンとユイカが穏やかな日々を送る中、突然父親のバーニーが別邸に現れた。

 

バーニーはダフニーとドリスの姉、ジャスミンの存在を隠し通すことが出来ないと判断し、翌月の城でのパーティーにジャスミンを連れてゆくことにしたのだ。


 ただしジャスミンは体が弱いと言う設定にして一回だけの参加という形にした。


両親はジャスミンは長い間社交に出ていないのと、礼儀作法ができるのか両親は不安だったからだ。


 ジャスミンもそんな両親の不安をわかっていたが、実は完璧にマスターしていた。


 ジャスミンは本を読むことで礼儀作法はもちろんの事、どの分野でも一通りの知識は頭に入っている。

 

 ただそれを披露する事はなかっただけだ。


「ジャスミン、あなたが行きなさい」ユイカはジャスミンに話しかけた。


「ユイカ、少し怖いわ」ジャスミンは自信なさげに言った。


「ジャスミン、もし私が行ったら大惨事よ。礼儀作法も何もわからないし、でも万が一の時はいつものように変わるわ!」


「怖いけど、ユイカがいてくれるから頑張ってみる、見ててね」


「うん、ジャスミン、いつも見守っているよ」


 こうしてジャスミンは決意し、家族と共に城にゆくことを決めた。

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