存在がバレた
ラファエルはどこから見ていたんだろう、
どう説明すれば良い?
私はジャスミン・ホワイトですが、ジャスミンではありません。本当のジャスミンの頭の中にいて、時々表に出てきます。
そして私はこの世界の人間ではなく、、違う世界から来ました。
、、だれが信じるの?自分でさえ自分がわからないのに。
本当の私はどこに行ったのかわからない。生きているのかさえわからない。
説明なんか出来ない。
ユイカはポケットの中のスタンガンを取り出してスイッチを入れた。弱い電流が流れてパチッと音を立てて消えた。
充電が無くなった。この世界にないものがここにある。スタンガン。私。あの男はどうやってここに来たんだろう。
「スタンガン,か。」
ユイカはスタンガンをポケットに仕舞い、床に寝転び夜空を見上げた。
北斗七星、北極星、天の川、うしかい座のアルクトゥルス、乙女座の、、指差しながら星の名を呟いていた。
「あの明るい星は?」
ユイカは声をかけられ慌てて起き上がるとラファエルが目の前にいた。
ユイカは息が詰まりそうになりながら黙ってラファエルを見つめた。
「あの明るい星は?」
ラファエルがもう一度聞いた。
「、、、あの星の名は、、スピカ、ラテン語で麦の穂、、です」
ユイカは観念し、言った。
「スピカ、、麦の穂、、、」
ラファエルは呟いた。
、、、「ラファエル様、私は、、」
ユイカは目を閉じて決心し、ラファエルを見つめ話し出した。
「ラファエル様、私はジャスミン・ホワイトではありません」
ラファエルは黙ってユイカを見つめている。その表情は不思議と柔らかく感じる。
「私は本当のジャスミンの中にいる別人格で、、、ジャスミンの体に入り込んだ、、異世界の人間です」
ラファエルは何も言わない。ユイカはこのまま話を続けて良いか迷った。
「続けてくれ」
そんなユイカの迷いが伝わったのかラファエルは静かに言った。
、、、「ジャスミンが七歳になった時に私の記憶がスタートしました。私は違う世界で大人でしたから、、ジャスミンの抱えている寂しさや苦しみを理解し、受け入れることが出来ました。今はジャスミンと協力しながら生きていて、それぞれ役割分担をしています」
「けれど、エレノア様に頼まれてアダムを見た時,,同じ世界の人間だと分かり、、あのまま放っておけばエレノア様が危なくなると、、だから、、、急きょジャスミンとかわって私が対応し、、あとはお聞きになった通りです。」
「言い訳はしません。この世界の人を騙していたのですから、ラファエル様も騙していたのですから」
「名前は?」
ラファエルはユイカを見つめ聞いてきた。
「、、本当の名前でしょうか?」
ユイカはラファエルの意図が読めず少し声が震えた。
「そう、本当の名前」
ラファエルはユイカを見つめたまま言った。
「、、ユイカ、、と申します。」
ユイカは震える声で自分の名前を伝えた。
「ユイカ、、、」
ラファエルはユイカの名前をつぶやいた。
まさかラファエルに本当の名前を呼んでんもらえると思っていなかったユイカは、嬉しくて泣きそうになるのを堪えた。
「ユイカ、、、お願いだから危ない事はしないでほしい。エレノアを、、命をかけて守らないでくれ、ユイカにそんな事をしてほしくない。」
ラファエルは感情を抑えるように胸に手を当てながらユイカに言った。
ユイカは突然の言葉に戸惑いながらも頷いた。なぜ突然そんな事を?、、私がジャスミンじゃないと信じてくれてるの?頭の中が疑問で一杯になりそうになった時ラファエルは言った。
「、、、ユイカ、、元の世界に、、戻りたいか?」
突如そんな質問がラファエルの口から出ると思わずさらに混乱した。けれど心の片隅に光が差し込んだような不思議な希望も感じた。ラファエルがユイカという人格を認めてくれていると感じたからだ。
「私の、、実体がどこにあるのかもわからないので、、帰る場所がわからないのです」
ユイカは言った。
「そうか、、、。ユイカ、この話は私達だけの秘密にしよう、良いか?」
ラファエルはユイカにやさしい眼差しを向けながら言った。
「ラファエル様は私が言った事を信じるのですか?」
ユイカはラファエルがこの嘘みたいな話を受け入れた事に驚きを隠せず聞いた。
「私はユイカを信じる、あなたはここにいる人間にはない独特な存在感がある。時々ユイカの存在を感じて居たから、、ジャスミン・ホワイトの中にいるユイカを私は信じるよ」
ユイカはラファエルの言葉を聞いて涙が出てきた。
ラファエルは、私の存在に気がついてくれていた、、。私という人格を信じてくれた。
どうしよう、、そんなラファエルの気持ちにふれ、胸が苦しくて切なくて、涙が溢れてしまう。
「ありがとうございます。ラファエル様、、」
ユイカは喜びに震える声でラファエルに言った。
ラファエルは涙を流すユイカの前に立ち、グローブを外し静かに流れ行く涙にそっと指で触れた。
ユイカは驚きラファエルを見つめた。
ラファエルは今までに見たことのない愛おしむような眼差しでユイカを見つめている。
ユイカはそんなラファエルの眼差しに戸惑いながらも胸が締め付けられ痛いほどの切なさと、ときめきで体温が一気に上がった。
耳まで赤くなるのを感じそれを隠そうとユイカはラファエルから視線を外し下を向こうとした。
けれどラファエルの手がユイカの両頬を包み下を向かせないようにし、二人は至近距離で見つめ合う形になった。
キスが出来そう!そう思うほどお互いの距離は近い。そして見つめ合う二人の視線は熱を持っている。
ユイカは何も考えられなくなった。
ラファエルは、顔を真赤にし自分を見つめるユイカの頬に優しく触れながら、さらに顔を近づけ言った。
「、、ユイカ、一つ約束して欲しい、ユイカの時はユイカと呼びたい。多分わかると思うが、気が付かなかったら教えて欲しい、私は、、、」
「ジャスミン!ここにいたのか?あ、ラファエルも!」
チェスターが現れた。ユイカはチェスターの声を聞いて我にかえり慌ててラファエルから離れた。
心臓が爆発しそう!
「お前本当にアダムを叩きのめしたんだな、驚くよ。だけど危険な目に遭わせてしまって、」
チェスターはユイカに言った。
チェスターはいつものジャスミンと違って見え「ジャスミン?、、だよね?」少し戸惑いながら「何言ってんだ俺、、」と呟いた。
「チェスター様、この代償は二倍に跳ね上がりましたよ。お礼が楽しみです。」
ユイカは高鳴る鼓動を抑えるように自分の鎖骨のあたりをトントンと叩きながら言った。
、、、チェスター様もやっぱり勘づいているんだ、、
「チェスター、ジャスミンはエレノアを守るため命を顧みず危険を犯したんだ。エレノアの頼みでも私の許可がない限り絶対に許さない、ジャスミンを危ない目に合わせたく無い。これは命令だ」
ラファエルは本気で怒っている。
ラファエル様、何か察してくれているのかしら?
これはエレノアの罠だったかもしれない。エレノアはあの男にジャスミンを殺させ、ジャスミンを殺したあの男をラファエルに殺させる、、だけどエレノアがそんな事を考えていた証拠は、、無い。
「申し訳ありませんでした。」
チェスターは素直に謝った。戸惑うユイカを見てラファエルは言った。
「ジャスミン、明日話そう。」
ラファエルはユイカの頭をやさしくポンポンと叩き、チェスターと共に出ていった。




