消す想い
「ラファエル様、ありがとうございます。私の事を気にして下さって、、こんな風に抱きしめて下さって」
ユイカはラファエルの優しさに対して感謝の気持ちを伝えた。
「、、、」
ラファエルは答えない。何も言ってくれない、、でもちゃんと気持ちを伝えなきゃ、
「私は、私の存在を見つけて下さった皇帝陛下と皇后陛下に生きる希望を頂きました。そしてラファエル様には、私の存在を肯定していただきました。本当に幸せで、一生懸命にお仕えしたいと思っています。」
ユイカはジャスミンとしてラファエルに言った。
「、、ありがとう」
ラファエルは少し間を空けてありがとうと言った。
その声はまるで愛おしい人に愛を囁くような独特な響きがある声だった。
ユイカは耳元でそんな声を聞かせてもらえるとは思いもよらず急に恥ずかしくなった。
「いいえこちらこそ!」と言いながらときめく心臓の音を聴かれたくなく慌てて一歩下がりラファエルの抱擁から抜け出た。
「ジャスミン、私は三ヶ月後にエレノアと結婚する。」
ラファエルはユイカから視線を外し空見上げながら言った。
「、、はい、存じ上げております。私はラファエル様の幸せを誰よりも願っております。」
ユイカは空を見つめるラファエルを見つめ静かな穏やかな声で言った。
この言葉の中には、、色々な感情が入っている。
でもラファエルの幸せを願うのは本心だけれど、急にそんな事を本人から言われると胸が苦しくて、考えるだけで辛くて、私はどうやってこの気持ちから抜け出せば良いのだろう?
「そろそろ戻ろうか、もう夕暮れだ」
ラファエルは花畑の中をゆっくり歩き出した。
ラファエルの後をついてゆきながら夕日にそめられるさまざまな色の雲を見つめながら歩いた。金色に輝く雲を見つめていたらラファエルが振り向き言った。
「ジャスミン、夕日が綺麗だな」
夕日の金色と深い青色が混ざり合う美しい背景の中にいるラファエルは、全ての光と全ての闇を併せ持つ神のような存在に見えた。
「はい、とても美しいですね。」
ユイカが答えるとラファエルは優しく目を細めまた前を向いて歩いて行った。
夕日を西に追いやって、今、夜空に白く輝く星スピカはラファエル様に似ている。
孤高の美しい星。
そしてスピカを目指しとてつもない遠い距離を追いかけるあの赤い星はまるで私のよう、、、。
実体の無い私がジャスミンを押し退けてラファエル様を愛して抱きしめることは許されない。
追いつけない、報われない愛だからこそ美しいものでありたい。
あ、そっか、、人魚姫の恋はだから美しかったんだ。
報われないから美しく清らかな愛に感じたんだ。
今の私の恋も人魚姫と変わらない。愛するがゆえ愛する人の幸せを願う。自分の想いに蓋をして、、。
ラファエル様、会いにきてくれてありがとうございます。
ユイカはラファエル後ろ姿をずっと見つめていた。




