エレノアの視線
「ジャスミン久しぶりだな、活躍を聞いて嬉しく思っているよ」
皇帝が声をかけてきた。ユイカは慌ててワンピースのスカートを持ち上げ挨拶をした。
「おはようございます。まさか朝から皇帝陛下にお目にかかれるとは思ってもおりませんで、、こんな身なりで大変失礼を、、」
「ジャスミン、昨夜池に落ちたと聞いて、心配したのですよ」
皇后はユイカに席をすすめながら言った。ジャスミン!起きて!
「皇后陛下、おはようございます、、本当に恥ずかしい次第で、、。昨夜はお気遣いを賜り感謝申し上げます。」
ちょっとこの席どこに座れば????ユイカにはさっぱりわからない。
縦長のテーブルの一番上座は皇帝、その右側は皇后とエレノア姫が並んで座っており、ラファエルは皇帝の左側、テーブルを挟み皇后の前だ。
ユイカは考えた挙句、この四人から五席ほど離れた末席に歩いてゆき腰掛けようとした時、ラファエルは笑いながら声をかけた。
「ジャスミンどこに行く?そこに座るのか?遠いぞ」
そう言いながら自分の隣に来いというジェスチャーをした。エレノア姫はその様子を微笑みながら見ている。
「私は、、世間に疎くて、、あはは、、」ユイカは焦ってしまい早足でラファエルの隣に行った。
いつもと違う雰囲気のジャスミンにみんな釘付けだったが、ユイカは素知らぬふりをした。
「ジャスミン、活躍をきいているよ」
皇帝は優しく微笑んで言った。ジャスミンは緊張でカチコチになりながらラファエルの隣につったっている。
ラファエルは微笑みながら席を立ち椅子を引き「どうぞ」と言った。
「ラファエル様、お世話かけます」
ユイカは言った瞬間この言葉は間違っている!と気がつき慌てて
「まだ寝ぼけて居ますね、、申し訳ありません」と言って愛想笑いをし、半ばパニックになりながら椅子に腰掛け前を見た。
エレノア姫がユイカをずっと見ている。
「あ!」ユイカはまた慌てて立ち上がりエレノア姫に挨拶をした。
「エレノア姫様、ゴールドバーグにようこそいらっしゃいました。私ジャスミン・ホワイトと申します。ラファエル様の部下として働いており、突然お邪魔したことをお詫び申し上げます」
ユイカは深々と頭を下げた。
「はじめまして。かねがね噂は伺っておりました。お会いでき嬉しいですわ」
エレノア姫は優雅に微笑みユイカに挨拶をした。近くで見ても本当に綺麗なお姫様、、。
会いたくなかった。昨日のラファエルとエレノアのキスを思い出した。最悪。
ユイカはなぜこんなことになったのか思いながら椅子に腰をかけた。もう引っ込みたい。
ジャスミン!早く代わって!私もう無理よ!頭の中で叫ぶがジャスミンは出てこない。
「ジャスミンは、女性で初めて次期皇帝の補佐官の試験を突破した人で私興奮したのですよ」
皇后が優しく微笑みながらエレノアに言った。
?試験?あのカラクリ箱試験だったの?!ユイカは過去を悔やんだ。あれさえなかったらこんなことは起きなかったのに。誰か助けて、、。
「まあ、どのような試験ですか?」エレノア姫は興味があるのか皇后に聞いている。
「ここにも似たものが、、」皇后がそう言うと皇后御付きのメイド長のような人が前と違うタイプの物を持ってきた。
「こちらでございます」
エレノア姫の前にその箱を置いた。エレノア姫はその箱を見つめユイカに向かって
「ジャスミン、この箱をどうぞ」
そう言って箱を渡してきた。その様子を皇帝、皇后、ラファエルは見つめている。
ユイカは落ち着きを取り戻すため集中した。エレノアからその箱を受け取りさらに集中し構造を想像した。
この構造、祖母の家にあったものと似ている。
ユイカは一気に解体し、また元に戻した。うん,上々調子はいいわね。
すこし下を向いた時ユイカの首にかかっている金のネックレスが揺れた。そのネックレスを見て一瞬エレノアの表情がかわった。ユイカは慌てて目を逸らし見ていないふりをした。
しかしじっと見つめるエレノアの視線を感じ、気持ちがより一層落ち着かなくなった。
エレノアはラファエルがこれをジャスミンにプレゼントしたと気がついたのかもしれない。
このお姫様、、ちょっと怖い。
「ジャスミン、大丈夫か?気分が悪いのか?」突然だまって顔面蒼白になったユイカにラファエルは声をかけた。
エレノアの視線に耐えながら笑顔で「大丈夫です」と答えた。
「ジャスミン、何かあったのか?」少し様子がおかしいユイカに皇帝が声をかけた。
「大丈夫です、この箱が想像どうりの設計で驚いてしまい、、わたしも設計できるかなと、、」
「まあ,ジャスミンは頭がいいからなんでも出来そうね!この箱まで解体するとは」
皇后が笑顔でジャスミンに言った。
「ジャスミン、素晴らしい頭脳ですね。これからもラファエル様をお助けくださいね」
エレノア姫はにこやかに言った。
「はい、ラファエル様とエレノア姫様のために頑張ります。」
先ほどのエレノアと違い優しく微笑んでいる。それが逆に怖く感じた。
「エレノア姫、このジャスミンは昨日紹介したダフニーとドリスの姉だ」
ラファエルがエレノア姫に言った。そんな情報言わないで!!
「まあ、そうでしたか、姉妹揃ってラファエル様をお支えするとは、素晴らしい一族ですね」
ユイカはエレノアの言葉に血の気が引いてゆくのを感じた。口ではそう言っているが、本心じゃない。
「いえ、もったないお言葉でございます」
ユイカはジャスミンと入れ替わった。




