実体が無い現実
「ところで、エレノア姫が来た時、ダフニーとドリスを紹介するのか?」チェスターはラファエルに聞いた。
「そうだな、まだ何も決まっていないが、紹介しないわけにも行かないだろうから。」
ラファエルはどうでも良い事だと、興味なさそうに言った。
「なかなか怖そうだな、おい。」
チェスターは嬉しそうにラファエルを見て言った。
「ジャスミンはホワイト家で参加するのか?」
楽しそうなチェスターを無視し、ラファエルはジャスミンに聞いた。
「、、、参加しなきゃいけないでしょうか?」
ユイカは参加したくないと思っている。ジャスミン本人も同じ意見だ。
「ジャスミン,お前本人の前ですごいこと言うな、ラファエルの妻になる人だぞ、」
チェスターは驚き言った。ラファエルの結婚相手に対してそんなことを言える人はいない。
「あ,すみません、深い意味はないのですが、、私がいてもいなくも何も変わらないなら居なくてもいいかなって思うのですが、、」
ラファエルの妻になるエレノア姫に会いたくない。ユイカはそう思った。
「ジャスミン、好きにするが良い、誰もお前に強制させないよ」
ラファエルはそんなジャスミンに好感を持った。ジャスミンには忖度がない。
「、、、ラファエル様、、ありがとうございます。嬉しいです。」
ユイカはラファエルがユイカの意思を尊重してくれた事が嬉しかった。
そんなラファエルにまた心惹かれた。
一月後、レイランド王国からエレノア姫がやってきた。
エレノア姫は腰まである美しい金色の巻き髪に大きな薄いブルーの瞳、雪のような白く美しい肌、ラファエルの横に立っても見劣りしないほど美しい姫だった。
ユイカはラファエルにエスコートされて城に入るエレノア姫を見ていた。
生きる世界が違うんだと思った。こんなに絵になる王子様とお姫様を見たことが無かった。
美しすぎて何もいえない。ダウニーもドリスもこのお姫様には敵わない。
ラファエルはこんな綺麗なお姫様と結婚するんだ。
ユイカは初めて実体のない自分が何もできないことを現実として突きつけられたように感じた。
今日は舞踏会がある。皆、素敵なドレスを着て続々と城に集まってきた。
ユイカはそんな人たちを横目に城を出て家に帰ろうと歩き出した。
「ジャスミン様、至急確認してほしい書類がございます!」
カジノの計画を一緒に行っている仲間のジュリアナが追いかけてきた。これはユイカの案件だ。ユイカ引き続きお願い。
ジャスミンはユイカに言った。
「また残業?!うわー、帰りたいわ」
ユイカは駄々をこねた。
「あはは!駄々こねてもダメです。ジャスミン様帰しません!」
ユイカはジュリアナに引っ張られながらお城に戻った。
山積みになった書類を確認していたがふと気がついた。
「ジュリアナ、あなた今日エデルと舞踏会出席する予定では?」
「はい、そうでしたが仕事が、、」
ユイカは諦めたように言った。
「行ってきなさい。ここは任せて」
ユイカはジュリアナに我慢をしてほしくなかった。恋人と出席できるパーティだ。
「でも、ジャスミン様に押し付けるわけには、、」
ジュリアナは仕事を優先する女子だからこそ、ユイカは背中を押してあげた。
「大丈夫,明日は徹夜でお願いするから!さあ行ってきなさい」
ユイカは笑顔で送り出した。ジュリアは目を輝かせパーティーに出かけて行った。
パーティーか、ラファエル様は今頃エレノア姫と楽しんでいるのかな。
ユイカはラファエルのことを考えた。掴みどころのないラファエル。
「ラファエル様、この国はとても豊かで良い国ですね。」
エレノア姫は優雅に微笑みながらラファエルのエスコートする腕にそっと手を添えた。
ラファエルは優しく微笑んでエレノア姫をバルコニーに連れてゆきライトアップされた庭園を見せた。この場所から見える景色は格別だ。
「あーーーー!!頭がおかしくなりそう!!」
ユイカは書類に埋もれながら宙を仰いだ。残業代請求するわよ!!
「帰りたい、、でも帰れない。気分転換が必要だ!!!」
ユイカは執務室を出て庭園に散歩に出かけた。夜の庭園はライトアップされてとても美しい。
今日は二階の大広間で舞踏会か。執務室は同じ二階でも塔が東側だから音さえ聞こえないけど、流石に庭園には聞こえてくるのね。
ラファエル様、今頃ダンスでも踊っているのかな、、。
胸がチクリと痛んだ。ああ,だめだ、、私は実体がない、、現実を見なきゃ、
気分転換、、、あ、池に行って鯉でもみよう。
ユイカは鯉の池に行き水面を覗いた。
ん?水面に映るジャスミンの顔を見た。
「疲れた顔してる。肌ボロボロ、髪もボサボサ。最悪だ」
でも、ジャスミンって美人だと思うんだけどなぁ。
「うーん、よく見えないもうちょっと、、」
ユイカ身を乗り出し水面に移る自分を見た時、バランスを崩し池に転落した。
ザブン!!
幸い池は浅いので溺れることはなかったが、全身びしょ濡れになった。
「な、なんてこと!!!!」




