心の空洞
ジャスミンはいつも通り海岸に行き砂浜を歩いてゆく、誰もいない海は静かで穏やかで波の音だけが聞こえる異空間だ。
頭の中のユイカに話しかけた。
「ユイカ海っていいね。」
ジャスミンは言った。
「いいね、ジャスミン、自然は色々と教えてくれる、もっと感じてみて」
ユイカに言われジャスミンは目を閉じ波の音を聞いた。
時どき力強く浜辺に打ちつける波の音、自然は有機的なものだと教えてくれているように感じる。
自然でさえ一定じゃないという事は、人間は常に心が揺れ動く危うい生き物だと波が教えてくれる。
ジャスミンは浜辺を歩き揺れる水面を眺めた。
ジャスミンの頭の中でユイカは人魚姫の事を考えていた。
人魚姫は王子様の顔を見て好きになったならば、面食いだけど、
知ってゆくうちに性格も愛したのだろうか、、。
ジャスミンはきっと一目惚れをされるタイプではない。
じっくりと向き合ううちに彼女の内面の良さがわかってくる。
そんな王子様が現れると良い。家族がダメならこれから家族になってくれる人に出会わなければ。
ジャスミンは幼い頃の経験で比べられる事をすごく怖がっている。
傷ついた心を埋めてくれる人が必要。
私がジャスミンに入ったのもきっとジャスミンの心の空洞が大きかったからかもしれない。
それが満たされた時きっと私はジャスミンの中から消えるだろう。
大きな心の空洞が埋めるためには、きっとたくさんの時間が必要だ。
「ふう」
そろそろ戻ろうかな、ふと視線の先、波打ち際に誰かが倒れている姿が見えジャスミンは慌ててその人物に近づいた。
頭の中のユイカもジャスミンを通してその人物を見て驚いた。
人魚姫という童話があるが、その童話を思い出させるような美しい男性がずぶ濡れで倒れていた。