憑依または覚醒
私はこの世界の人間じゃない。
けれど、この世界の人間でもある。
憑依という言葉が適切なのかもしれない。
私の名前はジャスミン・ホワイト
父はバーニー・ホワイト男爵 母はコーデリア、男爵家の長女して育てられていたがその二年後に双子のダフニーとドリスが産まれ父と母の愛は二人に注がれ幼い私は疎外感を持った。
ダフニーとドリスは金色の髪に愛らしいぱっちりとした二重に長いまつ毛、ダフニーの瞳は湖のような深い青、ドリスは森林のような深いグリーンでほんのりピンクに色づいた唇は二人の愛らしさを倍増させ、さらに小鳥が囀るような可愛らしい声は、天使の囁きと言われる。
それに比べてチョコレートブラウンの髪にグレーの瞳、血色のうすい唇に少し低めの声、可哀想なジャスミンと陰で呼ばれていた。
可愛い妹達と比べられる日々、毎日が辛く寂しく、幼い私は自分の殻に閉じこもるようになった。
私が七歳の頃,突然頭の中にユイカと名乗る異世界の女性がやってきた。
あの日、どうしても両親の気を引きたくて少しだけ駄々をこねると、聞き分けの悪い子と言われ別宅につれて行かれた。
怖くて悲しくて自分を見て欲しくて、あまりの悲しみに死にたいと思った時に突然ユイカは言った。
親だって人間だ。
自分の子供は全員可愛くて愛情もそれぞれ同じだけ分け与えられるなんてあるわけがない。
何故なら人間だから。
そんな事でいちいち感情を浪費するのはバカバカしい。顧みない相手なんて関わらなきゃ良いのよ。
それよりもジャスミンは自立しなさい。自分を助けられるのは自分だけよ。
「あなたは神様ですか?」
ジャスミンは、親に見捨てられたかわいそうなジャスミンを神様が助けに来てくれたのかと思い聞いた。
「神様か、、神様よりも暖かくて神様よりも一生懸命ジャスミンを助けてあげる異世界の人間、ユイカよ。」
「ユイカ?ジャスミンを助けてくれるの?」
「ええ、いっしょに生きよう」
ユイカがジャスミンとして憑依なのかわからないけれど、共に生きはじめた時からジャスミンは性格が突然変わるようになったと言われた。
少し明るくなり、使用人とも話をするようになり、笑顔を少しだけ見せるようになった。
ジャスミンの調子が良い時はジャスミンがジャスミンになるが、負の感情を感じた時にユイカが出る。
二人は助け合いながら生活をした。
私はユイカ
恐らく異世界からこの世界に来たが、実体がない。ここに来た時の記憶が無い。
気がつくとジャスミンの頭の中にいた。七歳のジャスミンはまだ幼く暗く寂しい子供だった。
大人のユイカは、ジャスミンが悲しい時、孤独を感じている時は頭の中で寄り添い、慰め寄た。
ジャスミンが十六になった頃からお互い意識的に入れ替わるようになり、今は頭の中で話をし一瞬で入れ替われるようになった。
それでも人が怖いジャスミンは時々恐怖で何も言えずに突然引っ込んでしまう時があるが、何年もジャスミンの中に住んでいるユイカはそれも慣れた。
普段のジャスミンは出来るだけ人と関わらず本だけ読んで生きている人となったが、私はジャスミンの思慮深い所や、本で得た多くの知識を世の人に知ってもらいたいと思っている。
それに、ジャスミンはとても美人だ。いつも髪で顔を隠しているが磨けば双子の妹と比べられないほど綺麗な子だと私は知っている。いつかジャスミンの本当の姿を馬鹿にしていた人間に見せてあげたいとも思っている。
ジャスミンは毎晩遅くに邸宅近くの海岸に散歩するのが日課だったが数日前に風邪をひいて散歩に行けなかった。
ようやく出歩けるほど回復し、久しぶりに散歩に出かけた。
頭の中のユイカもジャスミンを通して意識を集中すれば、
ジャスミンが見ているものも見えるし、同じように空気を感じることができる。
ジャスミンが夜遅く出かける理由は、人がいないからだ。
誰にも会わずに外に出られる時間は深夜しかない。
それに、数日前の風邪で元々低めの声がしゃがれてしまい声が出ない。
声が出ない時も深夜なら気にせず出かけられる。
相変わらず本物のジャスミンは内向的な性格であまり人と関わらない。
ユイカは何かキッカケさえあればジャスミンが自分らしく生きられるようにしてあげたいと思っていた。