思い出
「ユイカ、それからいつラファエルを好きになったの?」マリーは瞳を輝かせ前のめりになりユイカに聞いた。
ユイカはまさかラファエルの母親マリーが自分に対し好意を持って接するだけで無く、息子の恋バナにこんなにも前のめりになるとは驚いた。なぜならラファエルは幼い頃に母親に甘えることも許されず孤独に耐えてきたと聞いていたからだ。マリーは息子であるラファエルに対し愛情が薄いと思い込んでいたが今目の前にいるマリーは愛溢れる母親だ。息子を深く愛し心配し誰よりも息子の幸せを願っている母親だ。幼いラファエルに厳しくしていたのは皇帝になるラファエルの事を思っての行動だとわかった。恐らくラファエルも今なら母親の気持ちを理解しているだろう。なぜなら隣にいるラファエルは穏やかな笑みを浮かべ母親をみている。ユイカはラファエルのそんな姿を見られた事が本当に嬉しかった。
「私がラファエルを異性として意識した大きなきっかけは、私が池に落ちた日、あの日はお城でエレノア様を歓迎するパーティがあって、、ラファエルは2階のテラスでエレノア様とキスをしていたんです。その時たまたま下の庭園をすぶ濡れになって歩いていた私とエレノア様とキスをしていたラファエルと目があって。」ユイカは目の前にある紅茶を見つめながら言った。「ま、まあ!!その場面をユイカは見たのね!!ショックだった?」マリーは飄々としているラファエルを見てユイカを見て聞いた。ラファエルもチラリとユイカを見た。
「ショック、、ショックでしたが、ラファエルはそのあと私の額にキスをしてくれて、、トキメキすぎて全て良い思い出に、、」ユイカは、はにかみながらマリーに言った。ラファエルは照れくさそうに下を向くユイカの手を握りキスをしてユイカを覗き込み頬にもキスをした。
「まあ!!!ラファエルが?!額にキス?!!信じられないわ。普通のキスはエレノアにもするのにラファエルが額にキスした人はユイカだけだわ!!ラファエル、、あなた唇にキスができないほどユイカを好きになったのね。」マリーは誰に対しても本気にならなかった息子の驚くべき行動に顔を赤らめながら興奮気味にラファエルに言った。「母上、まだその時はジャスミンとユイカは同一人物だと半分は思っていました。だから自分でも好きなジャスミンと普通のジャスミンと混乱していたのです。でも、ある事件がきっかけで私が気になるジャスミンがユイカという別人格だったことがわかった時、私は強くユイカに惹かれたのです。けれど、エレノアとの結婚が迫っており、、」
ユイカはあの時のことを思い出した。ラファエルとの別れ。ラファエルが結婚するまでの間辛くて苦しくて。元の世界に戻った時も毎日ラファエルを思い出して泣いていた。本当に会いたくて苦しくて、、、。過去の事なのに思い出すと胸が詰まる。目の前にラファエルがいてもあの悲しみを思い出すと苦しい。一気に色々な事を思い出しユイカは唇をぎゅっとむすび涙を堪えていたがやっぱりポロポロと涙が溢れ出した。
ラファエルは泣き出したユイカを抱き寄せ、「母上、色々あり私たちはやっと結ばれたのですよ。父上と母上が望んでいた誰かを愛せるラファエルになりました。」ラファエルはユイカを抱きしめて両親に微笑んだ。ユイカはラファエルの胸の中で涙を拭いながらその言葉に頷いた。
「ユイカ、ラファエルを頼むぞ」ルーカスは穏やかな笑顔をうかべラファエルの胸の中で涙を拭っているユイカに言った。ユイカは瞳を潤ませながら笑顔を浮かべルーカスに言った。「はいルーカス様、必ずラファエルを支え誰よりも幸せにします。」ラファエルもルーカスに言った。「父上、私も父上のような立派皇帝になるよう努力し、ユイカ幸せにしまします。ユイカの幸せはこの国の国民の願いですから」ルーカスはラファエルの言葉を聞き大きく頷いた。
「ユイカ、ラファエルを愛してくれてありがとう、ユイカのような可愛い娘が出来て幸せよ」マリーは立ち上がりラファエルとユイカの前に行き、ユイカの手をとった時ユイカの指にある指輪をみて驚きながら言った。「まあ、ラファエルはもうすでにユイカに指輪を渡していたのね。皇帝の愛の証の指輪。この冷たかった息子に命をかけても惜しく無い相手が出来るなど想像も出来なかった、、。でも幸せそうなラファエルを見て、本当に、、ユイカに感謝しています」マリーは瞳を潤ませユイカに言った。
「ありがとうございますルーカス様、マリー様。私はこの世界の事をきちんと学びラファエルを支えます。ラファエルを生み育ててくださって本当にありがとうございます。誰よりも大切にいたします。どうぞこれからもよろしくお願いいたします」ユイカは二人に頭を下げた。ラファエルはもう一度ユイカを抱きしめ二人に言った。「父上,母上お二人のようにいつまでも仲睦まじい家庭を作りたいと思っております。いつまでもお元気でいて下さい」
こうしてユイカはラファエルの両親に歓迎され楽しいひと時を過ごした。
城に戻ったユイカは自分の両親を思い出していた。父と母は交通事故で突然死んでしまった。会社に電話があり急いで病院に駆けつけたが二人とも車にはねられ即死だった。ユイカは大人になっても両親と仲が良く、幸せな日々を過ごしていたが、あの突然の喪失感は日を追うごとに強くなり両親が亡くなってからなかなか前を向くことが出来なかった。
一人っ子だったユイカは誰もいない家にいることが辛くなり家を売りアパートで暮らし始めた。それから二年後にこの世界に来た。もし今両親が生きていたら、いつかラファエルと両親を天秤にはかけなくてならない。けれど現実はお父さんもお母さんも天国にいる。きっと天国から娘に幸せを見守ってくれているはず。これで良かったんだ。前を向いて生きて行ける。お父さん、お母さん、ユイカは幸せになります。天国から見守っていてね。
そしてこれからはラファエルのご両親に娘として尽くそうと決めた。亡き父と母に出来なかった親孝行をさせてもらおう。顔合わせ以来ユイカは時々ラファエルの両親訪ね一緒に過ごす時間を作った。そのうちラファエルよりも可愛がられるようになり、時々一人で出かけ一緒に食事するほど仲良くなった。
ユイカが第三夫人になり二ヶ月がすぎた。
「ユイカ様、今晩ラファエル様はエレノア様と食事だと聞きましたが、ユイカ様はエレノア様のご挨拶にゆく日取りをラファエル様が決めるのだと思います」
パトリシアが言った。
「え?挨拶、、そっか、本妻に挨拶しないといけないのね、、ラファエルが色々忙しかったからエレノア様、ヘレン様に挨拶する日程がなかなか組めないと言っていたけど、第三夫人に昇格?して二ヶ月、、そろそろしないとまずいよね、。憂鬱だわ。」ユイカは貴族の習慣などわからない。エレノアに何を言われるのかわからないから少し教養の勉強をしなきゃまずいわ、、。
「アディ様、いらっしゃいますか?」ユイカは突然アディを呼んだ。「ユイカ様いかがされましたか?」アディは先ほどまでソファーまったりとしていたユイカが立ち上がり居ても立っても居られない様子を見て何事かとユイカに聞いた。
「アディ様、先生を、、行儀見習いの先生を至急、、、」ユイカはエレノアに会う前にある程度、淑女の礼儀作法や教養を詰め込んでおかねばならないと焦っている。そんなユイカをみてアディは笑いながら言った。「ユイカ様にピッタリな素晴らしい方がいらっしゃいます。明日お連れいたします」アディは意味ありげな笑顔を見せ下がって行った。




