22杯目 お酒の力を借りまして……
「そろそろ覚悟決めないとなぁ……」
僕は自室で一人呟く。何の覚悟? と思うだろう。
それは…………
『自分の気持ちを陽華さんに伝える覚悟』
である。と言うのも、昨日陽華さんを家まで送った帰り道、僕は一人考えた。随分遅いんだが……
何をって? それはもちろん、陽華さんとの関係がこのままでいいのかって事について。もし自分の気持ちを、伝える前に陽華さんに彼氏ができたら? 他にも、もし伝える前に交通事故や、病気で死んでしまったら? そんな事を考えていると、やらないで後悔するよりはやって後悔して生きたい。そう思ったからである。
だが、僕に告白をするってことができる訳もなく。だから僕は考えた。いろいろな検索エンジンを使い調べる。
『告白 勇気出ない』
するとヒットしたのが、あまり宜しくないがお酒に酔う。つまりお酒の力を借りての告白。ってのが出てきた。
僕としては、お酒の力を借りることはアリだと思う。寧ろそうでもしないと、告白なんてできない気がするし……
バーのオネェさん曰く、僕は酔うと性格が180度変わるらしい。何でそんなことを知っているのかと言うと、飲みに行った日にメッセージアプリの連絡先を交換していたみたいで。次の日の朝にメッセージが来ていた。マジで迷惑かけてないかだけが心配……
とまあ、今の僕にはお酒の力を借りる以外の告白方法は、思いつかなかった。まあ、いつにするかって問題もあるのだが……
とりあえず僕は、その案を採用することとして、覚悟を決めて眠りについた。
──僕の初恋が終わるまで残り1日……
◇◇◇
〜陽華side〜
私から告白した方がいいのかなぁ……
陰雄くんに家まで送ってもらった私は、そんなことを考えていた。
陰雄くんの私への思いが分からないので、後悔するよりは……と思う。
告白されたことは数え切れないほどあるのだが、した経験など無く、当然告白の仕方なども知らない。
でも、もし振られたら……
そう思うと、告白なんてできない。と怖気付いてしまう。こんな自分が私は嫌いだ……
そんなことを考えていると、ふと思った。
好きでも無い人を家に招くものなのかな? チャラそうな人ならともかく、陰雄くんはこう言ったらアレだけど、その陰キャって感じだし……
ポジティブ思考な私は、こう結論づける。
────陰雄くんは、私のこと好きなのでは?
そこからは、自然と勇気が湧いてくる。そして、私は明日告白すると決めた。告白する場所は……そうだなぁ。んー、バーでお酒飲みながらとかかな?
と、考えている内に私は眠りに着いていた。
後悔する結末が待っているとも知らずに……
目を覚ました私は、陰雄くんにメッセージを送る。
〔(陽華)陰雄くん! おはよう! 今日ちょっと話せる?〕
メッセージを送ってから、大学に行く準備をして、大学に着くまで返信は来なかった。
私が少しモヤッとした気持ちを感じていると、陰雄くんが講義室に欠伸をしながら入ってくる。いつもの場所に座るなり、机に突っ伏したので私は文句を言おうと、陰雄くんの所まで歩いていく。
陰雄くんの前に着いた私は、腰に手を当てながら言う。
「ちょっと陰雄くん! なんで返信してくれないの!」
「陽華さん……返信? ……あっ。寝坊して見れてなかった……ごめん。その、怒ってる……?」
陰雄くんは、私の方を向きそう言った。怒ってるかと思ったのか聞かれたので、私は頭を振って答える。
「怒ってるとかじゃなくて、返信こないから心配してただけ……」
「そう……だったんだ……」
「まあ、そんなんじゃなくて、私が言いたいのは、今日夜飲みに行かない?」
「……えっ? 今日……ですか……」
「そう! 今日! 私の知り合いがやってるバーがあるんだけどどう?」
少しの間を置いて陰雄くんは口を開く。
「今日は……その……予定があるので……」
「そっか……まあ、また誘うから行こう!」
「はい……」
私はそう言って、自分の元いた席まで戻っていく。
──私が後悔するまであと、8時間……
◇◇◇
はぁ。断っちゃった……と僕は後悔しながら、バーへと向かっていた。だってしょうがないもん。周りの人たちがすごい顔してこちらを見てるんだもん。前回めんどくさかったイケメン君も。
今日はたくさん飲んで気を紛らわせよう。そう思いながら、バーの扉を開く。
「あら〜! 陰雄ちゃん! いらっしゃい!」
「オネェさん。今日は恋愛相談乗ってもらってもいいですか?」
「もちろんよ〜! さっ! こっちへおいで」
オネェさんに案内されながら、僕はカウンター席に座る。そして僕は、全てを話す。お酒の力で告白する覚悟を決めたこと。今日バーに誘われたけど断っちゃったこと等をお酒を飲みながら話した。
それをオネェさんは、頷きながら聞いてくれた。話し終えると口を開く。
「なるほどね〜! 頑張ろうって思えたのはいいじゃない! まあ、話を聞いた感じ、誘えるかが問題よねぇ〜」
「そうなんだよー……」
「ってもう出来上がってるじゃない!」
オネェさんは、俺を見てそう言った。俺は何のことかわからなかったが、何だか今なら何でも出来る気がしている。そんなどこから来るかわからない自信を抱きながら言う。
「もう決めた! 次会ったら告白する!」
「おお! 言ったわね〜! 男に二言はないわよね?」
「もちろん! 俺は男だからな!」
そう言いながら、メガネをオネェさんに手渡す。引き換えにワックスを貰い、髪をかき上げた。それを見てオネェさんは。
「いや〜! 本当に陰雄ちゃん酔うと変わるわねぇ〜!」
「そうかな?」
「そうよ! ずっとそっちのがいいんじゃない?」
と話している時だった。突然入り口の扉が開く音が聞こえてきた。
オネェさんは、入口の方を向くなりテンション高く言う。
「あら〜! 陽華ちゃんじゃない! 大きくなったわねぇ〜!」
「久しぶり! 相変わらずオネェさんしてるねぇー!」
「一人なの〜? ま、とりあえずこっち来て座りな」
僕は、入ってきた女性の声を聞き驚く。だが、そんなことある訳ないと言い聞かせ、お酒を飲んだ。
その女性は、僕の隣に案内されオネェさんと話している。
僕は、声が似過ぎていると思い、恐る恐るその女性の方を向く。瞬間、僕はグラスを倒してしまう。そこに座っているのが、さっきまで話していた陽華さんだったから……
僕はおかわりするフリをして、オネェさんに手招きをした。こちらにきたオネェさんに僕は小声で言う。
「その、俺の好きな人隣の女性なんだけど……」
「……えっ!? 陽華ちゃんなの?」
「……うん」
「あら〜! 世間は狭いわね〜! とりあえず、さっき言ったんだし告白しちゃったら?」
「そう……だよね……」
「頑張って!」
オネェさんに応援され僕は、覚悟を決めた。難しい言葉等出てこない。僕は、素直な気持ちを伝える。
「は、陽華さん! その、好きでした……俺と付き合ってください!」




