19杯目 愛理ちゃんは忙しい
突然ですが私、鈴本 愛理は忙しない大学生活を送ってます。と言うのも、大学でお悩み相談サークルなるサークルを立ち上げたからです。
お悩み相談サークルとはなんだ? と思ったそこのあなた。いいですか? 普通に大学生活を送っていれば、いろいろな悩みが出てくるでしょう。恋愛? 人間関係? 勉学? どれもあるでしょう。私達お悩み相談サークルは、そんな人達の悩み相談を率先して受けているのです!
とまあ、前置きはこのくらいにして、いつも通りサークル活動中にある一つのメッセージが飛んできた。
〔(大好きなセンパイ♡ 愛理? 今ちょっといいか? 今から言うところに来て、仲裁してほしい〕
ほほぉ。センパイからの悩み相談(?)ですかぁ。仕方ありませんねぇ。行きますかぁ。
私は心の中でそう言いながら、返信をする。
〔(愛理)了解です!〕
送信ボタンを押したのを確認してからセンパイの元へと走った。
センパイのいる講義室についた私は、勢いよく扉を開く。それにより、その講義室にいた全員がこちらを向くが、私は気にせず元気よく言う。
「センパイ〜! お待たせしました〜! あなたのためにどこまでも。センパイ専属後輩・愛理ちゃん登場で〜す☆」
その瞬間、講義室内は静まり返った。あちゃー。滑ったねー。ごめんね、センパイ。と心の声で唱えながらセンパイの方を見る。するとセンパイは、頭を抱え呆れた顔をしていた。なんか、うん。やらかした。ここに来て急に冷静さを取り戻し、自分のやらかした事について反省をして、陽華さんに近づく。
陽華さんの前についた私は、耳元で囁く。
「陽華さん。センパイの前でそんなに怒って大丈夫ですか?」
それを聞いた陽華さんは、我に帰ったのか顔が真っ赤になっていく。そんな陽華さんを見て、顔がにやけてるセンパイに向かい一言。
「センパイ〜! 今日の依頼料は、私とのデートでいいですからね〜!」
「依頼料ねー。わかっ…………今なんて言った? デートとか言ったか?」
「はい〜! これは決定事項です! では、私はこの辺で〜!」
「…………おい! ちょ、ま……」
センパイが何か言いかけてたが、まぁいいだろう。デートはもうすでに決まってる決定事項なんだし。私はそんなことを自分に言い聞かせて、サークルの部室へと戻っていく。
部室に到着し、扉を開けて戻ってきた報告をする。
「ただいま戻りました〜! …………お帰りなさい!」
はぁ。もうお分かりだろうか。私の所属している、お悩み相談サークルのメンバーは、私一人なのだ。そのせいで、最近は本当に忙しすぎる。あっち行って、こっち行って依頼を次から次へとこなさなければならない。
もう、センパイ引き込むかぁ。どうせあの人、バイトもしてないだろうし……
私はそんなことを、部室で一人呟いた。
◇◇◇
「センパイ〜! 今日の依頼料は、私とのデートでいいですからね〜!」
愛理のこの一言で、講義室が再び荒れたのは言うまでもなく。今度は陽華さんまで、僕と対立してしまった。よし。愛理に次会ったら、バーゲンダッツ奢らせよう。我ながら名案だろう。よし。今日はもう帰るか。
と、荷物をまとめていると陽華さんが近づいてくる。え? ついに……ついに……愛の告白を? …………な訳なく。
彼女は僕に向けて笑顔で耳元に囁く。
「陰雄くん。いや、根暗さん? 愛理さんとのデート楽しんできてね!」
「…………ひぇっ!?」
うん。なんだろう。殺気を感じるし、楽しんできてに聞こえないのは気の所為だろうか。さっきから怖すぎて、ちびっちゃいそうなんだよね。何がとは言わないけどさ……20歳になった男が、ちびるのは流石に……
などと思うが、反論を受け付ける雰囲気ではなく諦めて頷く。いやまじで僕何されるの!?
その後少しして、講義が始まり皆ギスギスした空気のまま講義を受けた。僕めっちゃヘイト溜まってね? と思うが、まぁいいか。とりあえず今日は酒でも飲みに行って忘れよう。
そして僕は講義を聞くよりも、今日お酒を飲みにいく店を探すのであった。
◇◇◇
大学も終わり、講義の最中調べて隠れた名店。みたいな雰囲気のバーを見つけたのでそこに向かっていた。大学から、徒歩圏内にあるそのバーは一見なんの変哲もないビルの地下にあった。
「……ここか。よし。入るか」
僕は覚悟を決め、扉を開ける。
──カランカラン
結構古くからあるお店なのか、扉が少し重かったが、開けると綺麗な鈴の音が聞こえる。目に入る店の雰囲気は、アニメなどで、凄くダンディなマスターのいるかっこいいバーの様だった。僕がきたのに気づいたのか、マスターらしきガタイの良いおっさん(?)がこちらに歩いてくる。
そしてそのおっさん(?)は僕の前に立つや否や口を開いた。
「あらぁ〜! 初めてみる子ねぇ〜! さ、さ! こちらへおいで〜! 歓迎するわぁ〜!」
うん、前言撤回。おっさんじゃ失礼だ。オネェさんだ。とりあえず、僕はそのオネェさんに着いて行き、カウンター席に腰をかける。そしてオネェさんは言う。
「きみぃ〜! 名前はなんて言うのかしら?」
「……ね、根暗 陰雄です」
「なら陰雄ちゃんね! それでぇ、陰雄ちゃん。何飲みたいかしら〜?」
僕はそう言われ、メニュー表を見る。やばい……知ってる名前のお酒がない……そう思った僕は、適当にカッコ良さそうなのを選んだ。
「じゃ、じゃあ、マンハッタンってやつで……」
「あら、こう言うとこは初めて? 本当にそれでいいの?」
初めてだが、何か問題でもあるんだろうか? 初見の方は飲んだらダメみたいな? わからない僕はとりあえず問う。
「……えっと、だめ? ですか?」
「いいや、そんなことはないわよ! マンハッタンね。少々お待ちを」
バーでカクテル作ってるの生で見てみたかったんだよなぁ。僕は、生のバーテンダーのカクテル作りをしばらく見ていた。やがて出された、そのカクテルは、ミステリアスな赤い色が魅力的なカクテルだった。
初めてのカクテル。僕は期待を胸に、飲み始めた。
…………そして僕は後悔することになる。




