16杯目 センパイの返事とこれから
『ずっと好きでした。私と付き合ってください』
私はついに、勇気を出して告白をした。センパイは驚いた顔をしている。でもそれでいい。私の事をしばらく避けていたんだ。それくらいの事はしても文句は言われまい。でも振られたら今まで通りでいられるのかな……
そんなふうに思う私は、センパイの顔を見ることが出来なかった。どのくらいの沈黙だっただろうか。1分? 1時間? それは分からない。だが、私にはすごく長い時間に感じた。
でも、そんな沈黙も終わりを迎える。
センパイは遂に口を開いた。
「ごめんね。愛理。愛理は、僕が辛い時沢山励ましてくれて、僕の傍でずっと笑っててくれたよね。本当に感謝してるんだ。でも、僕は好きな人が出来ちゃったんだ。だから愛理とは付き合えない。本当にごめん……」
「…………そうですよね。好きな人って陽華さんですか?」
「そうだよ」
「……そう……ですか」
「うん」
あーあ。私の初恋は終わってしまった。でも泣いちゃダメだよ。まだセンパイが目の前にいるんだから。泣いたらセンパイ自分のせいだって感じちゃうから。だから泣くのは家まで我慢。
「…………愛理? 本当にごめん」
「…………何がですか! 私は元気ですよ! そんな謝らないでください!」
「だって、涙が……」
「えっ……」
センパイに言われて、自分の頬に一筋の雫が流れていることに気づく。私はそれを拭って誤魔化す。
「振られたから泣いてた訳じゃないですよ! やっと自分の気持ちを伝えられた事で胸がスカッとしてるだけです!」
あぁ。本当は振られたからだろう。でも、そんな事は言えない。お願いだからセンパイ。もう私に優しくしないで……
「そうだったの……? 本当に大丈夫なの?」
「はい! だから私もう帰りますね! いきなり来て、告白なんかしてすみませんてした!」
「告白は嬉しかったよ。ありがとう。家まで送るよ。もう遅いし」
「…………大丈夫です! 私は1人で帰れます!」
「そっか……気をつけて帰るんだよ……」
「はい! また明日、大学で!」
「あぁ、また」
私はそう言うと、自分の家に向けて歩を進めた。徒歩10分くらいの道を30分かけて。その間泣いた。沢山泣いた。枯れたと思った涙は再び溢れ出した。
ようやく、家に着いた私は玄関を開けるとママが待っていた。ママは泣いてる私を出迎えるなり、優しくそっと抱きしめてくれた。そのママの優しさに、また泣いた。そんな私にママは言う。
「愛理? よく頑張ったね。今日はママ愛理の好きな料理作ってあげる。何がいい?」
「…………オムライス。…………ふわとろの」
「分かった」
ママはそう言うと、再び優しく抱きしめてくれた。
私はこの日の夜、眠りにつくことが出来なかった。
こうして、私の初恋は終わったのである。
◇◇◇
愛理の告白を断ってから3日。僕は大学を休んでいた。
愛理とはこれまで通り接したいと思ってはいるものの、どうしても申し訳ない気持ちでいっぱいになる。同じ大学って事もあり、顔を合わせるのが気まづいなと思ってしまう。
「はぁ……明日は行くか」
僕は一人そう呟き、シャワーを浴びにお風呂場へと向かう。洋服を脱ぎ、さてこれからシャワーを浴びよう。と思った時だった。
──ピンポン
突然チャイムが鳴る。インターホンのモニター越しに……見れればよかったのだが、生憎僕の家にはそんな物ついてない。仕方なく、下半身にタオルを巻き、近くにあったパーカーを着て玄関を開ける。
「センパイ! 大丈夫ですか〜?」
「…………えっ? 愛理……」
「そうです! センパイに振られた愛理ちゃんです〜!」
「………………」
突然家に来た愛理に驚きを隠せなかった。しかも、「センパイに振られた」か。全く耳の痛い話だ。愛理は、気にしてないのかな? などと思いながらも、尋ねてきた理由を問う。
「……いきなりどうしたんだ?」
「センパイ、あの日から休みすぎですよ! いつまで気にしてるんですか?」
「そんなこと言ったって……逆に愛理は俺が憎くないのか……?」
「なんでセンパイを憎むんですか! センパイは、やっと過去と決別して好きな人が出来たんですよ! 憎む理由なんてないです! だからと言って、諦める理由もないですけど!」
「………………」
僕は愛理のその言葉を聞き、胸の中に抱えていた何かが、すーっと晴れていった気がした。とりあえず、僕は愛理に一言。
「ありがとう」
とだけ言い、シャワーへと戻った。余談だが、愛理は僕がシャワーしている間部屋で待ってると言っていたが、流石に断った。
そして僕は決意する。根明さんに積極的にアプローチをしに行く事を……




