14杯目 始まりの物語
大学に入り、2度目の春が過ぎていた。僕は、誕生日が5月と言う事もあり、お酒が飲めるようになっていた。最初は、お酒なんてハマることは無いんだろうな。と思っていたのだが、いざ飲んでみるとお酒の魔力に惹き込まれていった。
それから毎日のように、大学が終わると居酒屋や、バーに通っている。
それだけお酒が好きなのだが、一つだけ欠点があった。
それは……
『びっくりするくらいお酒に弱い』
と言うものだった。ただお酒が弱いだけなら、まだいいのだが。僕の場合、お酒に酔うと、性格が180度変わってしまう。と言うものだった。具体的に言うと、目元まである髪をかき上げ、伊達のメガネを外して、一人称が『俺』になり、逆ナンだってされた事があるくらいには、喋ることができる。
イケメンだとは思わないが、普段よりは多少マシにはなると思う。まあ、だからなんだって話ではあるんだけどね。
そんなに性格が変わるなら、友達の一人は増えたのかって? 結論から言うとNOである。それで友達ができるくらいなら、この世界みんな友達だろう。
と、前置きはこのくらいにして、俺と陽華の物語はここから本格的に始まって行くのである。
◇◇◇
「根暗くん! 今日遊びに行かない?」
「根明さん……ご、ごめん……今日は忙しくて……」
「そっか! わかった! いつもごめんね!」
「……こちらこそいつもごめん」
はぁ。今日で10回目か。と私は、悲しみに打ちひしがれていた。彼は、半年ほど前の愛理ちゃんと遊びに行って以降、少し様子が変わった。もしかして何かあった? と思い聞いてみても、はぐらかされるだけで特に何も教えてくれる事はなく。
私が帰った後、一体何があったんだろう。気になった私は、遂に意を決して愛理ちゃんに聞くことに。
〔 (陽華)愛理ちゃん? 今少し話せる?〕
とりあえず私は、メッセージを一文だけ送っておいた。返事がすぐ返ってくる事はなく、講義が始まるので準備を始める。そんな時だった。
「陽華さん! メッセージ見ました! どうしたんですか?」
私の通う大学に入学していた、愛理ちゃんが直接話しかけてきた。私は、何を言われても言いように覚悟を決めてから、彼女に問う。
「急にごめんね。根暗くんと何かあった?」
「……その件ですか。センパイからは何か聞いてませんか?」
「うん」
私の問いに対して、彼女は一言根暗くんから聞いてないか? と言い、頷くと、こう続けた。
「じゃあ、私が話しますか。その、先に謝らせてください。すみません」
「何を?」
謝られる事何かあったかな? なんて考えてる私に、彼女はとんでもない事を語った。
「私、陽華さんがセンパイの事好きだってことを知っているのに、センパイをデートに誘い、その……キ、キ……キスをしてしまいました」
え? なんで私の気持ち知ってるんだろう? 戸惑いながらも、私は言う。
「わ、私が根暗くんをって……な、何を言ってるの……って、えっ!? キス……」
「はい。イルカショーを見ている時に……」
「そう……だったんだ……それで……その、根暗くんとはその、つ、付き合ってるの?」
「それが……センパイあれから私の事を避けてるようで……」
それ以降の話はちゃんと聞くことができなかった。根暗くん……愛理ちゃんのことをどう思ってるの? 振り向いて欲しいけど、愛理ちゃんも好きみたいだし……
私はその日、家に帰ってからもずっと何もする気力が起きなかった。




