13杯目 それぞれの思い
僕は今、自分の気持ちがよく分からなくなっている。と言うのも、2度と恋愛はしないと決めてはいるのだが、どうしても少しづつ根明さんの事について考えるようになっていた。好きとかそんなんじゃなく、仲良くしてくれてるのに突き放し続けるのは、違うと思ったからで。
そう思っていても、やはり裏切られるのが怖いって気持ちも変わっていない。だからこそ、独りを選んでいると言うのに……
「はぁ……」
僕はどうするべきなのか。
そんな時に電話が鳴った。
「はい」
『センパイ〜! 何してるんですか?』
「今ちょっと考え事を……」
『何を考えてたんですか〜? もしかしてエッチなことですか〜? センパイやらし〜』
こいつは本当になんなんだ? 僕をなんだと思ってるんだよ。と思い言う。
「よし。用がないみたいだね。切るね」
『ちょ、ちょ、ちょ、ちょ! 嘘です! 冗談ですよ!』
「じゃあ、何の用なの?」
『もう! センパイはいつもそう言う態度を取るんですから……んっんー。センパイ! 私とデートしましょう!』
今なんて言った? ついに頭壊れたのか? なんて思ってフリーズしている僕に向かって、愛理は呼びかける。
『あれ? もしもーし! センパイ? どうしました?』
「……っは? デ、デートって、えっ!? 熱でもあんのか?」
『ひどいです! 大真面目です! 次の休み空けといてくださいね! じゃあ!」
こうして、否定も肯定もする間も無く、愛理とのデートが決まったのであった。
◇◇◇
〜愛理side〜
突然だが、私は今恋をしている。幼馴染の陰キャなセンパイ、根暗陰雄に。きっかけは? と聞かれれば、10年遡らなきゃいけなくなるんだが、まぁよくある話だと思う。いじめられていた女の子を、助けてくれた男の子。小学生が好きになるなんて、こんなものだろう。その時の気持ちを、この年まで引きずる人はごく少数なのかな? と言っても、恋だと気づいたのはつい最近なのだが。
自分の気持ちに気づいてからは、沢山悩んだ。だって、センパイは過去の出来事からもう恋なんてしない。と心を閉ざしてしまっているから。
だから必死に抑えていたはずだったのに……
気づいた時には電話をかけてしまっていた。何も言わずに、揶揄って切ろう。そう思った私の口から出てきた言葉。それは……
「センパイ! 私とデートしましょう!」
だった。その後のことはあまり覚えていない。勢いで日程まで決めてしまったから。途端に私は恥ずかしくなり、電話を切った。
「馬鹿バカばか。私の馬鹿」
その日私は、夜が更けるまで枕を濡らして泣いた。
◇◇◇
〜陽華side〜
「根暗くんに会いたい!!」
私は目の前にいる、茶髪で顎までの長さの髪、目はくりっとしてて、モデル級び美人な親友に言う。そんな心の叫びを聞き、彼女は口を開く。
「そんなに会いたいなら、デートに誘いなよ」
「それが出来たら苦労しないの!」
「だって、家にも行ったことあるんでしょ?」
「それは……そうだけど……」
「何を迷ってるのさ。次の休みにでも誘ってみなよ。今すぐ。早く」
「……えぇ。わ、分かった」
私は言われるがまま、彼に電話をかける。驚くことにすぐに電話に出てくれた。
「も、もしもし」
『もしもし』
「根暗くん? 急にごめんね」
『はい』
「次の休みさ、私と、その、デ、デートしてくれない……?」
『………………』
私の勇気を振り絞ったお誘いに、彼は黙り込む。嫌なのかな? なんて不安が込み上げてきたが、隠して彼に問う。
「あれ、根暗くん? 大丈夫? デートしてくれるかな……?」
『根明さんもなの……』
「ん? 私もってどう言うこと?」
『さっき、愛理からも同じこと言われたんだよ……』
「…………っえ? 愛理さんも……なんだ……」
そこから彼の言ったことは覚えていない。ただひたすらに、ライバルの出現を感じ取ってしまっていた。でもそれはそうだよね……ずっと昔から彼と一緒にいたんだもんね……泣きそうになるのを我慢しながら、電話を終えた。そんな私に、朱里は言う。
「ダメ……だったんだ……」
「……うん」
「私に一ついい考えがあるけどどうする?」
「……いい……考え?」
「うん! その名も……ストーキング大作戦!」
「それって……ストーカーするの?」
「何も、私生活をストーキングする訳じゃないの! そこは勘違いしないでね。幼馴染ちゃん? とのデート? を陰から覗くだけさ!」
「いいのかな……」
「そんなんだと、取られちゃっても知らないよ?」
「……それは嫌だ」
「じゃあ決まり!」
こうして、ストーキング大作戦が始まるのであった。本当に大丈夫なのかな?




