9杯目 助けて。根暗くん……
私は、友達と遊ぶ約束をしていたはずなのだが、気づいたら合コンの席に座らされていた。誘ってきた友達の方を見ると、申し訳なさそうな顔をして、ごめんねと口パクで言っていた。
何でこんな事になっているのかは、1時間ほど前に遡る。
全ての講義を終えた私は、家に帰るところだった。そんな時、1人の女性に呼び止められる。
「陽華! 今日の夜って暇?」
「音音! どうしたの? 暇だよ」
「本当? じゃあ午後8時に、ここにきて!」
「分かった」
音緒は、そう言いながら一件の位置情報を共有してきた。そこはどう見ても、居酒屋なのだが、「分かった」と言ってしまった以上、いけないとは言えず。結局行く事に。
詩楽 音音とは、同じ講義を受けていて気づくと仲良くなっていた。そんな音音は、こうやって時々遊びに誘ってくれる。非常に嬉しいのだが、そんな音音には一つ問題があった。未成年なのに、お酒もタバコも勧めてくる。
別にいい子振りたいわけではない。だが、もう一年待てば合法的に嗜めるのに。とは思う。そんなリスクを負うことを、私はしたくない。
そんなことを思いながら、私は着替えて、少しだけメイクをして家を出た。
私は、今日お酒を誘われても断る。そんな強い意志を持って、音音の待つ場所へと向かう。だが、集合場所で私を待っていたのは……
「お! 君が陽華ちゃん? 本当に綺麗だね!」
「ちょ、お前なに抜け駆けしてんだよ! 陽華ちゃん! 俺とL○NE交換しよ!」
「……えっ? どう言うことなの、音音?」
「ごめん! 陽華!」
何でも、急遽合コンの人数が足りなくなって、私を呼んだらしい。本当に困る。あぁ。根暗くんに会いたい。そんなことを考えていると、モブ男Aが私に言う。
「陽華ちゃん、全然飲んでなくない? 折角の合コンなんだし飲もうよ!」
それに続いて、モブ男B、Cも言う。
「そうだよ! 飲もうよ! 酔ったら俺が介抱してあげるから」
「だからお前らに任せたら陽華ちゃんが可哀想だろ! 陽華ちゃんこの後、2人でどっか行こ?」
「すみません。私未成年なのでお茶で」
あぁ、気持ち悪い。気持ち悪すぎる。一刻も早く抜け出したい。だがそれができない様、3人掛けの席の真ん中にされている。全て音音のせいで……あぁ。本当に帰りたい。そこで私は、お手洗いに行く。と音音に伝え、席を立とうとした時、音音は私に向かい呟く。
「帰ったら分かってるよね?」
音音には、友達だから。と信じていなかった噂があった。
それは、私みたいに無理やり合コンに連れてきた子が、お手洗いにと言い帰った。その時、大学でその子が合コンの相手全員と、ヤったとか。その子の釈明は、音音の人気の前には消え去った。
とりあえず私は、財布とスマホだけを持ち、お手洗いへと逃げた。
お手洗いに着き、個室に入って、スマホを開く。そして、あまり長くならぬよう根暗くんに向け一言のメッセージと位置情報を送る。
〔(陽華)根暗くん助けて……〕
気づいて。助けに来て。そう願いながら、つまらない空間へと戻っていくのであった。
席に戻り、お茶を飲んだ時に違和感を感じた。それは、普通のお茶じゃない。けどその正体がわからなかった。そんな時だった。信じられない事を音音は言い出した。
「折角だから陽華のお茶、緑茶ハイにしといたから! 濃いめね!」
「……っえ!?」
「折角こうしてみんな楽しんでるのに、1人だけお茶って言うのもねぇ」
「そうそう! 今日くらいは大丈夫だよ」
「酔ったら俺たちが介抱するから!」
どうしてこんなことが平然とできるのかな? なんて思っていると、酔いが回ってきたのか、少しぼーっとしてきた。周りではモブ男達が嬉しそうにしているのが聞こえる。だが、なにも考えることが出来なくなっていた。
そんな時だった……
僕は今走っていた。何故こんな事をしているのかは分からない。だが、根明さんから送られてきたメッセージを見た途端、走り出していた。だって、位置情報に助けてってメッセージだったんだよ? 何か大変なことが起きそうなんだよなぁ。と思ったものの、送られてきた場所は……居酒屋?
とりあえず恐る恐る入ってみると、すぐに見つけた。酔った根明さん? を嬉しそうな顔で囲む男が3人。横で意味深な笑みを浮かべる女性が1人。困ってあたふたしている女性が1人。そして僕は察した。
根明さんはトイレでメッセージを送ってきていた。その隙に、無理やりお酒に変えられていて、気づかず飲んでしまい酔ってしまった。って感じかな。とりあえず僕は、勇気を出し根明さんに近づきこう言った。
「迎えにきたよ。陽華」
と。




