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傲慢な男らと意固地な女  作者: 迷子のハッチ
第4章 王妃として
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第58話・5 ビーザ砦の攻防(5)

 防衛戦の合間に事務仕事です。

 デーストゥラ城(右)とスィニートゥラ城(左)の二つの出城の防衛に成功した。


 中央の城館に帰って来て、トラント将軍に報告した。


 「デーストゥラ城ではナーバス陸尉に適格な助言をもらい攻め手の将を5名打ち取る事が出来ました」

 「スィニートゥラ城では、グラス陸尉に助言を貰いながら攻撃しましたが、デーストゥラ城の敵の崩壊が影響してか、2回目の攻撃時には敵の将は撤退していて督戦していた将校を倒しただけでした」

 「それだけで、敵が全て撤収してしまったのが残念でした」

 「倒した敵将は最初の一人だけです」


 「ダキエの姫様、援軍ありがとうございます。」


 トラント将軍が頭を下げながらお礼を言ってきた。


 「礼はいらないですよ、此の戦はビチェンパスト国の内戦ですが、ビェスにとっては建国によって残った残敵の掃討戦なのですから」

 「ビェスの妻として、私の戦いでも在るのです」


 「それでも助かったのは間違い無い事です。」

 「両出城への投石器だけでなく、数の理で持って攻められると今日は守れても明日か明後日には撤退を余儀なくされていたでしょう。」

 「でも、あなた様が援軍に出向いていただいたおかげで、敵は陣立てのやり直しをする羽目になっています。」


 そこで、トラント将軍は考え込むようにして言った。


 「今の敵の様子では、昼7後(午後)からの攻撃は必要無いでしょう。」

 「必要無いと言うより、飛ばない方が良いのではないかと思っています。」


 昼7後(午後)からの偵察兼攻撃を予定していたのに、飛ばない方が良いとはどうしてなんだろう?

 トラント将軍は首をかしげる私を見て説明してくれた。


 「キリアム侯爵軍の様子ですが、兵の動揺がここからでも分かるぐらい見えます。」

 「飛竜が空から火の玉を飛ばしてくる事が余程堪えたのか、兵のいる場所で騒動が起きているようです。」

 「この様子では、両出城でさえ後4,5日は様子見ぐらいの攻撃が在れば良い方でしょう。」


 トラント将軍の言う事は、再びキーグで空から攻撃したらキリアム侯爵軍が撤退してしまうかもしれないと言ってるのだろう。

 ビェスが望む決戦前にキリアム侯爵軍が撤退してしまったら、ビェスの望む決着が付けられなくなってしまう。


 「分かりました、飛竜での攻撃は中止します」


 トラント将軍に昼は自室で食べると言い残して部屋を出た。

 昼7後(午後)からの時間が空いてしまった。


 城館の2階にある自室へと引き上げた。

 セリーヌが居なかったので、部屋の前に居る衛兵に昼食を持って来て貰う様に伝言して貰った。


 昼8時(午後1時)頃、セリーヌが帰って来た。


 「ダキエの姫様、留守にしていて申し訳ありません。」


 帰って来るなリいきなり謝られた。

 セリーヌを見ると、魔女薬の箱を持っている。

 私はうっかり忘れていたけど、セリーヌは忘れずに今日負傷した人の治療に赴いていたようだ。

 治療用の上着は脱いでいたが、動きやすい侍女服に着替えていた。


 「セリーヌは負傷者の治療をしていたのでしょう?」


 魔女薬の箱を指さして言うと。


 「はい、西門以外でも両出城から負傷者が運ばれて来ていましたので、西門の兵舎から北と南の兵舎へと回って治療していました」


 「それはご苦労でした」

 「私の指示の無い事をしたから謝っているのでしょうけど、あなたは筆頭侍女よ」

 「私の指示が無くても、状況を判断して動くのは問題ありません」

 「それどころか、今回の治療は私も忘れていた事です」


 キリアム侯爵の軍を撤退しない様に最小限の被害に抑えるのに気を取られていました。

 正直負傷者の事まで気が回って居ませんでした。


 「正直助かりました、ありがとうセリーヌ」


 セリーヌに感謝の気持ちを添えてお礼を言いました。。


 「いえ、とんでもございません、ダキエの姫様から教えていただいた魔女薬での治療が御役に立ったのです」

 「感謝しているのは私の方です」


 筆頭侍女が単独で戦場迄ついて来ているのです。

 戦場に有ってセリーヌはいささかもその気構えに揺るぎは無いようです。

 酷いケガをした負傷者の治療をしても変わらないのですから、セリーヌの覚悟は余程強いのでしょう。


 セリーヌを見ると疲れている様です、無理もありません。

 戦場で負った負傷の治療は、血みどろに成って無駄え苦しむ人を押さえつけ無理やり治療する事が多いのです。

 体力も使った事でしょうし、お腹も減っているのでしょう。

 幸い、昼食はセリーヌが帰る前に衛兵が持って来てくれてます。


 セリーヌも私も、疲れてお腹も減っています、お昼を食べてから仕事を再開しましょう。


 「お昼にしましょう、先ほど持って来て貰ったの」と昼食が乗っているテーブルを指し示す。


 セリーヌもお腹が減っていたのか、笑顔で「はいッ」と答えた。


 食事は大きな砦なので、厨房で作られた食事が摂れる。

 戦の最中でも在るので、酸味の強い黒パンと具は多いけど味付けは塩味のスープだけ。

 食べて満腹感が在るだけの物だった。


 食後にお茶(麦茶)で舌に残る塩味を流しながらまったりと寛いでいた。

 食べた後の食器はセリーヌが厨房へ戻しに行った。


 出撃が中止になったので、開いた時間でパストから持って来た書類仕事を片付ける事にしよう。

 セリーヌと共に、簡素な備え付けの机で書類を確認し終わった物から サインをして行った。


 昼9時(午後3時)には、全ての書類が終わった。


 「負傷者のリストを見せて貰えますか?」

 私は、今日の戦闘で出た負傷者の内容が気になったので、セリーヌが纏めたリストを見せて貰う事にした。


 「はい、どうぞここにあります」とセリーヌは、机の上にあった紙を一枚手に取って差し出した。


 今日負傷した人数は死亡5名、重症21名(内四肢を失った者0名)、軽症54名。

 この内の今日の戦闘で戦闘不能者は6名、内一人は行方不明だそうだ。

 重傷者21名は治療後、しばらく休んだ後に原隊に復帰した。

 軽症者はセリーヌが各連隊を見回った時、魔女薬の初級傷薬を処方して直ぐに原隊に復帰した。


 「この行方不明者は負傷者リストに入れるのですか?」


 「城壁(斜壁)から転落したらしく、現在は行方不明ですけど、恐らく死亡したと推定されていますので、リストに入っているそうです」


 セリーヌから負傷者について話を聞き終わった後、サインした書類を皮のカバンに入れてトラント将軍の元へとやってきました。

 キーグにパストへの伝令に行って貰う予定でしたが、使い魔からの敵情を探らせた結果一時パストへ戻っても良いと判断しました。


 キリアム侯爵の本陣で、混乱した彼らの右往左往する有様を使い魔が見聞きして報告してきた。


 出城を攻撃した軍勢を率いていた領主を討たれた事で兵士が消えてしまったとか。

 竜騎士に攻撃されて、動揺した兵士たちが逃げ出しているとか。

 陣内に幽霊が出たとか。


 最後のは、使い魔が見れる魔力視のスキル持ちが居たのかもしれない。

 逃散した兵士は5千から8千ぐらいの間らしいが、実態は調査中で今も逃散が続いているらしい。


 陣立てのやり直しはしたくても出来ない様だ。

 逃散が多い部隊を自陣に組み込めと言われた領主が嫌がっているそうだ。

 無理も無い話だ、他領の兵士は領地毎に集まっている兵士とは勝手が違うため、揉め事がおおくなるのだ。


 そのため、逃散して数が少なくなった部隊を纏めて後方へ追いやっていると、ヨーヒム将軍がキリアム侯爵に報告していた。


 トラント将軍の判断より混乱が激しい様だ。

 これなら私が一度パストへ帰る事も出来そうだ。

 キーグ単体でパストへ送る積りだったが、私とセリーヌの二人でパストへ帰れそうだ。


 それで、トラント将軍にパストへの帰還の知らせと、ビェスへ送る書類が在れば一緒に持って帰ると伝えに4階までやって来た。


 「キリアム侯爵軍が混乱している事が分かりましたので、一度パストへ戻ろうと思います」


 「おお、ダキエの姫様はお帰りになられるのですか?」


 「はい、明日は恐らくビーザ砦に戻れ無いと思いますので、次の明後日には戻ってまいります」

 「一緒にパストへ送る物が在れば、持って行きますよ」

 「昼11時(午後4時)に飛竜を飛ばしますので、それまでに用意してください」


 「用意しておきましょう、明後日に戻られる事をビーザ砦一同、心よりお待ちしていますぞ。」


 次回は、負傷者の治療内容の報告と帰還です。

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