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傲慢な男らと意固地な女  作者: 迷子のハッチ
第4章 王妃として
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第58話・2 ビーザ砦の攻防(2)

 キリアム侯爵軍の本陣で情報収集です。

 使い魔は、本陣の中にふんぞり返って座っている二人と対面に立つ3人の武装した男らの話を聞いている。


 「そうかヨーヒム、出城は今日中に落とすと言うのだな?」


 ドスの効いたダミ声はキリアム侯爵だ。


 「はい 両出城へは合わせて1万の兵で攻めさせております。」

 「防護の要は10ヒロ(15m)程の斜壁(急な傾斜の斜面に作られた城壁)と空堀が在るにすぎません。」

 「斜壁沿いにある、塔は5ヶ所しかありません。」

 「斜壁は川の崖以外で4ヶ所です。」

 「それらに分散して籠ってもせいぜい50名が良い所でしょう。」

 「攻め手は一つの塔に付き千の兵で攻めるように言いつけております。」

 「20倍の兵力差がありますので、一息に押しつぶしてごらんに入れまする。」


 「ヨーヒム 飛竜に乗ったあの女が来たらどうするのだ!!」


 この甲高い声は息子のダンテスだ。


 「ハッ 攻城戦の最中に来ても火の玉で攻撃すれば守りの要の斜壁(急な傾斜の斜面に作られた城壁)や塔が崩れるだけでございましょう。」

 「既に、兵共は斜壁に取り付いております。」


 ヨーヒムと呼ばれている男は自信有り気に言って、頭を下げた。


 「では、恐れる事は無さそうだな。」ダンテスが少し安心したのか緊張の無い声を出した。


 「お畏れながら、出城以外に攻撃されれば被害が大きかろうと懸念しております。」

 「最も恐れておりますのは、輜重を置いております場所への攻撃でございます。」

 「他にビーザ砦への攻撃では川を越えなければなりませんが、川越の途中にでも襲われては抗いようがございません。」


 「ふむ、輜重を焼かれては身動きできん。」

 「対策は取っておるのか?」


 「ハッ! 既に分散すべく動いておりますが、何分にも量が多く明日まで掛かるかと。」


 キリアム侯爵の質問に、ヨーヒムも既に手を打って居る事を伝える。


 「ここは大丈夫か?」ダンテスが恐々と言った顔でヨーヒムと呼ぶ男に聞いた。


 「近くに横穴を掘っております。」

 「既に15ヒロ(22m)は掘り進めております。」


 「そうかそうか、出来次第そこへ移ろう。」


 「ハッ 御安心を。」

 「見張り台より飛竜を見つけたなら、一番に知らせるよう下知しております。」

 「竜騎士が出てまいりましたら、そちらへ御移りいただけま・・・ッ!」


 「輜重に被害が在れば身動きが取り難くなりそうだ。」

 「国元へ新たに輜重を整え送る様に伝えよ。」

 「他に何も無ければ軍議はこれで終わる!」


 キリアム侯爵の声がダンテスとヨーヒムの話を遮った。

 穴に逃げ込む話が気に食わなかったのかもしれない。


 それにしても、被害を想定して早めに手を打とうとしいるけど、兵の補充までは考えていない様だ。

 兵の追加は3万以上集めたのだから、限界まで集めたのかもしれない。

 そうだとすれば、キリアム侯爵は後が無い状態で此処へ来ているのかもしれない。

 ならば、彼もビェスとの決着を望んでいるのだろう。


 「ハッ!」


 ヨーヒム以下ダンテスも頭を下げて、キリアム侯爵が天幕の奥へと消えるまで頭を下げていた。

 其の後ダンテスが奥へと消え、残された3人もテントから出て行った。


 私は、使い魔に掘っていると言う横穴と輜重を分散させているらしいので、その分散先を確認するように伝えた。


 敵の動きはほぼ掴めた。

 私は如何動くかトラント将軍と話し合う必要がある。

 西の矢狭間の窓から後ろのトラント将軍へと向き直った。


 「トラント将軍、敵の攻撃は両方の出城共、激しく攻めてきておりますが、加勢が必要とお考えですか?」


 「ナーバス陸尉からは敵は攻めあぐねていると連絡が在った。」

 「グラス陸尉も押し返せていると連絡して来ている。」

 「今日は加勢は必要無かろう。」


 グラス陸尉とはスィニートゥラ城(左)を任されている第2連隊第4大隊の陸尉だ。

 両出城からの報告は、キリアム侯爵の軍議で聞いた話とだいぶ違う様だ。


 「両方の出城へはどのくらいの敵が攻めてきているのですか?」


 「報告はまだ無いが、昼1時(午前6時)の時点では5千だと報告が来ていた。」


 敵の情報は正確にとらえているのに、判断が分かれるのはどうしてだろう。


 「守備は300、それに対して敵が5千では17倍になりますが?」


 「人数差だけならば一蹴されるだけだが、砦に籠って戦う時は道具が使える。」

 「両出城には投石の道具が備え付けられているし、防御もしやすいように作られている。」

 「ビーザ砦へ繋がった地下通路もあるし、油断は出来無いが当分は大丈夫だよ。」


 投石の道具ってどんなのだろう?

 それに地下通路で繋がっているのなら、地下から私も応援に行けるかも。


 「トラント将軍、私は出城か物資が集まっている場所か、どちらを攻撃するべきか迷っている」

 「トラント将軍の考えはどうなのかお聞きしたい」


 トラント将軍は相変わらず平然とした顔で西の敵の動きを見ていたが、視線を私に向け考え込むように眉根を寄せた。


 「そうですな、出来れば両出城への斜壁の上から先ほどの火の玉を撃って貰えればと思っとります。」


 竜騎士では無く、斜壁? 城壁だろうか? の上から火球で攻撃してほしいらしい。

 そう言えばキリアム侯爵軍のヨーヒム将軍が同じく斜壁と呼んでいた。

 垂直な城壁では無く角度の付いた城壁の事を呼ぶのだろう。


 「戦場ですから、何処から流れ矢が飛んで来るか分かりませんが、危険を承知でお願いしたい。」

 「昼7後(午後)からは物資の集積所への偵察を兼ねた攻撃をお願いしたい。」


 トラント将軍から危険を承知でお願いされた。

 出城の戦力差にトラント将軍も危惧はしていた様だ。

 昼7後(午後)も竜騎士として偵察? 何を見てくるのだろう?

 物資の集積場所を攻撃するのは出城の防衛の後と言う事らしい。


 「承知しました、これから両出城へ出向き防衛戦に加勢してきます」

 「先に右から向かいますね」


 そうトラント将軍に言うと、彼は黙って敬礼した。


 次回は、両出城に応援に行きます。

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