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傲慢な男らと意固地な女  作者: 迷子のハッチ
第4章 王妃として
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第58話・1 ビーザ砦の攻防(1)

 投石器の破壊は成功した、だがキリアム侯爵軍の攻撃は始まったばかりだ。

 ビーザ砦の飛行場へ帰って来た時は、デーストゥラ城(右)とスィニートゥラ城(左)両出城への攻撃は未だ始まって居なかった。


 「それで、投石器は全て破壊出来たのですか?」トラント将軍が気掛かりだとばかりに聞いて来た。


 私が、4階の部屋に入った途端の質問だったので驚いた。

 よほど気掛かりだったのだろう。


 部屋へ入るには、ドアの衛兵が常に出入りを確認する。

 私が入る時も「ダキエの姫様がお見えです。」と、ドアを開けて衛兵が声を張り上げている。

 それで、私が来た事を知ったトラント将軍から部屋に入る早々聞かれたのだ。


 「はい、3台とももう一度一から作る必要があるでしょう」

 「2台は炎上させ、1台は土砂に埋まり上部構造が燃えてしまっています」


 返事を返しながら室内を見回し、偵察してきた内容と昨日の使い魔の調べた事を知らせる方法を探した。


 「問題は、投石器の材料が未だあると言う事ですね」

 「帰りに見てきましたが、街道のビーザ砦からは折れ曲がって見えない場所に物資の集積場所が作られています」

 「そこに未だ数台分の投石器を組み立てられる木材や資材があります」


 そうだ、地図が在れば分かりやすいだろう。


 「ビーザ砦周辺の大きな地図はありますか?」


 地図は常に用意しているようで、棚から地図と石で出来たコマを直ぐに出してきた。

 トラント将軍に実際の場所を示すために、此処4階に設けられているテーブルに地図を広げて貰います。


 「地図に調べて来た情報を置きますね」用意されている白と黒に色分けされた四角い石を地図に置いて行く。


 単純な色分けで、白は味方、黒は敵で良いでしょう。

 幾つかの黒い石を持って置いて行きます。

 その時小さな紙に情報も書いてその場所へ置き上から石で固定します。


 私が置く場所は、物資の集積所とキリアム侯爵が本陣を構える尾根に作られた見晴らし台などです。

 ビーザ砦からは見えない稜線の向こう側にも置いて行きます。


 キーグで見て来た事で地上からだけでなく空からも見たので、位置の情報は間違いが少ないでしょう。


 使い魔はキーグが着陸した後、キリアム侯爵側の反応を調べるために召喚して、既にキリアム侯爵軍を偵察に向かわせている。

 今は、川向うの投石器の燃え残ったゴミの処理をしている部隊を見ている。


 地図に石を置き終わったので、トラント将軍に説明をして行く。


 「物資の集積場はここです」と街道の折れ曲がった先に置いた黒い石を指さす。

 「キリアム侯爵が本陣を構えているのは、恐らくここでしょう」


 使い魔に確認させた本陣の位置を示す石を指さす。


 「どうしてそこが本陣だと思った?」トラント将軍に聞かれたが、恐らく確認のためだろう。


 「この見晴らし台はビーザ砦と左右の出城が良く見えます」

 「更に、防御用の柵や空堀が掘られ厳重に防衛されていますから」

 「張られているテントの数と大きさから此処が本陣で間違い無いと思います」


 使い魔に見聞きさせて確認していますので、断言しておきます。


 「まぁそうだろうな。」トラント将軍も納得しているようです。


 その時遠くから「ワーーッ! ワーーッ!」と言うような声が聞えて来た。

 トラント将軍が地図を見ていた姿勢から、顔を上げ窓の外を見た。


 「ふむっ どうやらキリアム侯爵軍の攻撃が始まったようだな。」

 「投石器への攻撃で、初動を邪魔され兵の展開をやり直す羽目になったようでね。」

 「今から攻撃しても、投石器も無く無理に押しても今日中に出城が落ちる事は無いでしょうな。」


 とトラント将軍何気ない声で言った。


 「今日は良い天気だ。」とでも言いたげな普通の声だった。


 私はトラント将軍みたいに日常的な出来事みたいな対応は出来ない。

 西を向いた、矢狭間に板をはめ込んだ窓へ駆け寄ると、声のする方を見た。


 声は西と北それに南から聞こえて来るようだ。

 ここはビーザ砦の中で一番高い、見晴らしの良い場所だ。

 味方の配置や敵の攻撃が良く見える。

 城壁が在るので、直下の敵兵は見えないが、押し寄せる敵軍の様子は良く見える。


 東から煙が立ち上り始めた。


 「掘っ立て小屋しか無いが、城攻めに邪魔だから敵が焼き払っているのだよ。」


 煙に驚いて見ている私にトラント将軍が説明してくれた。

 そう言えば、ビーザ砦とかかわりのある住民が住んでいる場所だと聞いている。

 真っ先に燃やされるだろうと聞いていたが、ひょっとして敵が燃さなかったら味方が燃やすのかもしれない。


 住人は既に避難しているそうだが、燃やされると知ってて立ててるから掘っ立て小屋なんだろうな。


 東門への攻撃は近くの町(掘っ立て小屋の町)が燃え尽きるまでなさそうだ。

 今最も激しく攻められているのは西門の様だ。

 左右の出城へも攻撃がされているけど、なんだか声が小さい様に感じる。


 使い魔は既にキリアム侯爵の本陣へ忍んでいる。

 キリアム侯爵軍の纏まった情報が聞けるのはやっぱり本陣しか無いだろう。


 次回はキリアム侯爵軍の様子とビーザ砦の防衛戦です。

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