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傲慢な男らと意固地な女  作者: 迷子のハッチ
第4章 王妃として
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第56話・5 ビーザ砦防衛(5)

 キリアム侯爵軍は到着後、何やら大きな物を組み立てている様だ。

 投石器の事は前日使い魔に調べさせていた。


 キリアム侯爵軍は夕方、橋げただけの橋の手前まで到着した。

 ビーザ砦から300ヒロ(450m)以上離れている。


 そのため食事を一緒に食べたのは将校の半分強と言った所だった。

 そのキリアム侯爵軍は私たちが部屋に帰る頃には半数(1万以上)ぐらいが到着していた。


 出城のデーストゥラ城(右)とスィニートゥラ城(左)を襲うような動きは見られなかった。

 それよりも小山を越えてビーザ砦を包囲するような動きに出ていた。


 「敵の一部がデーストゥラ城(右)のある小山を越えて、ビーザ砦の東へと動いている。」

 「回り込んで来た部隊は5千ぐらいだ。」

 「今の所雪解けの増水もあり、夜に川を渡る動きは無い。」


 「川を渡れば、ビーザ砦に隣接した町が在るが、戦争が始まる前に避難させた。」

 「キリアム侯爵軍が来れば寄せ集めの板で作られたバラックの町だが焼かれてしまうだろう、前回の戦争でも焼かれたからな。


 と、食事の時トラント将軍が教えてくれた。


 私は、部屋に帰って直ぐに夜襲の警戒も有って、使い魔を偵察のため出している。

 使い魔の感覚に同調して敵陣を探っているため、ぼんやりした動作になっていたのだろう。」


 「姫様、お疲れのようですね」とセリーヌに言われてしまった。


 セリーヌにお世話されながら、着替えと体を拭き終わり、ベッドの中でビェスの添い寝が無いのを寂しく思いながら、使い魔で敵陣を探っていた。


 キリアム侯爵本人が此の軍の中の何処にいるのか、最初に見つける必要がある。

 使い魔に人の動きや物資を置いてある場所を探させた。


 やがて人が多く行き来する場所が見つかった。

 そこへは多くの物資が運び込まれている、敵の大将がいてもおかしくない。


 本陣と思われる場所は街道が通る谷間から少し離れた、スィニートゥラ城(左)のある尾根に続く見晴らしの良い山の上に作られていた。

 街道の通る谷間はその山の前でデーストゥラ城(右)側へと曲がって奥(キリアム領)へと続いている。


 そこからなら、ビーザ砦の全体が良く見える場所になる。

 元々街道を見張る見晴らし台が置かれている場所の様だ。

 街道を見張るための見晴らし台が作られている。

 今はキリアム侯爵軍が来ているので、味方は撤退して敵しか居ない。


 敵は山の周囲に数千の軍勢を配置して本陣を固めている。

 使い魔には、敵がどれくらいいようとも関係ない。

 どんどん進んで行って、敵のど真ん中にある本陣に侵入する。

 キリアム侯爵が居るのは、山の頂上から少し下がった場所を切り開いてテントが幾つも張ってある場所だ。


 使い魔がその中で最も大きなテントの布をするりとすり抜け侵入した。

 キリアム侯爵軍の本陣には大将が二人居る様だ。

 一人はキリアム侯爵で、もう一人はビェスの妹を攫って妻にしたキリアム侯爵の息子ダンテスだと思う。

 「御大将」とか「閣下」とか「ご子息様」とか呼ばれていて名前で呼ばれないので確定では無い。

 間違いは無いと思うけどね。


 中で話し合われていたのは、夜襲では無くて投石器の組み立てを急がせる言葉だった。


 「出城用の投石器は場所が山の中なのは分かるが、遅れる理由にはならん!」

 「人を増やして対応するのだ!」

 「3台とも投石器の組み立ては明日の朝までに終わらせろ!」


 甲高い声で話しているのは息子の方だ。


 「投石器からバラ石をビーザ砦と出城へ撃ち込み、其の後両出城の四方から攻撃を行う。」

 「出城を落とせば、投石器を出城に据えて、ビーザ砦に撃ち込んでくれるわ。」


 だみ声で話すのはキリアム侯爵だろう。


 「父上、明日が待ち遠しいです。」


 「明日出城を落とし、明後日にはビーザ砦にキリアム家の旗を立ててやる!」

 「ビェスの小僧め、今度こそ息の根を止めてやる。」


 大将らしき人が周りの軍人に向かって立ち上がって言った。


 「明日は昼1時(午前6時)より投石器で攻撃を開始する。」

 「3台の投石器は組み立て終わったら、近寄れるように土を均して置け。」


 どうやら投石器を組み立て終わってから攻撃して出城を落とす算段の様だ。

 其の後ビーザ砦を襲うらしい。


 二人は軍議を早々に終えて、テントの中に設えたベッドへと引き上げてしまった。

 時間も夜5時(午後10時)なので早くはないけど、寝るのは各部隊が展開し終わってからにするのが普通だと思う。

 キリアム侯爵軍は最後尾の部隊がやっと到着した所で、これから部隊の配置場所を決めなければならないし、その報告ぐらい起きて聞くべきだと思う。


 それにしても山道で、荷駄隊が含まれるとは言え、3万を超える軍が移動する時は時間が掛かるとは知ってても、実際に2刻(4時間)経ってもまだ最後尾が着いたばかりだとは。

 キーグでの攻撃が許されるのなら、今この時にこそブレス攻撃で粉砕したい。


 さて、敵の作戦は分かった。

 ただし、使い魔の事は秘密にしておきたいので、今知った事を全て話すわけにはいかない。

 幸い、直ぐに知らせなければいけない様な事は無かった。

 使い魔が調べた内容から、明日トラント将軍に知らせる内容を整理して寝る事にした。


 トラント将軍に夜12時(午前5時)に起こされて、最上階(4階)から見る景色に投石器がほぼ出来上がっている姿が見える。

 前日の夜整理した内容を思い出しながら、今日予定していた事の許可を貰う事にした。


 投石器をそのままにしておくと被害が大きい。

 トラント将軍に投石器の破壊を行う事を進言して了解を貰う事にしよう。


 「トラント将軍、あの投石器ですが魔術攻撃で破壊したいと思います」

 「よろしいですか?」


 「うぃお! なんだって!?」


 提案したら、驚いた将軍に此方を振り向きざま、顔を覗き込まれた。

 セリーヌが飛んできてトラント将軍の前に立って壁になってくれた。


 「トラント将軍様、姫様に近過ぎます!」


 セリーヌの叫びでトラント将軍が後ろへと下がってくれた。


 「将軍、魔術の行使であの投石器を破壊したいのですが、許可をお願いします」


 私の説明に、納得したのか分からないけど、何を求められているのか分かった様だ。


 「ダキエの姫様 魔術なら投石器を破壊出来るのですか?」


 「はい、城壁からならビーザ砦に近い投石器を破壊する事が出来るでしょう」

 「出城の側の投石器は飛竜で飛んで行く必要があります」


 「なんですと! 出城側へも投石器を作っているのですか?」

 「在ると思った方が良いでしょう、後程飛竜で偵察しますから、見つければ攻撃します」


 魔術攻撃は射程距離が約350ヒロ(500m)で、それ以上の距離を飛ばそうと思うと魔力をより多く必要とする。


 「分かった! 攻撃を許可する。」

 「飛竜での出撃は、ダキエの姫様の判断で御自由にしてください。」


 トラント将軍から許可を頂きました。

 直ぐに行動しましょう、キリアム侯爵軍に朝の目覚めにキツイお仕置きです。

 

 次回は、ラーファ出撃す! です。

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