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傲慢な男らと意固地な女  作者: 迷子のハッチ
第4章 王妃として
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第52話・2 新たな日常(2)

 ラーファの公開治療後の動きの話です。

 ビェスが側の侍従に合図すると、彼はリネンの袋に挽いて粉にしたコーヒーを入れた。次に暖炉に吊り下げていた、お湯を入れてあるポットを腕のタオルで取っ手を包んで持ち上げると。

 リネンの袋をコーヒーサーバーの上に手で持って固定して、ゆっくりとお湯を注いでいった。

 お湯を回し入れて行くと、コーヒー独特の馥郁たる香りが部屋に充満した。


 注ぎ終わったコーヒーサーバーをビェスの側へと置いた。


 ビェスがコーヒーを入れ直して飲むと、公開治療の後に持ち上がった騒動の事を話してくれた。


 「最初に伝えるのは、エンビーノ男爵と息子たちと叔父の親子から感謝の言葉だ。」


 「命を救っていただいた事、失った手や足を元に戻していただいた事 ただただ感謝申し上げる。」

 「との事だ。」


 命を救った事の対価が命を懸けて戦に加勢する事なのは、やるせない思いがする。

 だけど、彼らを治療した事によって、ビェスは政治的、軍事的なアドバンテージを得る事になった。

 わたしは慌ただしかった今回の公開治療によって、ビェスの手助けをする事ができたんだと、嬉しさが込み上げてきた。


 ビェスがもう一度コーヒーを飲んだ。

 私は良くあんな苦い飲み物を飲めるものだと思う。

 朝の目覚めの一杯は香りによる覚醒効果を楽しむ飲み物だと思う。


 ビェスがコーヒーを飲んだ後、少し笑って話し出した。


 「エバンギヌス子爵やエンビーノ男爵達は早々に引き上げたけど、領事たちが残ってね。」

 「姦しいかったのは、領事や副領事たちの方だね。」

 「こっちは思っていた通りで、魔女とポーションと魔女薬の3点について、しつこく説明を求められたよ。」


 彼らにしたら、どうしたらポーションを手に入れられるのか、知りたいのだろう。

 今の所、ビェスに頭を下げるしか方法が無いわけで、ビェスが狙っていたのも此れだろう。


 「魔女について教えてくれと言ってきたから 俺の妻だとはっきり言ってやった。」

 「そして、彼女への一切の関りは、俺を通さない限り認めない と、警告と共に告げてやった。」


 「警告っていったい何を言ったの?」ビェスの事だから過激な事を言って無いと良いのだけど。


 「当然 命は無い物と思えと言ったさ。」うわぁ! 過激すぎます。


 「その後、魔女を呼ぶ時は”ダキエの姫様”と呼ぶように と伝えたけど。」

 「その名は既に彼らも知っていた様で、すんなり受け入れられたよ。」


 私の呼び名は正式に「ダキエの姫」と言う事になったようです。

 私としては「魔女」にしてほしかった。


 その件の後にビェスは、「結婚式を終えるまでは王妃として、正式な披露はしない。」と伝えたと言った。

 結婚式後も呼び名は”王妃”や”妃殿下”では無く”ダキエの姫”で変えないそうだ。


 何で「正式な披露」などともったい付けて言うのだろう?

 1年後と聞いていたけど、用意するのに時間が掛かるのは分かる。けど、どうも今の話から決着をつけた後に結婚式を行い、愁いを失くしてから私を披露する気かも知れない。


 答えはエバンギヌス子爵のポーションの対価、辺りだろう。

 キリアム侯爵との決着を付けて、名実共にビチェンパスト国の王となり。招待客を自分に従う者だけにするのだろう。


 今回の公開治療の事は、キリアム侯爵も直ぐに知る事になるだろう。ビェスの最大の敵はこの事を聞いてどう思うだろうか。

 今更味方になりたいとは思っても無理な事は分かっていると思う。


 ビェスの両親を殺し、妹を攫い。結果として妹迄死なせてしまった。今はお互いに傷を癒しているに過ぎない。


 ただビェスは今すぐの戦は避けたいようだ。騎竜のキーグをパストで示威(じい)飛行させるのは早急な戦を避けるためだと思う。

 飛竜のブレスを知らなくても、空から見下ろせば全ての動きが明白となるのだから。

 ビェスに自軍の動きを手に取る様に知られての戦は嫌だろう。


 キリアム侯爵の最善手は私を捉える事、最低でも私の排除が出来れば元の均衡状態へ戻せると思うだろう。

 今回の公開治療で私はダキエのエルフだと、ポーションを作る事で証明した事になる。魔法(スキル)より強力な魔術を行使できるエルフを、簡単に攫ったり、殺したりできない事は理解してるはずだ。


 あ、そうだキリアム侯爵にはエルフに対抗するならエルフを頼る方法が有りそうだ。だけど聖樹島まで人を使いに出すとしても、時間が掛かるから無理だろう。

 それとも、聖樹島のエルフの手先アーノン・ススミと手を組むかもしれないが、可能性は小さいと思う。


 アーノン・ススミがビチェンパスト国に来たかはビェスに確かめていないけど、来てれば私の名イスラーファぐらいは知れ渡っていると思う。


 更に今回の事で東の辺境領群をビェスは味方に付ける事が出来た。結果ビェスを包囲する一角が崩れる形になった。


 時間が経てば経つほど、不利になっていく事はキリアム侯爵には分かっていると思う。


 そうは思うけど、私にはエバンギヌス子爵のあのギラツク視線がどうにも気になって仕方が無い。

 ビェスはエバンギヌス子爵の事をキリアム侯爵との戦で頼りになると思っているのかな?


 キリアム侯爵は残った味方の引き締めとエバンギヌス子爵への切り崩し工作を行って来るだろう。


 次回は、ポーションの価格と魔女の薬の話です。

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