表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
傲慢な男らと意固地な女  作者: 迷子のハッチ
第4章 王妃として
74/114

第52話・1 新たな日常(1)

 公開治療の反響は大きかったようです。

 セリーヌの活躍で私に会いたいと部屋を訪れる人は撃退できた。


 ビェスが部屋に上機嫌でやって来て、私を抱きしめクルクルと回り出した。

 それから「素晴らしかった」とか「見事だ」とか「美しい魔女姿に惚れ直した」だとか言ってはキスをする。


 魔力が少なくなって疲れた体には酷だよ、でも称賛されるのは気持ち良い。

 ビェスからの言葉だから尚更嬉しい。


 振り回されてぐったりした私に、セリーヌの「お食事のご用意が出来ました」と言われてお腹が「グ~!?」と鳴った。

 「お腹が空いてたのかい?」と意地悪い顔をしたビェスが、赤い顔をした私を覗き込んでくる。


 意地悪なビェスの顔を両手で遠ざけながら「今日は客間の食堂で食べる事にしたの?」と聞いた。

 てっきり、ビェスの部屋の食堂で食べるのだと思っていたから、食事はまだ先だと思っていた。


 「当分は私も此処の食堂で食べる事にしたんだ。」


 と返事をしてくれたけど、理由の説明は「食後に話すよ。」と付け加えただけ。


 セリーヌへはビェスから客室の食堂を使うと言われていたのだろう。夕食の用意は早くから行われていたようだ。


 遅い夕食は客室の食堂で、いまだにニヤニヤした顔のビェスと食べる事になった。


 私とビェスが食堂へ行くと王宮料理長が待って居て「今日は陛下へ極上の子牛肉のカツレツをダキエの姫様へはご要望の脂ののった舌平目のカツレツをご用意してます」と夕食の説明をしてくれた。


 ビェスと私の食事は今日は違う料理が出るそうだ。別に前菜やパンまで違う訳では無くて、私が料理人に頼んでいた魚料理の事を知ってビェスが肉料理を自分用に作らせただけだと思う。


 私はセリーヌを介して王宮の料理人に私の希望を伝えている。ビェスと食べ無い一人での食事は客室専用の料理人が作ってくれる。


 ビェスはビェスで食事は王宮料理長が作る。

 今回もビェスが食事に来たので、彼女が出張って来ていた。


 魚より肉が好きなビェスが自分の好きな肉料理を作らせたのに違いない。


 今日はお腹ペコペコで早く食べたいと思っていたから、私は意地悪なビェスの顔を無視していそいそと席に座った。


 王宮料理長が作った今日の料理は子牛肉のカツレツにトマトをベースにしたソースが掛かっている。

 ビェスも美味しいのだろう、幸せそうな顔をして満足げに食べている。


 私の方は、同じ衣を付けてバターで炒めた白身の魚だ。

 ソースは無いけど、酸味の強い柑橘類をカットした物が添えて在った。


 この果汁を絞って掛けると、とてもさわやかな香りと独特の酸味が白身の魚を包む衣に馴染んで、魚のうま味を引き立たせる。

 魚はまだ食べた事が無い魚だけどヒラメに似た味で身が柔らかい、果汁の酸味と衣に包まれた白身の魚の旨味が一体となってとても美味しかった。


 付け合わせの野菜はフリックと言うジュリモネータ侯爵領で最近栽培され始めた。苦みはあるけど歯ごたえの良い茎も葉も食べられる野菜で果汁を掛けて食べた。


 肉好きのビェスが雇っている王宮料理長の料理にしては、この魚の料理は繊細で風味豊かな味わいがあって同じ人の料理だとは信じられません。


 食後のデザートは栗のクリームと栗を生地に練り込んで焼いたマロングラッセと言うお菓子です。

 ビェスはコーヒー、私は紅茶でお菓子を楽しみながら、ビェスが食事を客間の食堂で食べる事にした理由を話してくれた。


 ビェスの住む王宮の食堂へと私が歩く通路に、私の目に止まろうと待ち構えている人たちが居たそうだ。

 理由は聞かなくとも凡そ察しが付く。

 私としては対応しても良いと思っているけど、今の政治情勢がそれを許さない。彼らには魔女薬の普及まで待っててほしい。


 彼らを取り調べた結果、公開治療の噂が王宮内に広がり、その噂を聞いて少しでも私に近づいて声を掛けようと待ち構えていたらしい。

 近衛兵に捕まった者たちの話から他にも同じような者が現れる事を心配して、落ち着くまで客間の食堂へビェスが来る事になった。


 ビェスの住む王宮のエリアへ早く引っ越しをしたいのだが、ビェスの側近たちが「部屋の改造をするのなら、これまで検討していた諸々を実現させよう」と大改造を始めてしまった。

 と、苦々し気に私に訴えた。


 「奴らは、私が不便になろうとも、ラーファのためだと言葉巧みに理由を付けて改造を進めているのだ。」

 「私も彼らの言い分は分かっては居るのだが、追々に改造して行けば良いと思っていたのに!」


 悔しそうな口調だが、ビェスも必要な改造だとは理解しているのだろう。

 表情はあきらめたような顔をしている。


 私の部屋を作るだけでなく、上から下まで5階あるビェスの私室(実際は王宮の東側の端にある地下3階から5階と屋根裏までの区画)を将来の子供部屋まで考えに入れた改造をしているそうだ。


 ビェスから早急に私の部屋を用意すると言われたけど、引っ越しは来年2月か3月までずれ込みそうなのだとか。

 それまでは今の客室の警備を厳重にする事で対応するらしい。


 次回は、食後のビェスとの話は続きます。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ