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傲慢な男らと意固地な女  作者: 迷子のハッチ
第4章 王妃として
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第50話・1 辺境領群の問題(2)

 辺境領群の代表エバンギヌス子爵が持ち込んだ問題とは。

 ようやくやって来たビェスは疲れた顔に、お酒を飲み過ぎたのか顔が赤かった。

 人払いした部屋で、急いで回復魔術を行使してビェスを回復させた。


 「ありがとうラーファ 体が嘘みたいに軽いよ」

 「それに酔いも無くなったのがありがたい、エバンの奴がビン毎飲みだして付き合わされる此方も飲み過ぎた。」


 「それで 話は決着が着きましたの?」


 「いや 全然!」


 ビェスが首を強く振って否定した事から、辺境領群の代表と話の決着がつかないままお酒を飲ませて酔わせようと、お互いにお酒の飲ませ合いになったのだろう。


 「座ってください、話はそれからよ」ビェスを昨日ホットワインを飲んだ椅子へと座らせ、私も向かいに座る。

 私はビェスに敬語を使う積りは無い。私とビェスとの結婚はお互いに対等な関係だと思っているから。周りが王様だ、陛下だと(へりくだ)っても私はビェスと呼びかけるし、敬語も使わない。


 ビェスはコーヒーを私は紅茶を用意されているサーバーから注ぎ、飲みながら話を聞いた。


 東の辺境領群の代表はエバンギヌス子爵と言うそうだ。彼がわざわざやって来た件で、私がビェスから相談が在ると言われたのは、呪いの森ダンジョンにスタンビートが発生した件だった。

 ただしスタンビートは終わり、呪いの森ダンジョンは領域を広げた。


 魔物の暴走は終わり、せっかく開拓した村は魔物に蹂躙され占領された。

 呪いの森ダンジョンが厄介なのは呪いと迄言われる、魔物がばら撒く毒と病気だ。


 恐らく魔女薬の初級回復薬なら今から飲んでも効果があるだろう。しかし時間が経って重い症状となった人には、中級や上級の回復薬が必要になるだろう。

 初級の傷薬や解熱薬、解毒薬、風邪薬は罹り始めなら効果的だろうけど、時間がたった今はどうだろうか?


 「話は聞いたけど、私に何をしてほしいの?」


 「魔女のポーションが欲しい。」ビェスが端的に言い切った。


 「魔女薬のことね、ビェスがそう言うと思って必要な材料は発注したわ」


 「魔女のポーションは昨日聞いたポーションの事じゃ無いのか?」


 ビェスが慌てて聞いて来た。ポーションと魔女のポーションで何か勘違いしているようだ。


 「全然違うわ、魔女のポーションと言われているのは、オウミ国で私が大魔女のおばばと作った薬の事よ」

 「値段は初級の傷薬で銅貨10枚よ」


 「なんだってー!」ビェスが大声を上げて立ち上がった。

 「一つ金貨6000枚だと聞いていたのでタダでくれと言ってきたエバンに「無理!」と答えたんだ。」


 それは無理も無い話だ。恐らくパレードの準備段階で知られた、空ポーションの話が漏れ伝わっていたのだろう。

 しかし、ダキエのポーションをタダでくれとは無茶な話だが、見返りとして何を提供する積りなのだろうか?


 見返りの確認より先に、確認しておかなければならない事がある。


 「エバンギヌス子爵様でしたか辺境領群の代表の方は?」私が聞くとビェスが頷いた。

 「そのエバンギヌス子爵様は何が欲しいと言われたのですか?」


 「ラーファが持って来た空ポーションだよ。」


 「それは確かに無理ですね」

 「そもそもまだポーションに加工前ですから何の効果もありませんし」

 「ポーションを作るにせよ、一つ金貨6000枚の対価は必要です」


 「エバンが言うには私が困ったら手助けするから、5本ポーションをくれと言ってるんだ。」


 「まぁ! 5本ですか?」

 「金貨3万枚の対価に成る様な手助けを辺境領群が用意出来るのですか?」


 「どこかの領を攻める時、手弁当で手伝うぐらいかな?」


 「命には命で持ってと言う事ですか?」


 ビェスからこれまでの経緯(いきさつ)を直接聞いている私は、遅かれ早かれ彼が戦いを始めるのは覚悟している。


 でもそれをポーションの対価にする事へは、私は反対したい。

 でも、空ポーションはビェスへ上げた物。ビェスが何に使おうが私は何も言えません。


 ビェスの物の空ポーションと違って私がこれから作る、魔女薬はあくまでも市販薬です。対価をもらって売るための商会まで作るつもりです。

 出来れば、エバンギヌス子爵の誤解を解いて、魔女薬での治療に変えてもらおう。


 「ポーションと魔女薬の誤解を解いてから、魔女薬を定価で提供する事にすれば良いではありませんか」


 「むう それでエバンが納得するだろうか?」


 「空ポーションはビェスに差し上げた物ですから、ビェスがポーションを作ると言えば私は作ります」

 「でもですよ、そんな命がけの対価より、魔女薬なら高くても金貨1枚で購入できます」

 「四肢の欠損や老衰の治療ではあるまいし、実際に効果がある薬なんですから問題在りません」


 「それが腕や足を失った者も居るそうだ。」


 ビェスが直ぐに答えたので、どうやら患者の容態を聞いている様だ。


 ダキエで作られているポーションは、樹人を対象に作られた魔薬なので、体内の魔力受容体を樹人が使用する前提に調整されている。

 人族への使用には使用相手の魔力受容体の量と質を調べ調整する必要がある。


 魔力受容体が少なければ作成時に一時的に補う付与を行なわねば樹人と同じ効果を出せない。樹人と同じ想定のポーションを作ると魔力過多で死亡する可能性の方が大きい。


 「ポーションの作成は患者に合わせた付与を行う必要があります」

 「私が直接出向いて、ポーションの作成を行う事が必須なのです」


 「ダメダ!!! 絶対!!」即座に否定されてしまった。


 ビェスが即座に拒否した事は私も理由が分かります。ビェスとしては私が治療のため敵対的な先方(東の辺境領群)へ出かけるなど考えられ無いでしょう。

 ポーションでの治療は私が患者の前で作るしか方法が無いので、やっぱり魔女薬での治療しか方法がありません。


 「実は、エバンは患者をパストへ連れて来ているのだ。」


 次回は、ビェスが言い出したトンデモ無い事です。

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