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傲慢な男らと意固地な女  作者: 迷子のハッチ
第4章 王妃として
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第48話・2 初めての夜(2)

 ラーファはビェスとこの国の事を話す・・・。

 イスラーファ・パスト・エルルゥフ・ダキエ、私の新しい名前です。


 ビェスは「ラーファ」と呼んでくれます。私も彼を「ビェス」と呼びます。


 湯殿でお湯につかり、夜着に着替えました。ビェスもお風呂に入って来るそうです。廊下は冷えるので湯冷めし無いと良いのですが。


 私の部屋へ彼がやってきた。

 廊下が冷たかったのだろうか? 着ぶくれた熊の様な毛皮のマントを頭から被っていた。

 毛皮を脱ぐとバスロープを羽織っていた。意外とたくましい体つきをしていると思った。


 部屋へ入ると、私を抱きしめて耳元でささやいた。

 「ラーファの寛いだ姿が可愛いなんて初めて知ったよ。」


 赤面してしまって、上手くビェスに言葉を返せなかった。ビェスから可愛いなんて言われるとは思っても見なかったし。


 ビェスには私の事を追々話して行こう。一度に話す分には飲み込みにくいと思うから。

 洞窟での出来事だけでも信じられないだろうし、ビェスが入れない神域の事は話す方が良いのかいまだに迷っている。


 セリーヌが温めたワインに果汁を入れた物と何種類かのつまみを用意している。

 私は寝酒は飲まないけど、ビェスは飲むのだろう。


 ビェスは部屋へ入ると、早速ワインを飲み始めた。私にも勧めてきたが、夜は歯磨きの後はハーブティーしか飲まない事を告げて、私は自分で麦茶を入れて飲んだ。

 お互いに飲み物を飲んで一息入れると、前から聞きたい事が在ったのでビェスに聞いて見た。


 「ねぇビェス、簡単で良いからあなたに敵対的な勢力を教えてくれない?」


 「ムードも何も無い話になるけどいいのかい?」


 「私は魔女よ、自分の置かれている状況を正確に知りたいの」


 ビェスの力になりたいと思うからこそ、知りたいのだ。


 「わかった、簡単に言うと周辺国は3つ、その内の神聖同盟の国が敵対している、国内では4つの勢力が敵対している。」


 そう言ってワインを飲むと、その後に彼が話してくれた。


 「最初はこの国の周りに在る国から説明しよう。」

 「ビチェンパスト王国は、神聖同盟の国々からロマーネ山脈を隔てた南にある。」

 「私が王になって4年経つが周辺国との関係は。」と考えを纏めるためか一息置いて続けた、


 「北の神聖同盟の国々とは敵対しながらも通商を保っている。」

 「南の長靴の踵(ローンクブッチェ)半島にはローンタリー国があるが半農半漁の国で友好国と言って良い関係だ。」

 「東は呪いの森ダンジョンで、西は深淵の森ダンジョンに覆われているロマーネ山脈が続いているため、山脈の端で海に接した部分にフラネコン国との国境がある。」

 「共和国時代も入れて50年の歴史があるが、国同士の戦いは建国の切っ掛けとなったビンコッタ海戦ぐらいしか無い。」


 そこで一息入れて、聞いて来た。

 「周辺国の話で他に聞きたい事は無いかい?」


 「初めて聞く国が2つも在ったけど、今は国内の事を聞きたいわ」


 「国内は結構ドロドロだよ。」

 「先に地理的な事を説明しよう。」そう言って私が知らないこの国の国内の様子を話してくれた。


 「東側は、ロマーネ山脈の裾野から広大な平野が海へ広がっているため、ほぼ平坦と言って良い。」

 「長靴の踵(ローンクブッチェ)半島へ繋がるロマーネ山脈からの山筋が伸びている所があるが、基本海へと流れる川によって作られた平野だ。」

 「西側は、ロマーネ山脈と海までの距離が短くて平野は少ない山国になる。」


 ビェスが「夜に成ってだいぶ冷えて来たけど、寒く無いかい?」と聞いてきた。


 椅子から立ち上がり、私のそばまで来ると手を取って立ち上がらせ、そのままベッドへと(いざな)い肩を抱いて一緒に座った。


 「次は、敵対している有力貴族の領地の説明をしよう。」


 「東にある辺境領主領群は、北を深淵の森ダンジョンに、東を呪いの森ダンジョンに挟まれたビチェンパスト国の辺境にある。」

 「ここは、開拓団がそのまま男爵領や子爵領になった領主たちの集まりで、私とは敵対的と言うより独立独歩で我が強く困った時だけ助けろと言って来る厄介な所だ。」

 「森ダンジョンの拡大を防ぐ盾に成ってくれているから、本当に困った時は手助けはしている。」


 ビェスの手が肩から脇の下へと移動して胸を触ってきた。熱心に聞いていたのに頭が真っ白になってしまった。

 「ビェス? あのね まだ聞きたい事があるからいたずらしないで話してほしいの」


 「ラーファ、これは僕への報酬だよ、沢山話すんだからご褒美は貰わないとね。」


 ビェスから逃げようとしましたが、逃げられませんでした。仕方なくビェスの手を押えて話を聞きます。

 「お願い、大切な事だからちゃんと話して!」


 「仰せの通りに、ダキエの姫。」茶化したように言ったけど、再び話し出した。


 「北のジュリモネータ侯爵領は神聖同盟の国オースネコン国とミュリネン国と交易している。」

 「北側のロマーネ山脈全体が深淵の森ダンジョンだけど一部が下級の魔物しか出ない場所に道が出来ていて交易が出来る、森ダンジョンに面した辺境領だね。」

 「ここは商業的な志向が強く、海の在るパストとは交易が盛んだけど、なぜか敵対的でね。」

 「神聖同盟の手が内部へ浸食していて侯爵家を牛耳っている事は分っている。」


 胸をいたずらしていた手が私を引き寄せ、左手が太ももへと延びてきた。


 「ビ、ビェス~ お、お願い もう少しお話を聞かせて、ね! お願いだから!」


 「ふふふ、良いよ話を続けるけど、ラーファの耳は柔らかくて赤ちゃんの肌のようだね。」


 ビェスの口が頬から耳へと甘噛みしてくる。


 「はぁ~、あぁぁん」思わず変な声が出てしまった。


 ビェスを涙目で睨みます。


 「あはっ わかったそんなに睨まないで、話すから。」そう言ってやっと話を続けてくれた。


 「西のパステラート・バハウントナ連合伯爵領は二人の伯爵の領が細かくまだらにあるので共同統治をしている不思議な領でね。」

 「この領も北側が深淵の森ダンジョンに面した辺境なんだ。」


 「ただしロマーネ山脈のこの辺りは強い魔物も多く人がロマーネ山脈を横断出来る道が無い。」

 「商業的な活動は隣国のフラネコン国とロマーネ山脈を西へ大きく迂回した海沿いの道で行っている関係で商業活動も少ない。」

 「パストから距離がもっとも遠い山の中の領なんだ、敵対的と言うより関係が薄いと言えるかな。」


 「結構寒くなって来たね、毛布を羽織ろう。」


 ビェスが私をベッドの中へと両手で抱えて運ぶと、ベッドに敷いてある毛布を上から被せた。

 別に部屋は魔道具の暖房で寒くは無いと思うけど、ビェスが寒いのだろう。

 横になった私は、ビェスの腕の中に抱え込まれた形になってしまった。


 ビェスが下唇を舐めた! 思わず「アッ アンッ」と声が漏れた。急いで動かせる右手でビェスを止める。


 「嫌かい?」ビェスが聞いてくる。


 「ううん、い、嫌じゃないけど せっかく東から西まで話してくれたのに、最後の領地までお話を聞きたいの」


 「そうか、最後のキリアムとは因縁の在る相手だから先に話してしまうか。」


 そう言って、少し私から体を離した。上を向きながら話し出した声は少し憎しみが籠っている様だ。


 「南西にあるキリアム侯爵領は長靴の踵(ローンクブッチェ)半島の根元に当たるビチェンパスト国で王領に継ぐ最大の領地を持った侯爵領なんだ。」

 「海も中の海に面した長靴の踵(ローンクブッチェ)半島の反対側にベネツェラネ市と言う港町を持って居る。」

 「共和国の時代からパストとは張り合って来た仲なんだ。」

 「ビチェンパスト国を手に入れたいと狙っているのは知っていたけど、パストを支配していた父には到底かなわない事を知っていた。」

 「それでね、父の弟の叔父を唆したんだ。」


 そう言って上を向いたままビェスが王位に就くまでのいきさつを話し出した。


 次回は、初めての夜、ビェスが獣に!

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