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傲慢な男らと意固地な女  作者: 迷子のハッチ
第4章 王妃として
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第48話・1 初めての夜(1)

 ラーファはビェスとの夜を過ごす事に思いを馳せる・・・。

 神域から自室へと帰り、キーグの様子を見に行った。幸いキーグは用意された厩で寛いでいたけど、私が行くと、神域へ戻りたそうにしていたので、神域へ帰す事にした。


 セリーヌと侍女、それに厩番に私のスキル(空間収納)を説明して、キーグを神域へ帰した。


 私のスキルが魔法のカバンの大きな物だと知って、慌ててセリーヌが聴いていた全員に機密事項なので誰にも口外してはいけない事を申し渡していた。

 お風呂でその一端(腕輪の空間収納の方)を見せていたから、セリーヌも最初の時の様に取り乱す事は無かった。


 部屋に帰り、ビェスが来る迄一人にして貰った。

 ぼんやりと外の見える窓際の椅子へ座りながら、これからの事を考えた。


 今日からビェスとの新しい生活が始まる。このビチェンパスト国についてももっと知らなければ。いえパストの町についてさえ私は大通りをパレードで見ただけだ。

 そう思えば、これからの生活は見知らぬ国で新しく生活を始める事になったのだと納得した。唯一ビェスがビチェンパスト国生まれの、生粋のパストっ子だと言う事が安心できる。


 それに幾つか気になる事も在る。主にビェスと敵対している貴族の事だ。

 ビェスが戦い続けていると聞いた。そうだとすると私にとっても敵に成るのだろう。

 今後の事は夜にビェスが来てから話す事にしよう。


 そう今夜ビェスと夜を共にする。


 その事を思うと、この場から逃げたくなった。恐らく生前の私は夫婦生活の中でそう言った事にも慣れていたのに違いない。

 それなのに今の私には、前の夫との夜の生活は記憶に無かった。それどころか名前さえ思い出せないのは、死んだイスラーファが夫の事を全て死んだときに持ち去ったのかもしれない。


 一人で悩んでみてもどうしようもない考えが浮かぶだけだ。

 私にとって彼の方からこの身に分御霊(みたまわけ)で生を受けた時から自分の人生が始まったと思っている。


 エルフの次期女王だったイスラーファの人生は、マーヤの出産で一度終わり御霊(みたま)は帰ってこなかった。

 その後新たに生を受けた、この私(イスラーファ)はマーヤを育てながら手探りで生きてきた。

 幸い、マーヤはラーファの投げ出したエルフ王の責務を引き継ぐ事をエルフの流儀で意思表示してくれた。


 ダキエの事はマーヤが引き継いでくれるだろう、私はビェスと結婚し彼と共に生きて行く事になる。

 ビェスの妻として、ビチェンパスト国の王妃としての立場はビェスに付帯して生じたものだけど、ビェスの妻と成るなら受け入れるしかない。


 マーヤも私たちの事を祝福してくれた。今夜迎える初めての夜にしてもビェスと一緒ならば大丈夫だろう。

 私にとって初めての秘め事に成るだろうけど、相手がビェスなら怖くない。


 ドアがノックされて、セリーヌの声がした。


 「ダキエの姫様、陛下がお見えです」


 ビェスへ私の部屋の立ち入り禁止を守って、律儀に応接間で待って居る様だ。

 時間的に、食事の誘いでしょう。


 「部屋を出ます、着替えを」


 「はい、ご用意できていますので、お持ちします」


 そのままドアを開けて、セリーヌと5人程が部屋へと入って来た。


 着替えてビェスが待って居る客間へと行くと、椅子に座っていたビェスが飛び起きて私の方へとやってきた。

 「やっと来たね、食事の後の時間を君と過ごせるようにしたから、色々話そう。」


 「はい、ビェスと話さないといけない事が沢山あって今日の夜だけでは足りなさそうです」


 「そうだね、でも語らいはこれから幾らでも出来るんだ。」

 「もう夫婦なんだ、なんだか信じられない気持ちだよ。」


 「そうね、私もまだ信じられない気持ちがあります」


 「話は後でゆっくりしよう、今日は肉を食べたいと思って夕食は肉を焼かせているんだ。」

 「ソースはトマトが入ったソースらしいよ。」


 「ふふふ、トマトが大好きなんですね」


 「そうだね、赤いトマトはラーファとの思い出に繋がっているんだ。」

 「今は手の届く所にラーファが居る。」

 「夢じゃ無い事が信じられないぐらいさ。」


 照れ笑いか少しほほを赤らめながら微笑んだビェスが手を差し出した。


 「さあ、食事に行こう。」


 ビェスにエスコートされ、食堂へと移動した。


 私が住む事になった客人用の部屋は王宮の ℍ の形をした一方にある。パレードの広場が在る方が王宮の正面(南側)でそこから繋がった裏側(北側)の建物に在ります。

 広場に面した表は政治、経済、軍事などを管轄する諸官庁が入った建物に成っていて。5階建ての大きな建物に8百人もの官僚や軍人が勤務しているそうです。


 ビェスが言うには王宮がパスト市の真ん中に在って東から西へパレードした通りがあり、中央の王宮前の広場が一番広い広場になるそうです。

 そして、王宮の範囲はとても広くて、2ヒロ(3m)の高さの塀で囲っていて、塀の内と外は近衛兵が馬で警らする路があるそうです。


 近衛兵とは、衛兵の中から選抜と試験で登用された人が成れる王宮の警備兵だそうです。近衛兵に成ると一代だけの貴族に自動的になるそうで、爵位は騎士爵だそうです。

 ちなみに近衛兵の人数は約千人で、300人が一日交代の勤務で丸っと1日勤務して、次の日は休みだそうです。


 激務そうな近衛兵ですが、聞いて見たら大半が待機で、見回りに交代で出るだけだそうです。忙しいのは王宮内部の警備に当たる近衛兵で400人が3交代で務めているそうです。

 こちらは要人や重要な部屋の警備が主で、近衛兵の中でも選ばれた人が成るそうです。


 表側の建物と同じ長さのビェスが住む王宮の裏側の建物はビェス専用の建物だそうです。私も部屋の用意が出来たらビェスの隣の部屋に住む事になるそうです。

 此処は公的な客人や使節が泊まる場所でも在って、今私が使っている部屋も客間の一つになります。


 ビェスが雇う使用人は王宮全体で千人ほど居るそうですが、其の内の侍従や侍女は300人ぐらいだそうです。


 食堂へと歩きながら、ビェスが聞かれても問題無い話として説明してくれました。

 たどり着いた食堂は昼食を共にした部屋です。普段ビェスが一人で食べる時に使う部屋だそうですが、これからは私とビェスの二人での食事は此処で食べるそうです。


 ビェスによると、ビェスと同席して食事する人は結構多いらしく、その時はもっと大きな部屋があってそこで数人と会食するそうです。

 同じような食堂は複数あって、王宮の客人が誰かを招いて食事する事も出来るそうです。


 私たちの結婚式などの国を挙げての式典や披露宴の様な大勢で食事をする場合に使う大広間が在るそうで、一度に100人が食事を出来るそうです。


 夕食は、食前のワインに炭酸が入った発泡酒と言う珍しいお酒が出ました。

 つまみはカナッペでは無くチーズが何種類かと、トマトや野菜が付け合わせで添えられていた。

 チーズの種類による味の違いに驚きました。


 夕食は昼と違って一の皿、二の皿では無く、始めからメインの肉を塊毎焼き、焼き加減の良い部分だけを切り出した、分厚い肉の塊が出ました。

 付け合わせにセロリとトマトにジャガイモのパンケーキが添えられています。

 パストのパンは小麦のパンを酵母で発酵させた、ふっくらとしたパンでとっても気に入りました。


 お肉はとても食べきれ無いので、ビェスに半分の更に半分にして貰って食べましたが、残りのお肉はビェスが美味しく全部食べてしまいました。

 肉のソースは肉汁にトマトと野菜をつぶして発酵させた物を合わせ、塩と胡椒で味を調えたものでした。


 ビェスが好きなのでしょう、どれにもトマトが入っていました。


 食後にはコーヒーが出たのに驚きました。恐らくキク・カクタン国からの輸入品かと思いますが、今後も輸入できるのでしょうか?

 デザートは栗のトルテ? 栗が入った小麦の焼き菓子にクリームを塗った物です。


 食後はお風呂に入るため、分かれます。


 ビェスもお風呂に入ってから私の部屋へ来るそうです。


 次回は、夜の語らいの続きと初めての夜です。

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