第45話・2 王が娶るダキエの姫(2)
ゴドウィンとトマーノへの褒美について話し合います。
ビェスと手を繋いだまま部屋へと入ると、ゴドウィンとトマーノさんが此方へ片膝を立てて跪いて私たちを迎えています。王様を迎える時の拝謁時の礼なのでしょうけど、中々厳かに感じます。
用意された椅子に私とビェスが座ると。ビェスが未だに跪いたままの二人へ声を掛けました。
「待たせたな、二人共椅子に掛けると良い。」
「「ははっ」」なんだか二人共緊張している様な昂った声だ。ビェスが王様だから緊張するのは分かるけど、少し怯えも在る様な気がする。
王様がビェスで無かったら、私も二人の側でカーテシーを深々としていたのだろう。とんだ人生の番狂わせだと思う。
これからする会談は、パレードの準備中から行う事は決まっていた。主に私を王様に紹介した二人の功績に対する褒美を決める事が主な内容です。
それ以外に私の身分や今後の事も合わせて話し合う予定だったけど、ビェスと結婚する事になったので、恐らくそちらの方は無いと思う。
「ゴドウィンとトマーノ。」
「その方らには、ダキエの姫をビチェンパスト国まで連れて来てくれた事、感謝する。」
二人が無言で、椅子から立ち上がって頭を下げた。手をお腹と背中へ置いているので、これも礼の一つの形なのだろう。ダキエやオウミ国には無かったと思う。
「我ら、陛下の御心にかないました事、望外の喜びでございます。」
代表してトマーノさんが話すようです。ゴドウィンだとなれなれしい話し言葉が出て、ご褒美が無くなってしまうかもしれないから、適任だと思う。
「そして、ダキエの姫様との御婚約を心よりお祝い申し上げます。」
祝いの言葉にうなずくと、ビェスが二人へ顔を向けたまま、
「そなたたちには、褒美を出す事にした。」と話した後、グレバートさんに向かって軽く頷いた。
グレバートさんが後ろに控えていた場所から少し前へと出て来た。
「陛下から両名への褒美である。」
「心して受け取るように。」と褒美の内容を列挙して行った。
私をビチェンパスト国まで連れて来て、王様へ紹介した功績はゴドウィンとトマーノの二人へのビェスからの褒美として報いる事になった。
褒美の内容は。
ゴドウィンたち旧キク・カクタン国海賊団へは、王都では無く王領の一つ王都近くの漁村が下賜される事になった。
ゴドウィンには男爵の位が送られ、家名として船の帆柱を支えるステイスルを名のる事になった。
ゴドウィン・ステイスル、船乗りらしい名前ですね。
今は住む場所が無いので船が住まいだが、漁村に砦と住まい、それに港を作る事になっている。
とりあえずだけど、早急に仮住まいの建物を建てるそうだ。港の整備も仮の桟橋を一つ作る事になった。
それらの工事はゴドウィンが自分でお金を工面する必要がある。何か言いたそうに私を見つめて来るけど、お金は在りませんよ。
トマーノはビチェンパスト国の武装商人の一人で、その商売先はロマーネ山脈の西の端にある同じネーコネン一族だけど神聖同盟の国とは違う? 国と交易している。と、聞いている。
取り扱う商品は儲かれば人(奴隷)でも糞尿でも運ぶと豪語していた。基本は頼まれた物資や人を運ぶ事らしい。
トマーノは、パレードの時に一際目を引く店先に大きな櫂を飾っていた店が本店だそうだ。彼の名前はトマーノ・エスピッシャ・ガザレで、お店の名はガザレ商会。
ガザレ商会は王宮御用達の看板を既に持っていたが、王妃御用達の看板を新たに授けられた。(王妃って私の事よね、私御用達ってなんだろう?)
看板につける紋章は飛竜と空ポーションを象った球体を強く希望しているらしい。一応私の紋章はダキエに有った聖樹を象った木ですから、御用商人専用の紋章と言う事で私が了承して決まりました。
褒美関係の話し合いが終わると、ビェスが私の方を向いて話しかけて来た。
「ラーファ、あなたにお願いしたい事がある。」
「もちろんその事で、十分な対価を払う用意がある。」
「お願いとは何でしょうか?」ビェスとの結婚に関係する事とは別の頼み事の様です。
「実は、ラーファから送られた空ポーションを厳重な警戒の元、王宮前広場にしばらくの間、展示する事にしている。」
「その間だけで良いので、一日に朝昼の2回、王都の中や周囲を竜騎士として飛竜に乗って姿を見せてほしいのだ。」
「それは、もちろん引き受けますけど、対価は必要ありませんよ」その位の事でお金をもらう事など出来ません。
「ビチェンパスト国に来た以上、タダ働きは無しだよ。」
「対価は一回の飛行につき金貨10枚だすよ。」
「それは貰いすぎです、宮殿に部屋を用意していただく事になっているのですからそれだけで十分です」
「それなんだけど、客間では無くて私の部屋に来ないか?」
「陛下、それは先ほど御忠告申し上げたはず。」ビェスの後ろに控えていたグレバートさんがずずっと顔をビェスの方へ近づけて耳へぼそりと囁いた。私にも聞こえたので、わざと聞こえる位の声で言ったのだろう。
「分かったよ、ラーファには客間を使って貰うから。」
としぶしぶ言った後、私へ顔を振り向けると、小さい声で言った。
「夜にラーファの所へ行くから。」
とりあえず、当分の間用意された客間で私は暮らす事に落ち着いたようです。ビェスは不満そうだったが、夜に私の部屋へ来るそうです。
あまりにも急な婚約だったので、ビェスと話し合う事が沢山ある。夜に話し合う事は多そうだ。
「ラーファもこの国のお金は必要だろう?」ビェスが中断前の話の続きをする。
「仕事に対する対価だから貰ってほしい。」
ビェスに此処まで言われたら貰うしかない。
「はい、ありがとうございます」確かにこの国のお金なら直ぐに必要になるだろう。
会議が終わり、また跪いて見送る二人を後に、廊下へと出てきました。一度私用の部屋(王宮の客間)へ行き、着替えをする予定です。
着替えって? 何時も着ている服に着替えるので良いと思うけど、後ろの侍女の集団が何やら騒がしい。
次回は、着替えに入った部屋での一幕。




