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傲慢な男らと意固地な女  作者: 迷子のハッチ
第3章 南の国
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第40話・3(閑話)サルーダ・ビューイク

 マルティーナの眷属で、南の大陸にまでやってきて守り人となった人族の話。

 聖山を囲む建物”御宝塔”から見た王宮の現状は、御位(みくら)への挑戦者で最初の一人が決まった様だ。


 御宝塔を巡って争う従者の群れは第一御子のサルサナッソスが周りを固めていた第四御子のオーダリエの守りを突破して御宝塔に入り込むのに成功したようだ。


 ほんの一日前ルクデス王がエルフのイスラーファに殺された。誰にとっても思いもよらぬ事だろう。

 首輪が嵌っていたから魔術を使えないと思っていたのに。イスラーファはまんまと首輪を外してしまい寄った。


 思いもよらなかったと言うか、畜生目と罵倒するか。いやいやここはさすがだと思うしか無いだろう。

 ハイドワーフの名工が心血注いで作り上げた首輪を外せるとは、さすがはエルフの次期女王だったお方よと称賛するしか無い。


 これに比べればイスラーファを捕まえたのは偶然が味方した僥倖だったと思う。

 ベロシニア子爵にしてみれば、全てが運良く型に嵌った結果だと思う。


 従者がイスラーファを知っていた。オウミの王都ウルーシュの下町流中堀町の広場で治療を受けた事が在る男だった事。

 イスラーファを見つけた従者と組んでいた男が首輪を持つ者だった事。

 イスラーファを町中で見つけ、後を追う内に偶然ベロシニア子爵の馬車へと向かった事。

 ベロシニア子爵がイスラーファを見つけて声を掛けた時、従者らもイスラーファの後ろに居た事。


 後は、ベロシニア子爵に声を掛けられ、立ち止まったイスラーファに後ろに居た男が首輪を嵌めるだけで事は終わった。


 それ故か、ベロシニア子爵からイスラーファを取り上げる事は何ら問題無く行う事が出来た。襲撃は取り囲んで脅すだけで、ベロシニア子爵の従者たちは逃げてしまった。

 イスラーファを捕まえたベロシニア子爵から、ゴドウィンに横取りさせる事は容易かった。彼らはアーノン・ススミを信頼して全ての事を教えてくれていたのだから。


 ススミ家と我ら一族はお互いにその存在さえ忘れてしまっていた。お互いの存在を知る切っ掛けは、マルティーナ様がアーノンを我らの元へと送り出されたからだ。

 マルティーナ様は進展しつつある魔核化の研究をダキエでも活用したいと思っておられる様だが、今は魅力の大きな物を探す方が切迫した問題だった。


 マルティーナ様から中の海周辺国へと魅力の大きな物を探す依頼の旅でやってきたアーノン・ススミから一通の手紙と話を聞いた。彼は我らの事を、この地に行くように言われるまで知らなかった。

 私も同じでススミ家など知らなかったが、マルティーナ様から我ら一族への手紙を読んで、初めて彼の目的やダキエにビューイク家と同じ眷属が住む事を知った。


 使者として王へ拝謁した後、御宝塔へ招かれたアーノン・ススミからイスラーファの事を知らされた。マルティーナ様からのお手紙の内容は、研究にイスラーファを利用するかしないかの判断を我らに任されるとの事だった。

 お手紙では、イスラーファの持つハイシルフの血は、長命の人族が生まれる可能性が有るとの事。もしそうなら我らもイスラーファを手に入れたい。


 それにしても聖樹が消え、意図的に聖樹の対抗馬として作ったカクタンの聖山の元へとイスラーファ次期女王様が来る事になるとは皮肉だろうか。


 マルティーナ様が聖樹島の影響が及ばない地に、人の魔核生物化の研究を自由に行える地を作ろうとキク・カクタン国を密かに作らせたのは3千年程前になる。

 我が一族のご先祖初代ビューイクから私サルーダまで、建国から今日まで一貫して研究を続けて来た。


 この地は奴隷が多く、実験の材料として人族なら供給に事欠かない場所だ。半面樹人は手に入らないが樹人への研究はダキエでする方が人材も豊富だろう。


 これまでの成果は、人の胸腺が魔核と似た性質を持つ事を突き止めた事に尽きる。残念ながら人族の魔核生物化までは成功していないが、スライムと同じ柔らかい魔石と考えれば後一息だろう。

 この地にダンジョンは魔脈の関係で作れていないが、ダンジョンへこの成果を持って挑めば人の魔核生物化と言う進化も実現するだろう。


 我が一族は、マルティーナ様の血を受け継ぎ、マルティーナ様のヒーナニマ(ひろがりしもの)と同じ意味のカクタン語でビューイクを名乗る事を許された。


 御宝塔に住む我が一族はキク・カクタン国を影から支配する組織として存在しているが、真の目的は人の魔核生物化だ。

 それも胸腺に秘められた自己を自己たらしめる力を魔石化させれば終わる。


 奴隷の胸腺に魔石を移植する方法はなかなか成功しなかったが、ここに来て魅力の大きなダンジョンコアの一部を使う方法で魔石を持ったまま生き延びる奴隷が現れて来た。


 生き延びると言ってもせいぜい1月だが、それまでの移植では拒絶反応で数日で死亡していたのだからはるかに益しだ。

 だが我が国にはダンジョンが無い。ダンジョンを求めて中央大陸への進出を企てた2代前の御位(みくら)はパスト村の海賊に殺された。


 彼が中央大陸進出の名目に利用した神話は、樹人(キク)への畏れの裏返しで、変化して恐れに変わった物だろう。

 裏表一体の神だったはずのキク神とカクタン神がいつの間にか対立する双子の姉弟の神へと変わったのは人族の寿命の短さ故仕方ない事であり。3千年は我らにとっても長い年月であった。


 初代ビューイクが”聖なる岩屋”と呼んでいた、昔し火山だったマグマの通り道が残った岩頸がんけいに、聖樹に住むドワーフに作らせた血筋判別の魔道具を据え付けた。

 サルワの姓を彼の血を引く男に与え人族の王(御位(みくら))として据えた。継承の必要が出ると、御位(みくら)の後継者に神の試練を課す事を始めた。


 その初代ビューイクによって作られたのが今の御位(みくら)を囲む建物、御宝塔だ。


 初代ビューイクと一族がマルティーナ様の命令で、御宝塔を土魔術で作った。その時に内部は昇降の魔道具や生活に便利な魔道具を入れて、中で生活出来るように作った。

 我らは、魔道具の維持管理を行い、必要ならダキエから部品を取り寄せ修理を行った。知りえた魔道具の知識を使って研究に生かせる道具を作り、今日の成果を得たのだ。


 サルサナッソスを迎えに行こう。彼には御位(みくら)へ最初に座る権利を獲得した。


 我がビューイク一族の栄光はすぐそこまで来ている。


 ここで出てくる初代ビューイクの魔印象が魔結晶の中に保存された物です。

 電撃の魔術陣を追加したのも彼に成ります。本来は死ぬほどの威力は無いはずだったのですが、魔木の魔力漏れにより、血筋の判別で偽の判定が下ると死んでしまうほどの電撃が流れてしまった。ということです。

 次回は、12月から新しく第4章 王妃として が始まります。

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