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傲慢な男らと意固地な女  作者: 迷子のハッチ
第3章 南の国
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第35話・1 海賊を探せ!

 ラーファは状況を説明出来そうな、シリル語を話せる海賊の男を探します。

 太陽は何処にも見えず夜のとばりが王都全域を覆っている。


 私は暗闇に昼の名残の喧噪を残す王都を見ながら、この4コル(1時間)で変わった劇的な変化を思った。


 王から寝間に呼ばれた時は既に夜2時(午後7時)過ぎだった。仕度して女官長に手を引かれて廊下を歩いていた時は夜4時(午後9時)頃だったと思う。

 首輪を外し神域に逃げ込み、マーヤと話した後、使い魔を召喚し、争いを見つけ使い魔を笑い猫に変え海賊船を探しに出た。その間に流れた時間は4コル(1時間)程でしかなかった。


 虜囚から解放へ、繁栄から騒乱へ、ほんの一瞬で変わった。直ぐに又変わるのだろうか?


 やがて感傷にふける時間も過ぎさり、気持ちを切り替えた。


 夜の港まで探しに来た目的を見つけようと、使い魔にゆっくり近づくように指示する。

 私は、太陽の光に左右されない、魔力による使い魔の視力で左岸に係留された3本マストの船を調べて行った。


 2ヶ月も乗って居れば船の細かな違いも分かるようになると言うものです。と言っても遠くから見て違いが分かるほど詳しくはありません。

 なんとなくですが、船首の飾りが目の様な文様が描かれているとか、船全体から受ける印象が細長くて速そうだとかです。


 後は、船の備品の置き方が船毎に違っていて個性的なんです。船員が飲む水樽を置く位置だけでも、船の中央に置くか船尾に置くかで違いが出ます。

 中央に置く船は統率する船長が船員に自由に水を飲む事を許しているようです、逆に船尾に置く場合は水を飲むのに毎回許可が必要だったりします。


 船員に飲ませるお酒でもそうです。食事と一緒に出すか時間を決めて配給するなどの違いで酒樽の置く場所が違ってきます。

 意外と船毎に運用が個性的なのが分かります。シリル語を話す海賊は水樽を中央の帆柱の根元に据えて、乗組員に自由に水を飲ませていました。お酒は当直ワッチを交代した後、当直明けの乗組員に時間を決めて出していました。


 船員は申告すれば自由に水を飲めました。ただ当直中は水を飲みに行く前に常に上役らしき人に断ってから飲みに来ていたようですから、持ち場を離れる許可が必要だったのでしょう。

 当直中の規律は厳しい物が在りましたが、当直以外の時は酔っぱらって歌ったり、一人楽器をつま弾いたりと結構のんびり過ごす人が多かったと思います。


 桟橋から離れた場所へ停泊している見知った船を見つけた。帆は完全に畳まれていて、直ぐに出航できるようには見えません。辺りも月明かりの無い暗闇に沈み、所々に灯されている常夜灯が薄暗い燐光の様に闇に浮かんでいます。

 夜の港に静かに停泊する船からは人気ひとけの少なさを感じます。おおかた陸に上がってどんちゃん騒ぎをしているのでしょう。


 港近くの繁華街からは昼の騒めきを上回る様な喧噪が響き、活況をていしているのはそれが原因だと思います。


 今だと海賊船長は陸かもしれません。船を見つけたので明日出直しましょう。朝なら海賊船長も船に戻っていると思います。

 王宮の様子も気になりますし、使い魔を王宮の上空まで戻らせます。


 王宮の上に戻ると高層の立つ広場は、戦いの決着がつかないまま双方が引いたようです。死体がかたずけられ両陣営とも守りを固めて待機しているようです。

 反対に王宮中では、小競り合いが絶えないようです。あちこちで人が集まり、武装した兵士が周りを固めて警戒しています。小競り合いも彼方此方で発生しているようで、干戈を交える音が響きます。


 火の手が上がって無いのは、王宮の灯りが魔石を使った魔道具で照らされているから、これだけ争いが在っても火事になって無いのだと思います。

 魔道具はダキエの輸出品の大半を占める物でした、当時はこんな遠くまで流通しているとは思いもしない事でした。


 王宮の中まで調べる積りは今の所在りませんが、明日になって海賊船長と話せればどうするか方針が決まるでしょう。


 私は、神域の家で久しぶりのマーヤとの団らんのひと時を過ごします。


 マーヤが神域の家に帰ってきました。どうやら今乗船している、川下りの船は夜の停泊中で、食事が終わったので一緒に船の船室で、各自の部屋《腕輪の空間収納》へと入ったようです。

 時差はおよそ1刻(2時間)程度だと思います。マーヤは「夕食は軽く摘まんだだけ」だそうで私と一緒に夕食を食べる気満々みたい。


 食材は全て神域産で、生きの良い鮭がマーヤによって神域の川からもたらされた。

 カー爺から今の季節は鮭の遡上で鮭料理が美味しいと聞いていたみたい。


 マーヤのたってのお願いで、今日は聖樹島の季節料理、鮭のスープを一緒に作る事から始めます。マーヤにはジャガイモやニンジン、玉ねぎを切って貰い、私は鮭を捌きます。

 三枚に下した切り身の皮を剥き、一口大に切って行きます、マーヤが切ってくれた野菜はバターと共に炒めてスープストック(マーヤが持って来た)のスープを入れ煮立てたら鮭を入れ、生クリームを入れて終わり。


 食べる時にハーブのディルをちぎって上から散らします。黒パンをスライスしパン籠に入れ、ジャムとハーブ茶を用意すれば食事を始めます。

 マーヤの用意した野菜が綺麗に切られて美味しそうです。いつの間に料理の腕が上がったのでしょう? マーヤの成長と久しぶりの二人っきりの夜を過ごし、この夜はマーヤを堪能しました。


 やっぱりマーヤの身長が伸びていました。お風呂で膝に抱えて髪を洗ってあげようとしたら、少し違和感があったので、マーヤの身長を計りました。

 前は人族の6才児ぐらいにしか見えなかったのが、今では7才児と言って良いぐらいの身長です。


 たった2ヶ月なのに、子供の成長は早いと聞きますが、実感しました。


 次回は、いよいよ海賊船長から話を聞くため船に乗り込みます。

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