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傲慢な男らと意固地な女  作者: 迷子のハッチ
第3章 南の国
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第34話・2 ラーファの戸惑い

 マーヤと久しぶりの語らいの後は宮殿が気になる様です。

 マーヤを見送った後、王宮の様子を確かめるために、先ほどの部屋へ使い魔を召喚した。言葉は分からなくても王宮の動きぐらいは分かるだろう。


 召喚した迷宮灰色狼を通して寝室の状況が見えてきた、部屋の中を一通り見てみると。


 既にラーファが殺した男の姿は無かった。横たわっていた場所には氷を溶かした時に出来たとみられる、水浸しになった絨毯が残されていた。

 女官長の死体も腰巻姿の女達も姿が見えない。代わりに庭が在る方から争うような音がしている。


 不思議に思って音がする方へと使い魔を移動させた。そこは王の寝室から庭を渡った先の5階建ての建物が在る場所だ。

 同じ姿をした兵同士が戦っている。高楼を守る様に展開している部隊とそこを攻める部隊で争っている様だ。


 この国で見た初めての高層建築だ。高楼は建物を囲む大きな広場の真ん中に立って居る。建物の中には盾を構えた兵が籠っている。

 建物の外側を取り巻くように3百人ぐらいの兵が、同じように盾を構えている。盾を構えた兵の間から数十人の纏まった兵が四方から建物へ攻め込んでいる。


 矢が飛び交い、槍や剣で切り合う兵士たち。攻防は一進一退と言った感じを受けた。既に何度かの攻防があったのだろう、広場には人が何人も倒れている。


 いったい何が在ったのだろうか? 争いの原因はラーファがあの男、この国の王らしき男を殺したのが発端だと思う。

 でもそれならかたきであるラーファを一番に探し回ると思う。それなのに2つに分かれて殺し合っているのは訳が分からない。


 マーヤの側にはカークレイ様が居られる、マーヤに聞いて見るのが早そうだ。

 神域からだと南大陸から遠く離れた中央大陸にいるマーヤへ念話は直ぐに繋がった。


 『マーヤ、ここで良く分からない出来事が起きてるの』

 『分からない出来事って?』


 マーヤが赤ん坊の頃したような映像を念話に繋げれば話は早そうだが、私にはそんな技能スキルは無い。地道に言葉で説明する。


 『王の寝室から庭園を隔てた先に在る、5層の建物を巡って2つの勢力が争っているの』

 『5層の建物は何のための建物かしら?』

 『分からないけど、この国で一番高い建物だと思う』


 しばらく念話が無いので考えているのか、側のカークレイ様に相談してるのかもしれない。

 しばらくしてマーヤから念話で返事が在った。


 『カー爺がね、考えられるのは、元々あった派閥同士が王の死を切っ掛に後継者争いで、戦う事になったのだろうって』

 『ただし、後継者候補の派閥は争っている2つだけだとは思えない、もっと多くの後継者候補と派閥が在りそうだ、だそうよ』

 『ありがとう、しばらく様子を見る事にするわ』

 『それから、マーヤと一緒にラーファの救助に来てくれたカークレイ様たちに”心配させてごめんなさい、感謝してます”って伝えてね』


 私が想像していたかたきの私を探すには、指示を出す人(あとつぎ)が必要だったのね。王の座を賭けたこの争いが続く様なら。

 私の事をどうして知ったか探るのは、後継者争いが落ち着くまで様子見した方が良さそうね。


 使い魔を通して見ていると、使い魔の位置をしきりに気にしている男が居る。魔力視が使えるのかもしれない。

 キク・カクタン国にもイガジャ族のような影働きするような組織が在って、男はその一人なのかも。

 使い魔が見つかると邪魔されそうですね。念の為召喚した使い魔を帰還させましょう。

 『暗き流れの大元へ、召喚されし汝、帰りて休むが良い、帰還!』


 この国の影働きたちは魔女やイガジャ族の様に闇魔術系の技能スキルを使うのかしら?


 思い出すのは、私をここまで連れてきた海賊船の乗組員です。船に小舟から乗り換える時”軽身かるみ”の様だと思った事が在りました。

 キク・カクタン国にも魔女の様な、技能スキル使いが居ても不思議ではありません。影働きで鍛える修業は、闇魔術関連の技能スキルを発現しやすいと、イガジャ族を見て思っていました。


 ダキエやエルゲネス国の闇魔術が魔女やイガジャ族へと伝わったとは考えていません。どちらかと言うと、大魔女のおばばが言う様に、オウミ国建国の前からあの地方に居た魔女たちが独自で習得したと考える方が自然です。

 魔女たちは闇魔術では無く技能スキルとして身に着けて行ったようです。闇魔術の様な体系化された知識では無くて、鍛錬する中から習得した技能スキルとして発現したのでしょう。


 と言う事は、魔力感知できる人族が他にも居ると考えて行動するべきです。使い魔は笑い猫8級を召喚をして彼らの見張りに見つからない様にします。


 魔物を使い魔として召喚する方法は、使い魔の魔石に魔術陣を付与するか、自分の血を掛けてその場で使い魔の召喚を成功させる必要が有ります。

 マーヤが神域で笑い猫を魔石から神石持ちの魔物として復活させたのはマーヤだからで、私を含めて他の樹人では無理な事です。


 その笑い猫の魔石は、闇隠ダークハイドを持つがゆえに最も手に入りにくい存在です。しかも聖樹島の氷雪の森ダンジョンだけに住んでいます。

 しかもその魔石は魔法袋《空間収納》を作れる唯一の素材です。ダキエの中でも限られた者しか手に入れる事は無いと次期女王だったラーファが断言できます。


 使い魔にするなら最も使い勝手の良い魔物です。闇隠ダークハイドだけではありません、他にも有益な点があります。

 闇隠ダークハイドに住む事から魔力がとても多いのです。そのため魔術陣を複数分与する事が出来ます。

 『我が魔力を糧に、闇の流れに潜みし笑い猫よ、我が前に顕現けんげんせよ、召喚!』


 魔力視のある人しか見えないけど、黒い猫の顔のシルエットが現れた。


 今回使い魔に5つの魔術を分与します。

 『ストーン散弾ショット土槍ジャベリン麻痺パラライズ鷹の目(イーグルアイ)、分与!』


 この使い魔を使い、王都の港を調べて、あの海賊の男を探させます。死んだ女官長以外でシリル語の話せる私の知っている唯一の人族です。


 時間的にもう港へ着いていてもおかしくない時間が経って居ます。今後王都中が騒乱に巻き込まれてしまえば、あの海賊は逃げだしてしまうだろう。


 使い魔を港へ移動させます。


 王宮を出て空高く上り、王都を上空から見下ろします。2百ヒロ(300mぐらい)上空から見下ろすと、王都の端から端まで見渡せます。

 王宮の争う音も良く聞こえますが、王都の騒めきは争いが在る様には聞こえません。


 使い魔から送られてくる映像や音などから、戦っているのは王宮内だけの様です。輿に乗せられて移動した時の喧噪と騒めきは在っても争うような混乱は見えません。


 王都を流れる川の河口に港は作られていました。空から王宮の堀沿いに川へ出て、川に沿って移動します。

 河口の港は王宮の在る左岸に在って、石で組まれた幾つかの桟橋とその先の木組みの桟橋に船が何艘も係留されています。


 左岸の河口の港はとても大きく船も多い、なかなか繁栄しているようです。港の出口になる河口の出口には2つの塔が立ち、鎖がその間に渡してあるようです。

 今は鎖は川の中に沈んで居て船の通行にさわりはありませんが、いざ何かあれば鎖を引き上げ港を塞ぐ事が出来るようになっています。


 右岸から海に面した浜辺まで小さな帆掛け船や手漕ぎの小船が係留されたり、岸に引き上げられたリしているので漁師が使っているのでしょう。


 左岸に比べ漁師町っぽい掘っ立て小屋が海側へも続いてる。


 次回は、イスラーファが乗って来た海賊船を探します。

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