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傲慢な男らと意固地な女  作者: 迷子のハッチ
第2章 巨悪
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第16話 魔女の名は騒動の元(2)

 薬師ギルドが何やらお怒りの様です。

 近寄って来たのは、薬師ギルドの受付に居たオイゲン様です。オイゲン様は赤い色をして敵意はお持ちの様ですが、ラーファに危害を加えようと考えている訳では無いようです。


 「魔女のお方、少しお時間を頂いてもよろしいか?」


 その言葉の強さは嫌でも言う事を聞け、と言っています。


 「今はごらんの通り営業中ですが、ご用件をお聞きしても?」


 「それは失礼をした、魔女殿に薬師ギルドの評議会がお話をお聞きしたいことが在りまして、ご足労をお願いしたい。」


 「それは何時ですか?」


 「そうですな、明日の昼8時(午後1時)では?」


 「はい、良いですよ、明日薬師ギルドへお伺いします」


 と、言う事で、翌日薬師ギルドへやってきました。


 3階に在る、会議室へ連れてこられ、評議会の議員と言う男達ばかり3人とオイゲン様が待ち構えている前へ座らせられて、これからお話合いが始まる事に成りました。


 目の前の男達からは危機察知が赤い表示で全員に敵意が在る事を教えてくれます。オイゲン様からラーファが此処へ召喚された理由を説明された事でやっと訳が分かりました。


 薬師ギルドの長老たちから成る評議会が広場での公開治療を薬師の名を汚す行いだと思っていた所に、魔女のポーション《くすり》を仕入れ値で表示して治療に使う事が知れ渡り、お怒りに成っているそうです。ラーファとしては、関係ない事だと思います。


 王都の薬師ギルドに登録はしましたが、王様からお願いされて広場で公開治療をしている訳で、薬師ギルドからにらまれるいわれは在りません。


 「魔女殿、魔女のポーションの値段は仕入れ値を公表しておりません、この事は薬師にとって治療費に文句を言われる事を防ぐ大切な事だとご理解していただきたい。」


 オイゲン様が不満顔のラーファに薬師ギルドの立場と今回の呼び出しの理由を説明します。


 「仕入れ値を公表されては困ると言われますが、薬の値段はカカリ村での決められた売り値です」


 「王都の薬の仕入れ値も其の価格で仕入れているはずですよね」


 「魔女殿それは誤解です、カカリ村で仕入れた値段に足されて輸送費や保管料、小分けの経費が掛かっています。」


 「そもそもオズボーン商会が一切の仕入れを取り仕切っていて、王都で購入する分にはカカリ村で仕入れた値段の数倍に売値が跳ね上がっています。」


 「あの、誤解がある様なので説明しますと、広場で看板に書いて在る値段はカカリ村で売値として決められた値段です」


 そう言っても理解していない様子なので、もっと具体的に言ってやります。


 「私が言いたいのは、魔女の薬を作った魔女が売る時の値段がカカリ村の売値なのです」


 ラーファとおばばとカークレイ様で決めた値段ですから間違いは在りません。


 「え! と 言われると、あの薬は魔女殿が作ったポーションなのですか?」


 オイゲン様から敵対的な赤い表示が消えてしまいました。3人の男たちの赤い表示は逆に少し濃くなったようです。


 「はい、そうなんです」


 「新しい初級傷薬などもそうなのですか?」


 「はい、開発者から直接作り方を教えて貰いました」


 マーヤも開発者なので嘘は行っていません。売値はまだマーヤを仲介におばばと決めた仮の値段で正式に決まっていません。これまでの経緯から仮の値段の段階でよほどのことが無ければ、そのまま正式な値段になるでしょう。


 オイゲン様が座られて、評議員の3人の男達と話し合いをしています。彼らにはラーファが薬を作れることは想定外だったのでしょう。カカリ村から来た魔女だと最初から言っているのに、薬が作れる事を考えもしないとはあきれた事です。


 しばらく話し合いをした後、評議員の3人は部屋を出て行きました。出て行くとき3人ともラーファを見ないように視線をまっすぐ前を向けていました。不穏な気配を感じたので、使い魔の迷宮毛長灰色狼を密かに召喚して、彼らの後を追わせます。


 一人残ったオイゲン様がラーファを見て立ち上がると腰を屈めて一礼された。


 「申し訳なく思います、薬師ギルドとしてお詫び申し上げます。」


 「魔女殿が薬を作っているカカリ村出身の魔女殿であるにも関わらず、取り扱われているポーションがご自身が作られた物だと思いもしなかった無知を恥じ入ります。」


 「私は魔女の薬を今まで通りに使って良いのですね」


 これさえ確認できれば、ここ《薬師ギルド》に来た件は終わったと判断してよいでしょう。


 「左様でございます、それでお願いが在るのですが?」


 あれ? まだ何か? いえ、お願い?


 「あっ、薬を販売できるか? ですか?」


 そうですね、王都に薬を作れる魔女が現れたのなら、薬を仕入れたいですよね。


 「はい、お願いできますでしょうか。」


 オイゲン様が頷いているので、間違いないでしょう。


 「今は公開治療の様子見ですから、持ってる薬は手元に置いて置きたいと思っています」


 「それに、売るにしても私は今の価格で治療の時に価格を提示する事は変えませんから、私から仕入れても売値を私の値段以上すると問題になりませんか?」


 「さようですか、・・・ 魔女殿に一つ、お聞きしたいことがございます。」


 「魔女殿は公開治療を何時まで続けるおつもりですか?」


 ラーファが王都で知名度が上がれば、開業すると思っているようですね。


 「そうですね、広く人々に魔女の薬の形や効能の正確な情報が行き渡れば止めますし、長くても9月には止めます」


 「遅くとも後4か月後にはお止めになる?」


 「はい」


 ビチェンパスト国へ行く予定ですから。

 黙り込んでしまった、オイゲン様にお別れを言って帰ります。


 「では、オイゲン様、これで帰りますね」


 「はい、お手数をおかけして申し訳ありません。」


 もう一度一礼するオイゲン様にラーファも一礼して踵を返します。

 使い魔から不穏な会話をしている評議員達の事を伝えてきました。


 『捕まえて薬を作らせろ!』なんて事を言っています。


 閑話を挟んで、続きます。

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