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傲慢な男らと意固地な女  作者: 迷子のハッチ
第4章 王妃として
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第60話・1 決着(1)

 其の後のビーザ砦とパスト市でのラーファ。

 キリアム侯爵がビーサ砦にこだわる理由はただ一つ、荷駄の通れる道だからだ。

 人は獣道のような場所でも通れるが、荷車を引いた馬や牛は固い地面と平らな場所でしか移動できない。


 軍隊は人だけが武装して移動する訳では無い、食料に水や鍋釜に武具の予備、矢も大量に必要とする。

 人だけなら山野を抜ける事も可能だが、荷駄を引いた牛馬は通れない。


 故に大軍を率いるキリアム侯爵には、荷駄が通れる道を通って行くしか方法が無い。

 キリアム侯爵軍もビーザ砦の東門側へはデーストゥラ城(右)の在る山を越えて進軍させている。

 これは歩兵と騎馬隊だけだからできる事で、彼らは周辺の農家から略奪した物で食料を得ている。


 別に荷駄を捨てて進軍する事も可能だが、大きな戦いを一度すると補給が出来ないため戦えなくなってしまう。

 戦えば矢は尽き、剣も槍も刃こぼれするし折れもする。

 防具も修理や替えが必要となる。


 別に戦いに勝てば問題では無くなるが、キリアム侯爵にはこれまでビェスに戦いで勝てた事が一度も無い。

 別にキリアム侯爵軍が弱い訳では無い。

 ビェスの軍が異質なため戦うと裏崩れを起こすのだ。裏崩れとは率いている兵士が戦意を失い、一部の兵が逃散する事で連鎖的に兵が逃げ出す事だ。


 ビェスの軍は鍛えられていても超人の集まりでは無い。指揮系統が一兵士までしっかりと繋がっている。

 彼らは戦いにおいて命令が一兵士まで徹底されているだけだ。


 「敵の指揮する者を殺せ!!」


 何も大将をはじめから狙う訳では無く、小部隊なら指揮を取る者を狙うだけだ。

 最前線の指揮官が失われると、指揮していた部隊は集団での戦いが出来なくなり集団戦で負け始めやがて逃げ出す。それは連鎖的に後ろの部隊の戦意を失わせ部隊全体が崩壊する事になる。


 これまでの経験から、キリアム侯爵は大軍でビェスの軍に対処する事にした。

 今回3万もの軍勢を揃えたのは偏に大軍で包囲殲滅する事でしか勝てないと思っているからだ。


 使い魔からの情報とこれまで見聞きしてきた内容を纏めると現状が見えてくる。

 結論から言うと、キリアム侯爵はビーサ砦を落とす事を諦めない。

 諦めた時は負けを認めた時になる。


 キリアム侯爵が援軍と資材をキリアム侯爵領に求めた事は、後の事より今ビーザ砦を落とす事に拘っているからだろう。

 その要求が無理を承知で言っている事も十分知った上で出している。

 ビーザ砦を落とせばパスト市まで街道は一直線に続いている。


 私がパスト市へ着いた後も使い魔からの知らせでは、ビーサ砦への攻撃は無かった。

 使い魔の知らせでは、投石器の資材の一部を除いて 全てを失ったキリアム侯爵軍は、今の所ビーサ砦への攻撃は計画されて無い。

 諦めた訳では無く、次の計画として両出城への地下からの通路による攻略を行うらしい。


 ただ坑道を掘る術を知らないため、キリアム侯爵領から鉱山関係者を徴用して来ると言っていたそうだ。


 キリアム侯爵は兵と投石器の資材を追加で送る様に命令していたが、領地からの返事には徴兵も資材の調達も遅れていると書かれていたらしくキリアム侯爵は激怒していた。


 「ええい! ヨーヒム!! 麦の作付けを女子供にさせて男手を連れてこい!!!」

 「お前の隊から兵を送って、村から根こそぎ徴兵して来るのだ!!」

 「資材もお前たちで切り倒してこい!! 生木でかまわんから投石器を作らせるんだ!!!」


 キリアム侯爵の無茶苦茶な命令は実行された。

 次の日にはヨーヒム将軍の副官が率いる3千の軍がキリアム侯爵領へと戻って行った。



 ◆◆◆ パスト市 ◆◆◆


 ビーザ砦はしばらく大丈夫だろう。これで私はパスト市での色々な事を片付ける時間が出来た。

 パストへ帰って来ると、今日の打ち合わせのため一連の事が待っていた。

 キーグを労って神域へ帰し、部屋へ帰ろうとしたら侍女の一団に掴まってお風呂へと連れ去られた。


 お風呂から上がっても衣装を決める事から身に着ける装飾品や靴まで選ばなければ成らない。

 結局頭にはブルーダイアモンドの宝石を嵌めたティアラを、服も首は真珠のネックレスだけど空色の長袖で、重ね着する事で青さを増す様にした物。

 下はパンタロンスカートをやはり重ね着してより青さを出した物を着用した。

 重ね着するため一枚一枚は透けそうな位薄く軽いけど、3枚も重ねれば上下で6枚着る事になりやっぱりそれなりに重くなった。


 良かったのは、相変わらず裾を引くけど パンタロンスカートにした事で裾さばきが楽になった。


 夕食は着替えのため軽く摘まめる一口大に切ったハムサンドとお茶を頂いただけ。

 あまり食べても会議の最中に眠くなりそうだし、お腹が鳴らないぐらいにした。


 パスト市の商人はトマーノ商会を始め大手の5つの商会を招いている。

 話の大筋はトマーノを使って内々に了承を得ている。


 内容はパスト市の商人から金貨2万枚をこの度の戦争に関わる税金として臨時に徴集する事。

 見返りは、戦後にキリアム侯爵領へ進出する彼らのため、キリアム侯爵領での商いへ向こう5年間は無課税にする事と現キリアム領の商人へ懲罰税の徴収と、キリアム侯爵が与えている権利のはく奪など。


 両方を行う事で彼ら商会への便宜を図る事になっている。

 詳細な部分ではすり合わせが必要だが、キリアム侯爵領で彼らに与える権利についてはビェスと打ち合わてからになる。


 キリアム侯爵領の現状は搾取されて疲弊した状態だと思われるけど、それは戦争による一時的な物だろう。

 今回の件はキリアム侯爵領へ進軍して領内を把握してからの事になる。

 まぁ、その前に今の戦争に勝たなければならないけど、心配はしていない。

 負けそうになったら、キーグでブレス攻撃してビェスを助ける積りだ。

 後でビェスに自分で決着を付けたかったとか言われても、生きててこそだと思う。


 私はビェスを失うような状況には絶対しない。


 次回はビェスの動きとビーザ砦のその後です。

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