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23/26

22話 は?

この物語を読んでくださっている方へ。

いつもありがとうございます。

お久しぶりです。とてもお待たせしてしまいました。ようやく22話が書き終わりましたので、アップします。

本当はもう少しお話しが進むはずだったのですが、23話に持ち越してしまいました。

どうしても書けない間にイメージ固めしていましたので、とても絵とは呼べないものでお目汚しですが、今話に出てくる魔人のバムズとピグズとドーガンの絵を最後に載せました。こんな感じということで……

あ、戦闘とかは無いです。ただ名前が出て来ただけなのですが……魔物はイメージの元になる動物がいるので、魔人だけになります。よろしくお願いします。


ドルチェンさん達の視覚を元に戻す理由を、元々考えていた理由に戻しました。やっぱり私は青空が見たい……それと、自分の中の他者の魔粒石を見る力を封印した。という内容を追加しました。23/4/3

 今日はね、朝からね、ニヤニヤがね、止まらないのよ!

 だって、ドルチェンさん達が今夜お祝いしてくれるって、だからゴリゴリマッチョ亭に夜の七時には来るようにって言ってくれたから。

 四歳の誕生日の時もそうだった。そして今日も、五歳の誕生日だからって。


 もうどうしよう……嬉しくて、ありがたくて、楽しみで、幸せすぎて……どう頑張っても顔がにやけちゃうのよ。

 おかげで午前中はエフィレイス先生に「一年に一度のおめでたい日ですから今夜のことを考えてしまうのは大目に見ますが、そのだらしのない顔は許容できません。今すぐに引き締めなさい。そして、意識して上品な微笑みを作りなさい」って注意されっぱなしだった。




 そう、私は今日、五歳になった。

 公爵邸を出てから二年が経ったのだ。

 振り返ってみると、あっという間の二年だった。

 私自身は、午前中はエフィレイス先生の授業、午後はダルバリオン先生の修行という毎日が続いているから特筆するようなことは殆どなかったけど、周囲の人達には思わず笑顔になるような出来事があった。


 まず、エリザさんから第二子誕生の報告が来た。

 ご主人が快癒して元々相思相愛だった二人の愛が更に深まったそうで、結果、元気な男の子が生まれたそうだ。

 父経由でエリザさんから来た手紙を読んで、その文字から、文面から溢れ出てくる喜びに私まで堪らなく嬉しくなって小躍りしてしまったよ。

 だから、二ミリほどと小さいけどエリザさんの瞳と同じ色のブルーサファイアがついた金の指輪を四個作って、家内安全と厄除けのおまじないをかけて出産のお祝いに贈らせてもらった。大好きなエリザさんの笑顔がいつまでも輝いていて欲しいから。


 その次に飛び込んできたのが、冒険者ギルドで鑑定士をしているテージさんの結婚報告だった。

 なんと、十年越しの恋を実らせたそうだ。

 お相手の女性は商業ギルドに勤める四歳年下の女性で、年下なのにテージさんをグイグイと引っ張っていくタイプのセリーお姉さんに似た凛々しい美人さんだった。

 お祝いに、二部屋と部屋数が少ないドールハウスを作って渡したら、テージさんてば感極まって号泣するから参ったよ。

 でも、喜んでもらえたから良かった。奥様に怒られない程度にドールハウスで遊びながら、末長く、幸せに暮らして欲しい。


 そのあと公爵家の娘で血縁上の姉であるマリアローズ四歳とこの国の第二王子七歳との婚約が発表された。

 これは父が異常なほどに喜んでいたから、エフィレイス先生仕込みのお上品な微笑みで、喜ぶ父に対して、おめでとうございますと伝えておいた。

 母のお腹の中にいた時から何の繋がりも感じなかった、血が繋がっているだけの知らない人のことを喜べるほど私は心が広くないからただの社交辞令だったけど、父は全然気がつかなかった。私のお上品な微笑みは確実に上達しているようだ。


 そして、この二年で一番大きな出来事が二ヶ月前にあった。

 ドルチェンさんの長年の悲願だった街の結界が遂に張られたのだ。


 当日は、領主であり公爵である父と、なんと、王弟殿下も出席された『結界魔法陣起動式典』が開かれて、王弟殿下と父と街の人たちが見守る中で結界の魔法陣が起動された。

 私も、ドルチェンさんと商業ギルドのギルド長のレイオン・ガルチェリさんと式典特設舞台の裏でその様子を見ていた。


 魔法陣が起動すると、街を囲む内壁から何本もの光の柱が街の上空の中央に、まるで神殿の真上を目指すように集まって行き、中心部分でぶつかると光が弾けて一瞬街が真っ白な光に包まれた。

 その光にあちこちで驚きの声が上がっていたけど、光が収まるとざわめきが広がった。


 空を見上げると、シャボン玉の虹のように形を変えながら流れる淡い虹色の光がキラキラと輝いていた。

 こんな幻想的で綺麗な光景を見ればそりゃあざわめきもするよね、と思っていると


「何も見えんな。本当に結界は張れたのか?」


「え?」


 聞こえてきた思いがけない言葉にドルチェンさんを見上げたところに、特設舞台から式典の進行役の言葉が聞こえてきた。


「皆様、ご安心ください。何も見えませんが無事に結界は張られました。この結界がある限り、魔人は勿論のこと、()()()()()()()が街に侵入することはありません」


「うそ、みんな見えてないの? あんなに綺麗なのに……」


 見えていないことが残念で仕方なくて思わず呟くと


「「アイシェには見えるのか?」」


 驚いたような声でドルチェンさんとレイオンさんが聞いてきた。

 二人がすごい真剣な表情で顔を寄せてくるからたじろいでしまい、首振り人形のように肯定を意味する頷きを何回もしていると


「そうか、アイシェには見えるのか!」


 ドルチェンさんは晴れやかな笑顔を浮かべると、「確認ができてよかった、ありがとう」と言いながら私の頭をガシガシと撫でてから体を起こして空を見上げた。


「何も見えんから本当に結界が張られたのか不安になったが……そうか、ちゃんと張られているのか……よかった……」


 しみじみとしたドルチェンさんの呟きを聞いて、見て欲しくなった。

 私が見ている結界の輝きを、見て欲しくなった。

 だから、強く願ってしまったのよ。結界を見ることのできる視覚をと。

 そんなことをしたら【もどき】の力で視覚が改造されてしまうのに、ドルチェンさんの確認も取らずについやってしまった。だから、ドルチェンさんは魔粒子が見えるようになったわけで……


「うお!」


 声が聞こえて、ドルチェンさんと繋いでいた手がいきなり離された。


「ドルチェン!」


 慌てたようなレイオンさんの声が聞こえてそちらを見たら、腕で目を覆ったドルチェンさんがレイオンさんに背中から抱きとめられていた。

 え? 何で?


「ドルチェンさん? あの……私——」


「アイシェ、俺の目に何かしたのか?」


 少し苦しそうに尋ねられて自分のしたことが急に怖くなった。


「あの、えっと、ごめんなさい。私、結界が見えるようにしようと……」


「結界の前にアイシェが眩しすぎて何も見えんのだが」


「え?」


「まるでエンレイラだぞ」


 え゛? エンレイラ? 太陽? ………………あ! もしかして私の魔粒石が太陽みたいに光ってるから眩しいってこと?

 魔粒子が見えるようになったから、もしかして他人(ひと)の魔粒石の光も見えるようになっちゃったの?

 でも、自分では魔粒石を意識した時以外はそんなこと感じたことなかったのに……どうすればいいかな……うーん……私の魔脳の周りに光を遮る膜を作って……


「ドルチェンさん、まだ眩しいですか?」


 恐る恐る手をどけてゆっくりと目を開けたドルチェンさんは


「大丈夫だ。さっきは目が焼けるかと思ったが、今はアイシェがちゃんと見える」


 答えながら大きく息を吐き出して、「すまん、助かった」とレイオンさんに言って体を離すと、ドルチェンさんは私の前に来てしゃがみ込んだ。


「俺にも結界を見ることができるのか?」


 私の目をじっと見て聞いてきたから最大限表情を引き締めて力強く頷くと、「そうか」と一言呟いてしばらく目を閉じていた。と思ったら、ドルチェンさんは突然自分の頬をバシバシと二度叩いて「よし!」と言うと勢いよく立ち上がって空を見上げた。




 ん? あれ? 無反応?


「ドル「ドルチェン」」


 私が声をかけようとしたら、レイオンさんがドルチェンさんの名前を呼びながら肩を抱いた。

 その時、ドルチェンさんの頬から首筋に伝い落ちてくるものが見えた。

 光に反射して煌めくそれは、涙。


 ドルチェンさん……


「あの、レイオンさんも結界を——」


「頼む」


 最後まで言い切る前に返事がきたからレイオンさんも結界が見えるようにすると、空を見上げたレイオンさんから静かな静かな呟きが聞こえてきた。


「ドルチェン、お前の願いはこんなにも美しいものだったのだな……」






 ああ、そうか……街を覆うこの虹は、ドルチェンさんの願いが叶った結果……

 守りたい、生きて欲しい、悲しみを減らしたい、笑顔でいて欲しい……

 そんな思いからできたドルチェンさんの願い……

 ずっとずっと願い続けて、実現に向けて出来る限りの行動をした結果……

 何年も駆動源となる魔粒石を探し続け、魔粒石を手に入れたら今度は街の人たちの協力を取り付けて……



 ドルチェンさんが考えていた街に結界を張る方法は、その維持に街の人たちの協力が必要不可欠だった。街の人たちに定期的に魔粒子を蓄粒してもらう必要があったからだ。

 だから、ドルチェンさん達は繰り返し説明会を開いて結界の有用性を話し、続けて街の人たちで結界を維持していけるかの話し合いの場を何度も設けた。

 そうして街の人たちが結界を張ることに前向きになると、今度は結界維持の方法が本当に続けていけるものなのかの模擬試験を何度も行い、問題点の洗い出しとその改善をしていき、遂には街の人たちで『結界維持組合』という組合を立ち上げて、街の人たちが負担に感じることなく確実に結界を維持していくための最終案を作り上げた。


 ここで初めて父が動いた。

 街の人たちへの説明会から始まった結界を張るために行われた話し合いや模擬試験の殆どに立ち会っていた父は、この最終案を受けて結界の維持が可能だと判断すると、ドルチェンさんとレイオンさんと結界維持組合の代表を連れて王城に行き、定例会議の場で住民で維持する結界を街に張ることにつていの許可を求めた。

 理由は、『王侯貴族は民を守り、民は国を支える』という建国時から守られてきた国の在り方に反する可能性があったから。

 ここで一緒に行ったドルチェンさん達が頑張ったらしく、国王と議会からしっかりと許可をもらって帰ってきたよ。許可と一緒に「切実なる願い」も持って帰ってきたけど。


 なんでも、王都や他の公爵領の領都にも結界を張りたいから、まだ結界用の魔粒石があるなら分けて欲しいと言われたのだとか。特に王都は最優先で可能な限り早く欲しい。結界を張ることができれば、一目見たら頭痛が始まるような奇抜すぎる王城を国に相応しい色に直すことができるからと、国王からも議会に出席していた大臣達からも切実に願われたそうだ。

 一目見たら頭痛が始まるような奇抜すぎる王城が気になったけど、ドルチェンさん曰く「王城は精神を破壊する魔物」らしいから神視界で見るのはやめておいた。そんな恐ろしいものをわざわざ見る必要はないからね。


 こうして国から正式な許可を得て、父からも無事に資金が提供されて、街の結界が起動された——




 街を覆う結界を見て涙したドルチェンさんは何を思っていたのだろうか……

 途切れることなく流れ続ける涙は、街を覆う結界のようにキラキラと輝いていて、とても綺麗だった。


 ただ……涙ちゃんはとっても寂しがりやで、直ぐに仲良しなお友達を呼び出すのよね。それは鼻に住んでいるお水君。このお水君がなんとも厄介なのよ。

 だから、ドルチェンさんの顔が大変なことにならないように、こっそりと作り出したタオルをドルチェンさんの手にそっと忍ばせておいたよ。グッジョブ、私! 自画自賛!




 この式典の後は、公爵家公認の街を挙げての祝賀祭が神殿周りの広場で開かれて、翌日の夕方まで続いそうだ。

 私は修行があるから結界の魔法陣が起動した日の夕方までしかお祭りに参加できなかったけど、ドルチェンさんの話では、街中の人たちが老若男女を問わず存分に楽しんだらしい。

 ドルチェンさんもレイオンさんと飲み明かしたのだとか。私も一緒に楽しみたかったな……


 ドルチェンさんとレイオンさんの視覚は、その日の内に元に戻しておいたよ。

 視覚を元に戻すと言ったら、結界が見られなくなるのは嫌だからと最初は抵抗された。

 その気持ちは分かるけど、結界が見え続けるということは、街から出ないと青い空が見えないということ。空が大好きな私は、それに耐えられない。

 だからそのことを説明すると、確かに青空が見られないのは嫌だと二人とも思ったようで、視覚を元に戻すことに同意してくれた。

 同時に、自分の中の他者の魔粒石を見る力を封印した。

 この周辺には今の所いないけど、もしもこの先私のような魔粒石を持った存在に出会ったら、私の光に驚いたドルチェンさんと同じ状態になってしまうからね。ドルチェンさんには申し訳なかったけど、前もって知ることができてよかったよ。ドルチェンさん、ごめんね、それから、ありがとう。



 肝心の結界は、驚いたことに、起動したその夜からしっかりと仕事をしたそうだ。

 なんでも、大概夜に出現する『バムズ』という飛んで移動する魔人が、脳が破壊されて死亡した状態で内壁の外側に落ちているところを、夜中に警邏(けいら)していた兵士さん達が発見したらしく、そのことをドルチェンさんが嬉しそうに話してくれた。


 バムズは【消音】という種族能力、人種でいうところの恩寵を持っているため、目視できないと侵入に気づくのは難しいのだそうだ。

 木が無い場所にはあまり現れないので殆どが公爵家の敷地内の林で発見され、被害が出る前に討伐されるけど、稀に街の中まで入っていくとかで、結界を起動した日は夜通し騒いでいたから、もしかしたら公爵家の林に侵入したバムズが街の騒ぎに引き寄せられて結界に接触したのかもしれないとのことだった。

 このことは祭りで沸いていた街の人たちにその日の朝には伝えられて、更に祭りは盛り上がったそうだ。


 それにしても、どうやって害意の有無を判断しているのか想像もつかないけど、街を覆う結界には、結界内にいる生命体に害意がない魔物は素通りでき、魔人と害意がある魔物の場合は結界に触れると脳が破壊されて即死するという機能が付いているそうだ。

 それを聞いて改めてジュリウス・ベンシューレンさんの凄さを実感した。

 全く、何度凄いと思わせられるのか。私の中でジュリウス・ベンシューレンさんに会ってみたいという思いがより一層強くなったよ。

 まあ、ジュリウス・ベンシューレンさんはリッチだからね、焦らなくても私が一人前になったら会いにいってみようと思ってる。今は修行に集中よ。




 そうそう、その修行の過程で、私は勘違いしていることを知った。

 というか、午前中にエフィレイス先生から大量の本を渡されてひたすら読んで覚えていくという作業をさせられているんだけど、その中に魔物図鑑と魔人図鑑があって、そこにゴブリンもオークもいなかったのよ。


 魔人の存在をエリザさんから教えてもらった時に、緑の肌で小さい魔人とかピンクの肌で女好きの魔人がいるかと聞いたら「確かにそのような魔人がおりますが、どうしてご存知なのですか?」と聞かれたから、夢で見たからと誤魔化したことがあったんだけど、そのときに、緑の肌の小さい魔人をゴブリン、ピンクの肌の女好きの魔人がオークだと思い込んでたの。

 でも、全然違った。

 確かに、ライホーゲンの森に行ったときのことを思い返してみると、前世の記憶にあるようなゴブリンやオークを見なかった。


 そのゴブリンだと思っていた緑の肌の小さい魔人は『ピグズ』という種族名の魔人で、身長が三十センチほどと、とても小さい魔人だった。

 その逆三角形の頭部には人間のものより大きくて尖った耳と、頭部は口のためにあるのかと思うぐらい鋭く尖った歯が並ぶ大きな口がついており、二頭身とアンバランスのくせに非常にすばしっこくジャンプ力もある。そのすばしっこさとジャンプ力の元は【強足(きょうそく)】という種族能力だ。

 この強足から得られる敏捷(びんしょう)な動きと、必ず五人以上の集団で現れるという数の力で個々の弱さを補い、一斉に飛びかかって攻撃する。

 攻撃の主体は鋭く尖った歯が並ぶ大きな口。

 その口は石を噛み砕くほどに顎の力が強く、一噛みで易々と肉を喰い千切るから、ピグズの早さに対応できないと最初の一噛みで首を喰い千切られて即死することもあるそうだ。

 しかも、住んでいる場所によって肌の色が違うらしい。

 森や山だと緑、岩場だと灰色、砂漠だと黄色、草原だと薄茶色だそうだ。あと、迷宮内の雪原に現れるピグズは雪のように白いとか。

 周囲の色に合わせた保護色で体が小さくすばしっこいから近づいて来ても気づきにくいため、ピグズが生息する場所に行く時は防具などによる噛みつき対策が必須だそうだ。


 記憶にあるゴブリンとは大違いだった。

 ドルチェンさん達とライホーゲンの森に入った時は魔物や魔人が死んでいく姿が苦しくて見ていられなくて、話題も魔物や魔人のことを避けていたから気がつかなかったけど、たまに吹っ飛んでいた緑色の小さな塊は、ドルチェンさん達に殴り飛ばされたピグズだったのかもしれない。


 そして、オークだと思っていたピンクの肌の女好きは、『ドーガン』という種族名の魔人で、身長が三メートルはある巨人だった。種族能力は【棍棒生成】。

 肌の色はピンクがかった肌色で魔人の中で一番姿が人間に近い種族だけど、髪の毛はちじれ毛が数本生えているだけで、お腹が大きく膨らんでいて少し異様な雰囲気。

 肌がピンクがかっているから柔らかそうに感じるけど、実は岩のように硬くて通常の剣では歯が立たない。

 しかも、素手で岩を砕けるほどの怪力があり、その手に掴まれたら一瞬で骨が砕かれてしまう。で、女性の肉を好んで食べる。女好きの意味がオークとは違った。


 こんな感じで、この世界の魔人は前世の記憶にあるような人型モンスターとは全然違った。結界犠牲魔人第一号のバムズもトンボを人型にして蝶の口を付けたような姿だしね。

 ということは、魔人はこの星の神様達独自のものなのかもしれない。

 だとしたら、何のために魔人を作ったのやら……謎だ。




 あ、勘違いついでに。

 実は、父が勘違いしていることもあった。


 その父とは、一、二ヶ月に一度のペースで会っていたけど、今後は会う頻度が減ると思う。

 (いち)平民の私が公爵と街の中で会うのは違和感がありすぎるから、父と会う場所はギルド職員寮のドルチェンさんの部屋。だから、どうしても父が冒険者ギルドに来る理由が必要になるけど、二ヶ月前に結界が張られたからその理由が無くなっちゃったのよね。


 一応私の死亡届けが出された時点で私のことを知っている全ての人に『どんな方法でもアイシェがメディエス公爵の娘であることを他言しない』という内容が書かれた『神の制約』に署名してもらったから私の出自がバレることはないけど、「念には念を入れて街で会うことはできない。だから、これからはなかなか会えなくなる。アイシェ……すまない」と思いっきり頭を下げられた時には、寂しさはあったけど、それ以上にあの父が感情のままに行動しなくなったと心の中で手を叩いて喜んだのは内緒だ。


 この『神の制約』とは、神殿の売店から買ってきた専用の用紙に、当事者甲くんが当事者乙くんに求めることを書き、乙くんがその書かれた内容に納得、了承して署名をした場合にのみその書かれた内容に強制力が働き、署名をして以降は乙くんの意思に関係なく、甲くんが書いた内容に従うというものだった。これまでに何度か『神の制約』という言葉は聞いてきたけど、初めてどういう物かを知ることができたよ。


 さて、肝心の父の勘違いだけど、話は二年前に戻る。

 私との時間を作るためにマリアローズの誕生日パーティー直前に領地の視察という名目で本邸を出た父は、いざ戻るとなった時に母が納得する言い訳を用意することができず、ルカの街の宿屋のベッドの上で頭を抱えていた。

 それを解決してくれたのがアイデン兄様だったんだけど、その時にアイデン兄様から父宛に意味深な伝言があったのよね。

 それが、「感情に任せた選択で三度(みたび)アイシェを苦しめる時は、君から大切なものを貰い受ける」だったんだけど、これを聞いた父は、『大切なもの』の意味を家族の誰かの命だと思ったそうだ。アイデン兄様が言っていたから間違いない。


 でも、実はこの『大切なもの』が意味するのは、父が宝箱に入れて大切に大切に保管していて、たまに出しては読み返している、結婚前に母からもらった手紙の束のことだと教えてもらった。

 もしも父がやらかすと、その手紙の束が、「大切なものはしかと貰い受けた」と書かれた紙と入れ替わるだけらしい。

 何ていうか、失うものの重さが全然違うよね。その話をアイデン兄様からを聞いた時はちょっとだけ父に同情したけど、意地悪な私は真実を教えてあげないのだ。うへへへへ……ただ……いつか勘違いだよと笑って話せたらいいな、とは思ってる。






 とまあ、この二年の間に勘違いしていることが分かったり、実は身長が伸びたりした私。

 そう、ひたすら走ってたから身長が伸びないんじゃないかと心配していたけど、大丈夫だった。

 バルンさんの栄養満点、美味しさ無限大の晩御飯と、毎朝しっかり食べる冒険者ギルド職員寮のボリュームたっぷり朝ご飯のおかげでスクスクと育っております。


 お昼ご飯は、桃。

 忘れもしない、お山を改造したあの日……効能に引かれてカタログから解放した温泉に早速入りましょうと入浴の準備をして温泉に戻ってみれば、うっとりと気持ちよさそうな顔したヴォルグス達が先に入っているじゃないか。

 その顔を見たら怒るに怒れず泣き寝入りで、仕方ないから庭を充実させることに勤しんだあの時……桃源郷にはやっぱり桃でしょうと説明も読まずにノリで植えた桃の木の実。


 ダルバリオン先生からお昼ご飯は食べないか軽くにしろと言い付けられていたこともあり、カタログから解放した翌日には直径が七センチぐらいの実が生っていたから、果物ならすぐに消化できて負担にならないのではと思って食べていたんだけど、この桃、ただ者じゃなかった。

 説明も読まずにノリで植えた桃は、一個食べれば大柄の大人が他には何も食べなくても終日全力で動き続けるだけのエネルギーが得られるというものだった。


 どうりで、初日は二度も失神したのに、お昼ご飯に桃を食べ始めた翌日からは急に体力が付くはずもないのに一度の失神で済むようになり、半月を過ぎる頃には失神しなくなっていた。

 しかも、世界が夕食どきになるまでに頂上に戻って来られなければ、世界の時間が止められて、私の時間だけが通常通りに経過していくわけで、気絶している時間以外はダルバリオン先生に追いかけられてずっと全力疾走。

 ひたすら体力を消耗し続けるから身長が伸びるどころか痩せてしまってもおかしくなかったのに、痩せることなく身長がちゃんと伸びたのは、修行中の消耗分を桃のエネルギーがしっかりと補完してくれていたからだと思う。

 偶然とはいえ、あの時桃の木を植えて良かった。この時ばかりは桃源郷イコール桃の木という自分の安直な思考と、先に温泉に入りやがったヴォルグス達に感謝したよ。


 更に、青白かった肌も病的な白さは卒業して、他の神様達と同様の白さになった。

 私が目指していたのは健康的な小麦色の肌だったんだけど、この体はこれ以上色が変わらないらしい。ま、病的な青白さから卒業できただけでも良しとした。


 変わったのは身長や肌の色だけじゃないよ。

 今はドルチェンさんと一緒にお山に住んでいるのだ。

 と言っても、ドルチェンさんの寮の寝室の扉とお山にあるワンルームだった家の扉を空間魔法で繋げただけだけど。


 ワンルームだった家は外側はそのままに、内側だけを空間魔法で拡張して寝室三つと広いリビング・ダイニング・キッチン一つの合計四部屋にした。

 このキッチン、超本格的。

 私もドルチェンさんも料理をしないから平日は無用の長物と化してるんだけど、ゴリゴリマッチョ亭がお休みの安息の日だけは稼働する。

 そう、バルンさんとセリーお姉さんが来てくれるようになったからだ。


 バルンさんの主な目的はコックナンの卵と新たにカタログから解放した米の生る木のお米。これで新メニューを次々と作って喜んでいる。

 セリーさんの目的はヴォルグス達と戯れること。いや、モフり倒すことと言った方が正しいか……


 ヴォルグスは、光が当たった木の葉のような薄緑の毛色と見付けることの難しさから『山の精霊』と呼ばれているらしく、一瞬でもその姿を見ることができたら幸せになれるとさえ言われているほどに珍しい魔獣なのだそうだ。

 エフィレイス先生に読まされた本の中の魔物図鑑に書かれていた情報では、ヴォルグス自体が種族能力の【気配察知】で人種を避けて暮らしているらしく、人種が近くに来れば見つからないように逃げるために、どれだけ探しても見つかるはずもなく、稀に逃げるのが遅くなった場合にのみチラリと姿が見えるだけだと書かれていた。

 そんなヴォルグスが庭に無防備に五匹も転がっているのだから、初めて対面した時はドルチェンさんもバルンさんもセリーお姉さんも、ついでに、たまに泊まりに来るレイオンさんも仰天していた。


 そう、何の問題もなく、ドルチェンさん達は、ヴォルグス達との、対面を、果たした。

 おかしいだろう! ヴォルグスという種族は人種を避けて暮らしてるはずだよね? はずだよね?

 なのに、ヴォルグス達はドルチェンさん達が来ても耳がピクッと動いたぐらいで全く反応しなかったんだよ。

 私以外の人間だよ? 警戒して当然じゃないの? なんでお腹丸出し仰向け万歳で寝てるのよ。野生はどうした! 野生は! 山の精霊の名が泣くぞ!

 まあ……おかげでセリーお姉さんがモフり倒せるからいいんだけど……なんか納得がいかないのは私だけなのだろうか?




 こんな感じで、どこかヴォルグス達におちょくられているように感じる日々の生活に、ちょっとした変化があった。

 エフィレイス先生の授業もダルバリオン先生の修行も、極々わずかだけど進展している。


 午前中は物腰柔らかで丁寧なエフィレイス先生の授業だ。

 ダルバリオン先生と違って穏やか〜な雰囲気だから午前中は楽勝だろうと高を括ってた。ゆっくりできると思っていたのよ。

 でも、それは大きな間違いだった。

 神様は、物腰柔らかで丁寧でも穏やか〜でも、やっぱり神様だった。


 まず、朝の挨拶。


「アイデン、アイシェの服をドレスに」


 エフィレイス先生の言葉一つで私の服は青紫の足首まであるフレアワンピースに変わった。

 そして、そこで貴族の挨拶の仕方を目線、顔の角度、背筋の角度、肘の位置、指先の角度、足の位置、腰の高さまで細かく細かくご指導いただき、ひたすら体が覚えるまで繰り返し繰り返し、繰り返し繰り返し、繰り返し繰り返し、繰り返し繰り返し、ダルバリオン先生に追いかけられることが恋しく思えてしまうほどに繰り返し同じことをして、一日目は終了。

 神経衰弱になりそうだった……


 二日目、挨拶の練習を二時間ほどした後に「なんとか見られるようになりましたね」と言ってもらえた。

 その後は山のような本を目の前に積まれて「理解できなくてもいいから全て記憶してください」と言われて、その日から半分挨拶の練習、半分は本を記憶する作業になった。

 一週間もすると挨拶は合格をもらえて最初の十分ぐらいを挨拶に使う以外は全て読書に回されるようになったけど、それなら楽じゃないかと思ったら大間違いで、本を読んでいる間の座っている姿勢、本を持つ手の形、ページをめくる動き、読んでいる間の表情、その全てを頭の先から足の先まで細かくチェックされ、指摘され、エフィレイス先生が求める状態を保ち続け、体に覚え込ませなければいけなくて、常に神経を全身に張り巡らせて注意しなければならず、なかなか本を読み進めていくことができない。


 修行が始まって二年、未だにどんどん追加される本を記憶する作業から解放されていない。

 それでも最近はダルバリオン先生の修行で筋力がしっかり付いたことも手伝って、姿勢保持は完璧になったよ。

 読んでいる間の微笑みを保ち続けることは相変わらず難しくて、ちょくちょく指摘は受けるけど……書かれている文章が難しいと、どうしても顰めっ面になっちゃうのよ。今日はニヤニヤが止まらないし。


 でも、不思議なもので、沢山の本を記憶していく内に記憶同士が結びついて難しいことも少しずつ理解できるようになってきているからびっくり。

 ずっと記憶するだけの作業でしかなかったものが、最近では本を読むという本来の形になってきて、少し楽しいと思えるようになってきた。

 時間はかかっているけど着実に進歩してる。それが嬉しい。



 午後から始まるダルバリオン先生の修行は、修行が始まって一年はひたすら走らされた。

 世界の時間を止めなくても夜までに頂上に戻ることができるようになると、更に走る距離を増やされて、どんどんどんどん増やされていき、ダルバリオン先生が納得のいく速さで午後の時間、約五時間を全力疾走し続けても疲れを見せなくなるまでひたすら走らされた。と言うか、剣を持って追い回された。


 それが終わると、今度は後ろ向きで走らされた。

 これまた『結界まで走って頂上まで戻る』から始まって、ダルバリオン先生が納得のいく速さで全力で走り続けても疲れなくなるまで続けられた。


 当然、背中に目は付いてないから、最初の頃は転ぶし木に激突するしで大変だったよ。

 無敵の体は傷一つ付かないけど、顔に付いている二つの目から入る情報だけにこだわる私に呆れたダルバリオン先生が、「お前は本当に馬鹿だな」としみじみと言った時の目。もうね、憐れみに満ち満ちたあの目は忘れられないよ。

 自分が馬鹿だと自覚していてもびっくりするぐらいのショックを受けたもん。あの釣り上がった猛々しい目が、どうしたらそんな今にも泣き出しそうな目になるんだ。そんな顔をするほどに私は馬鹿なのか……と。


 確かに、魔粒子を背後に広げて前もって障害物を察知しながら走れば済む話だったわけだけど、もっと簡単な方法を使うなら、神視界で背後を見ながら走ればいいだけだったんだけど、気がつくのが遅かったからってそんな救いようがないって顔しなくたっていいじゃん。

 特に神視界に関しては、魔法みたいに一から自分で努力して試行錯誤して鍛錬して使えるようになった力じゃないから直ぐに思いつかないし、そもそも【もどき】を使い熟せていないんだから、もう少し大目に見てくれてもいいのじゃないかと思うわけよ。

 で、頭の中でブーブー文句を言っていたら、「ならば空いている時間を少しでも【もどき】の練習に充てればいいだろう」と至極真っ当なことを言われて言い返せず、その後はクソクソ言いながら走ったよ。女の子としてどうなのかとは思うけど、溜め込むのはよく無いからね。気が済むまで頭の中で連呼したよ。


 こうして文句を垂れながらも順調に進んでいったダルバリオン先生の修行が、背面走りから次の段階に入った時、思わぬ問題に直面した。

 それは、目を閉じてしまうこと。


 そう、前世も含めた自分よりもはるかに大きな相手に殴られるという経験が、相手が手を上げると無意識に体が強ばり目を閉じてしまうという条件反射を作り上げてしまっていたのだ。

 だから、ダルバリオン先生から「俺がゆっくり振る剣をひたすら避けろ」と言われて剣を振り上げられた瞬間、体は強張り目はギュッと閉じてしまったのだ。


 これにはダルバリオン先生も驚いてしまい、原因が私の過去にあることが分かると、一度修行を中断して対策を練ることになった。

 アイデン兄様も来てくれて、解決方法を見つけるために私を診てくれたけど、前世と今世での記憶の全てを完全に消去するか、大きな相手が手を振り上げることに慣れるしかこの条件反射を消す方法は無いと言われてしまい、それを聞いたダルバリオン先生が「ならば慣れるまで付き合ってやる」と言って、私が目を閉じなくなるまでひたすらゆっくりと剣を振り上げ振り下ろすことを続けてくれた。


 この時ばかりはダルバリオン先生に対して申し訳ない気持ちと感謝の気持ちしか湧かなかった。

 だから、少しでも早く慣れるために瞼が開いた状態で魔法で固定してダルバリオン先生と向き合った。

 そして一ヶ月近くかかって何とか目を閉じなくなったところで、今度は振り下ろされる剣を避けるという動作が加わったけど、振り下ろされる剣の速度は、私が怯えないようにと亀さんでも避けられそうなぐらいにゆっくりだった。


 こんなこと、私には無理だ。

 こんな、本当に解消できるかも分からない問題に対して、どこまでも相手に付き合うなんて私にはできない。間違いなく放り出す。お前には無理だ、強くなるのは諦めろって。

 なのに、ダルバリオン先生は放り出すことなく、怒ることもなく、不機嫌になることもなく、淡々と続けてくれた。


 走っている時もそうだったけど、ダルバリオン先生は無茶苦茶な修行をさせるけど、絶対に私を一人にはしなかった。

 気絶しても目が覚めた瞬間に目の前に剣が突き立ってたから、気絶してる間中そこに居たってことだし。

 いくら神様でも出来ることじゃないと思う。

 本当に頭が下がる思いだった。

 私はこの時初めて、ダルバリオン先生に心から感謝したよ。

 それまでは感謝しなかったのかと言うと、正直に白状すると、してなかった。

 だって、修行が辛すぎて出てくるのは悪態ばっかりだったんだもん……


 でも、この時を境に私の心境も変わり、最初は誓ったからという理由で従っていた修行内容も、辛いのは変わらないから悪態はつくけど、それでも、渋々じゃなくて素直に受け入れられるようになった。

 そうして、いつの間にか人間なら強い部類に入るという速度で振られる剣を午後の修行時間中避け続けられるようになっていき、今日もまたダルバリオン先生の剣を避けるのかと思っていたら、違った。


「おいチビ、今日は五歳の誕生日だな。四歳の時にシク・ラッパルとフォルセリアス・リュオーンに会いたいと言ったから、四歳の時はシク・ラッパルに会いに行った。だから、今日はフォルセリアス・リュオーンに会いに行くぞ」


 なんと、ダルバリオン先生が私の誕生日を覚えていてくれた! しかも、四歳の誕生日に言ったことも覚えていてくれた! なんかすごく嬉しい!


 そういえば、四歳の誕生日も私は何も言っていないのに「今日は四歳の誕生日だろう、何かやりたいことはあるか?」って聞いてくれたのよ。

 だから、父から話に聞いていたシク・ラッパルとフォルセリアス・リュオーンに会いたいと答えると、今回はシク・ラッパルだって言って見に連れて行ってくれたの。

 あの時もめちゃくちゃ嬉しかったなあ。シク・ラッパルに会えたことも嬉しかった。


 実際に見たシク・ラッパルは、父の話通り、身悶えするほど可愛かった。

 真っ白いふわっふわの綿毛の中に黒曜石のような艶と透明感のある円なお目目が二つと、こじんまりとした濃い灰色の嘴が絶妙なバランスで配置されたお顔は、これでもかとこねくり回したくなるほどに可愛くて、父からは気をつけるようにと言われていたのに思いっきり正面から近づいてしまったのよ。

 で、待ってましたとばかりに攻撃されたんだけど、私がシク・ラッパルより小さいから嘴は私の顔面じゃなくて頭頂部に突き立てられたの。

 だけど私は無敵。当然死なないから何度も何度もつつかれて、その度に頭が痛いからついイラッとしてしまい……またつついてきた嘴を避けて、勢い余って目の前まで降りてきたシク・ラッパルの頭に思いっきり頭突きをかまして失神させたのはいい思い出だ。


「ああ、あれは面白かった。だが、今日はもっといい思い出を作れるぞ」


 私の頭の中の声を聞いていたダルバリオン先生の言葉に疑問符が浮かんだ。

 もっといい思い出が作れるってどういうこと? フォルセリアス・リュオーンに会えるからいい思い出になるってことかな?

 よく分からないでいると、ダルバリオン先生は私を小脇に抱えて「行けば分かる」と言った次の瞬間には、眼前に漆黒に輝くのビロードが見えた。いや、フォルセリアス・リュオーンの体表が見えた。


 地面に下ろしてもらって改めて見たら……圧倒された。しばらくの間言葉が出なかった。


 父の言う通り、近づいたら簡単に踏み潰されそうなほどに大きいけど、大きさのせいじゃない。

 美しいのだ。

 圧倒されて言葉を失うほどに美しいのだ。

 こんな生き物が存在するなんて……


 やっぱり馬とそっくりさんなんだけど、どんなお手入れをしているのか漆黒なのに素晴らしい毛艶で光り輝いている。

 馬でいえば耳がある位置には、捻れながら上に伸びている大きくて長い黒光りする角が生えていて、長い前髪はニヒルな顔に更なる影りを持たせ、波打つ長いたてがみは優雅に背中へと流れていく。

 どこにも無駄な肉がついていないしなやかな筋肉のラインは、マッチョが苦手な私でも魅了されるほどに美しい。

 その美しさに吸い寄せられるように一歩踏み出したとき、


「チビ、今から俺が許可を出すまで【もどき】を使うことを禁ずる。分かったな」


 え? 神視界とか使っちゃ駄目ってこと?


「そうだ」


 何故に?


「それに答える必要があるか?」


 あ……


「ないです! わかりました! 【もどき】は使いません!」


「よし、では後で迎えにくる」


 は? と思った直後にダルバリオン先生は消えていた。











●バムズ

挿絵(By みてみん)

種族能力:消音

木があるところを好み、夜行動することが多い

人種の血液を吸い尽くす


●ピグズ

挿絵(By みてみん)

種族能力:強足

すばしっこくジャンプ力が凄い

五人以上で行動し、獲物を見つけると一気に襲いかかる

強い顎で肉も骨も噛み砕き、骨も残さず食べてしまう


●ドーガン

挿絵(By みてみん)

種族能力:棍棒生成

強靭な体を持ち、怪力で振り下ろされる棍棒に当たれば人は豆腐のようにへしゃげる

女性の肉が好き






シク・ラッパルは、ふっくらと膨らんだシマエナガに似ています。

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