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第45話:王太子妃様が訪ねて来ました

私達の婚約披露パーティーも無事に終わった。それにしても疲れたわ。最後の招待客を見送った後、居間でうちの家族とレオの家族でティータイムだ。


「ミシェル、君は随分変わったね。何人かの貴族に聞かれたよ。あの令嬢は本当にミシェル嬢かってね」


そう言ってクスクス笑っているのは、アレックス様だ。


「確かに一昔前はお前、豚だったもんな。さらに我が儘で傲慢で。もう救いようがなかったのに、すっかり令嬢らしくなっちまって」


そう言って、私の頬を突くのはキースだ。この2人、本当に同じ親から生まれてきたのかしら?そう思うくらい、性格が正反対だ。ちなみにレオは、2人を足して2で割ったような性格ね。


「おい、元豚。聞いているのかよ」


キースがさらに私の頬を突く。


「ちょっとキース。誰が元豚よ!失礼にも程があるわよ!」


キースの手を振り払って抗議の声を上げる。


「おい、キース兄さん!いい加減にしろ。ミシェルに気安く触るな!」


レオも我慢できなかったのか、キースに文句を言ったところまでは良いが、なぜかレオの膝に座らされ、後ろから抱きしめられる。周りから、生温かい視線をひしひしと感じる…


「レオは相変わらず、焼きもち焼きのガキだな」


そう言って茶化すキース。本当にこいつは!


その後、軽く雑談した後レオ一家は帰って行った。


さすがに疲れたわ!部屋に戻って着替えをしていると、エレナに連れられてチャチャがやって来た。私を見つけると嬉しそうに飛びついて来る。


「チャチャ、今日はお部屋でいい子にしていた?ごめんね、構ってあげられなくて」


チャチャを抱っこすると、嬉しそうに顔を舐めて来る。きっと寂しかったのだろう。寝る支度を急いで済ませ、チャチャと一緒にベッドに入った。今日はいつも以上に甘えん坊なチャチャ。


私にぴったりくっ付いて寝ている。チャチャの温もりを感じながら、私も眠りに付いたのだった。



翌朝

レオと一緒に貴族学院へと向かう。


「おはよう、昨日はありがとう!皆のおかげで何とか乗り切れたわ!」


教室に着くと早速お礼を言った。


「私たちは何もしていないわよ。それにしても昨日のミシェル、とっても奇麗だったわよ」


「そうそう、あちこちでミシェルの事を皆が褒めていたわ!多くの貴族が似顔絵を見ていたみたいで、全然違うってね。それに、マナーもばっちりだったし。これで一気に株を上げたわね」


「それは皆が事前に私の事をよく言ってくれたからでしょう。本当にありがとう」


皆に改めて頭を下げると、嬉しそうに微笑んでくれた。


放課後は、シュミナの家でマチルダも含め3人でお菓子作りをした。やはり他の子たちは令嬢という事もあり、お菓子などお料理を作るのは苦手の様だ。


それにしても、シュミナとマチルダはとても器用で、何でも卒なくこなす。それに比べて私はと言うと…


まあ、楽しく作る事が大切だものね。明日もお菓子を作ろうという約束をして、家路へと着く。少しでも遅くなると、レオがうるさいのだ。本当にどれだけ過保護なのだろう。


馬車から降りると、チャチャが飛んできた。


「ただいま、チャチャ」


基本的にいつもお出迎えしてくれるチャチャを抱っこして、家の中に入る。


「ミシェル、おかえり」


「あら、お父様。今日は早いのね」


お父様がなぜか物凄く気まずそうな顔をしている。これはきっと良くない話があるのね…


「お父様、今度は何があったの?もしかして、王太子妃様からお茶にでも招待された?」


私の言葉に、驚くお父様。


「なんだミシェル、知っていたのか?そうなんだよ。もちろん、断るんだよな?」


「ええ、学業が忙しいとか言って、断って。お父様にはいつも嫌な事をお願いしてごめんなさい」


王族からの誘いだ。きっと断りづらいだろうに、本当にお父様には苦労を掛けるわ。


「相変わらずお前は優しいな!私の事は心配しなくていいよ!しっかり断っておくからな!」


なぜか物凄く張り切っているお父様。でも、今後も何度かお誘いがありそうね…

本当に、王族には困ったものだわ!


そう思っていたのだが、翌日お父様が断りを入れると、以外にもあっさりと受け入れてくれた王太子妃様。お父様も拍子抜けをしていた。


もしかしたら、本当に単純に私とお茶をしたかっただけかしら?確かに私はこの国の中でもかなり身分の高い貴族だ。この家を継ぐ未来の夫、レオも王太子様から期待されている。


その事から考えても、私とは仲良くしておかなくては!と思ったのかもしれないわ。そうだとしたら、なんだか悪い事をしてしまったかもしれない。だからと言って、自分からのこのこ王宮には行きたくはないけれどね。


若干罪悪感を抱きつつ、この事はもう終わったと思う事にした。


そして週末、学院も休みなので久ぶりにゆっくり自宅で過ごす事にした。最近忙しくて、あまりチャチャにも構ってあげられなかったものね。


久しぶりにチャチャを連れて、中庭で一緒に遊ぶことにした。いつもの様に、ボールを投げると嬉しそうに取りに行くチャチャ。もっと遠くに投げて!と言わんばかりに、ボールをくわえて戻って来る。


しばらくチャチャと遊んでいると、ルシアナに声を掛けられた。


「お嬢様、あの…王太子妃様がいらっしゃったのですが…」


物凄く気まずそうにそう言ったルシアナ。


「王太子妃様が?うちにわざわざいらしたの?」


あり得ないわ。本来王族が貴族の元に連絡もなく訪ねて来るだなんて…

一体どういうつもりなのかしら?


とにかく、王太子妃様を待たせる訳にはいかないわよね。


「ルシアナ、王太子妃様はどこにいらっしゃるの?すぐに向かうわ」


「客間でございます」


急いで客間へと向かった。客間に入ると、そこには確かに王太子妃様の姿が。


「お待たせして申し訳ございません!王太子妃様。今日はどういったご用件で?」


回りくどい事は言わずに単刀直入に聞いた。


「突然ごめんなさい。どうしてもあなたに会いたくて来ちゃった。あら?そのワンちゃん。可愛いわね。おいで」


しまった。つい動揺してチャチャの存在を忘れていたわ。私が急いで客間に向かったから、一緒について来たのね。


王太子妃様に呼ばれ、嬉しそうに飛びつくチャチャ。王太子妃様も嬉しそうに抱っこしている。どうやら、動物が好きな様ね。


「この子、人懐っこいのね。名前は何と言うの?」


「チャチャです。私が領地に居た時に、家族として迎え入れました」


「そうなの。よろしくね!チャチャ」


チャチャが懐くという事は、悪い人ではないのかしら?でも、油断は大敵だわ!


「せっかくだからお話をしましょう。ミシェル様、座って」


王太子妃様に促され、席に着いた。私が座ると、すかさず膝の上に座るチャチャ。


「あら、随分お利口なのね」


そう言ってクスクス笑っている。


「あの、王太子妃様。今日我が家にいらしている事は、王太子様はご存じなのですか?」


「いいえ、言っていないわ。黙って来たのよ。言ったらきっとダメって言うでしょう。そうそう、私の事は、レベッカと呼んで頂戴ね」


「あの、レベッカ様。王太子様に黙ってって、後で怒られませんか?」


「きっと怒られるわね。しばらく外出は禁止されるかもしれないわ」


そう言ってさらに笑うレベッカ様。この人、一体何を考えているのかしら?


「それでも、どうしてもあなたに会いたかったのよ。さあ、そろそろ本題に入りましょうか。あなた達、ミシェル様と2人きりで話がしたいの。席を外してくださる?」


なぜかメイドや護衛騎士たちを外に出すレベッカ様。これから一体何が始まるのかしら?不安でいっぱいのミシェルであった。

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