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第32話:婚約者が決まりました

移動中退屈なのか、馬車の中で走り回るチャチャ。


「チャチャ様、少しはじっとしていられないのですか!」


余りにも動き回る為、ルシアナに怒られたチャチャは、慌てて私の膝の上に避難した。どうやら、日頃から容赦なく怒るルシアナが恐い様だ。


「ルシアナ、チャチャは普段走り回っているのだから、少しは多めに見てあげてよ!チャチャが可哀そうでしょう」


すかさず抗議の声を上げたのだが…


「だからって、こうウロウロとされては目障りです!」


そう言って怒るルシアナ。ルシアナに一喝され、私の膝の上で大人しくなったチャチャは、いつの間にか眠っていた。


その日は、行きとは別のホテルに泊まった。どうやら、動物も一緒に泊れるホテルを予約してくれた様だ。


行きはお母様と一緒だったが、帰りはチャチャと一緒だ。狭い馬車から降ろされ、大はしゃぎで部屋を走り回るチャチャ。


そして2日目、チャチャも随分と馬車になれたのか、比較的おとなしく乗っていた。


今日はエレナが私たちと一緒に馬車に乗っているのだが


「随分とお利口ですね、チャチャ様は。昨日ルシアナが、チャチャ様が走り回って大変だったって言っていましたが、全然じゃないですか」


そう言ってクスクス笑っていた。


あ~、それで今日はエレナが私たちの馬車に乗っているのね…


定期的に休憩を挟み、今日泊まるホテルに到着した。王都からもほど近い事もあり、明日は午前中には公爵家に帰れそうだ。


チャチャと一緒に部屋で休憩をしていると、ルシアナがやって来た。


「お嬢様、旦那様と奥様がいらっしゃいましたよ」


「お父様とお母様が?」


部屋に入ってきたのは、間違いなくお父様とお母様だ。どうやら、迎えに来てくれた様だ。


「ミシェル、久しぶりね。元気そうでよかったわ。チャチャも相変わらず元気ね」


私を抱きしめるお父様とお母様。チャチャも嬉しそうに走り回っている。


「どうしたの?わざわざ私を迎えに来てくれるなんて!」


「実はミシェルに大事な話があってね。ちょっと一緒に来てくれるかい?」


そう言って私を部屋の外へと連れ出した。もちろん、チャチャも一緒で、チャチャはお母様が抱っこしている。


私達が連れてこられたのは、ホテル側が準備してくれた特別な部屋の様だ。


中に入ると、そこに居たのは…


「ミシェル、久しぶりだな!随分奇麗になって、見違えたよ」


「レオ、どうしてあなたがここに居るの?でも、会いたかったわ!」


そう、部屋の中に居たのはレオとレオのご両親だ。嬉しくて、レオに抱き着いた。レオも私をギューッと抱きしめてくれる。


「レオ、随分背が伸びたのね。私より頭1つ分高いわ」


「一気に伸びたからな。それにしてもミシェル、お前随分いやらしい体になったな。まさか、他に男でも出来たのか?」


なぜそんな発想になるのよ!そもそも、いやらしい体って何よ!


「相変わらず失礼ね!男なんていないわよ」


そう言って頬を膨らませた。


「キャンキャン」


お母様の腕から抜け出したチャチャが、私たちの足元でウロウロしていた。


「お前がチャチャだな。ミシェルとずっと一緒に居てくれて、ありがとな」


そう言って、チャチャを抱きかかえたレオ。いつも通り、尻尾を振ってレオの顔を舐めて歓迎している。


「さあ感動の再会はもういいだろう?とにかく2人共座りなさい」


お父様に促され、席に座った。


「ミシェル、お前には一切話していなかったが、実はまだ第二王子と王妃がお前の事を諦めていない様でな。お前が帰って来たタイミングを見計らって、もう一度結婚を申し込んで来る様なんだ」


「そうみたいね。シュミナが教えてくれたわ。シュミナは王都の状況を、事細かく報告してくれていたから」


私の反応を見て、目を丸くするお父様たち。あら?私何かおかしな事を言ったかしら?


「すまん。あまりにも冷静だったから、驚いたんだ!それじゃあお前は、第二王子との婚約を受け入れるつもりなのかい?」


「それは無理よ!絶対に嫌!もちろん、お父様が断ってくれるのでしょう?」


第二王子と婚約なんて、死んでも嫌よ!



「ミシェルの気持ちは分かったよ。その件で、お前に相談があるんだ。実はスタンディーフォン家の3男、レオから結婚の申し込みを受けたのだが。お前さえよければ、この場でレオと婚約をさせようと思っている」


え?レオと?

無意識にレオの方を見た。


「ミシェル、俺は物心ついた時からお前が好きだ!この気持ちは誰にも負けない!絶対お前を幸せにする。だから、俺を選んで欲しい!それに、もし俺との結婚話を断れば、お前はユーグラテスと婚約する事になるんだぞ。嫌だろう?」



「おいレオ。気持ちは分かるが、ミシェルを脅すな!でもミシェル、レオにしといた方がいいぞ。お前、あの王子が嫌いなのだろう!レオは俺に似てイケメンだし、女にも優しいぞ」



どうやらおじ様も私とレオの結婚に賛成の様だ。それにしてもまさかこのタイミングで、レオにプロポーズされるなんて思ってもみなかったわ。


まるで夢みたいね。

そう思ったら、涙がジュワっと込み上げてきた。私の涙を見て、焦ったのはお父様だ。


「ミシェル、泣くほど嫌だったのか?嫌ならレオも第二王子も断っていいんだぞ」


「お父様、違うのよ。嬉しくて泣いているの」


そう言うと、私はレオの前に立った。


「レオ、私もあなたが大好きよ。こんな私で良ければ、よろしくお願いします」


深々と頭を下げた。


次の瞬間、レオにおもいっきり抱きしめられた。


「本当か?本当に俺はお前と結婚できるのか?おい、みんな聞いたか!これでミシェルは正真正銘俺のものだ!」


そう言ってさらにギューッと抱きしめるレオ。普段騎士として体を鍛えているレオに強く抱きしめられると、さすがに苦しい。


私がもがいている事に気が付いたレオが、力を緩めてくれた。


「ごめん、ミシェル。大丈夫か?」


ぐったりしている私を抱きかかえると、なぜかレオの膝の上に座らされた。それを見て、お父様以外の3人がニヤニヤしている。


「レオ、恥ずかしいわ。降ろして」


急いで降りようとした私を阻止し、後ろからギューッと抱きしめるレオ。


「俺はずっとお前に片思いをしていたんだ。これくらいしても罰は当たらないだろう」


そう言ってさらにギューッと抱きしめるレオ。


「コホン、とにかくミシェルはレオが婚約者でいいのだね?」


「もちろんよ」


再度お父様に確認され、即答した。


「わかったよ。それじゃあ、彼を呼んでくれるかい?」


彼?一体誰かしら?


お父様が側に控えていた執事に声を掛けた。しばらくすると、1人の男性が入って来た。


「わざわざ来てもらってすまないね」


「いいえ、これが私の仕事ですので。それでは早速、こちらの書類に記入していただけますでしょうか?」


私たちの目の前には、婚約書がおかれた。そうだわ、思い出した。確か婚約をする場合、自分たちが知らないところで勝手に婚約が成立しない様に、必ず役所の人間の立ち合いの元、書類を作成する決まりになっているのだった。


という事は、この人は役所の人なのね。それにしても、レオに抱かれていては書けないわね。そう思い降りようとしたのだが、やっぱり降ろしてもらえない。



「レオ、ミシェルを抱いていたら書けないだろう。ミシェルを解放しなさい」


見かねたお父様が、レオに私を降ろす様伝えてくれた。お父様に言われ、渋々私を解放するレオ。2人で必要事項を記入した後は、家の両親とレオの両親が書類に記入していく。


ちなみに書類を書き終えた私は、再びレオの膝の上に戻された。


「確かに見届けさせていただきました。最後に私のサインと証明印を押しましたので、明日役所に届けてください。それでは私はこれで」


「助かったよ。本当にありがとう」


お父様とレオのお父様が男性に頭を下げている。一応私も頭を下げた。


「よし、後はこの書類を提出すれば、お前たちは晴れて婚約者同士だ。レオ、お前には今後ミューティング公爵家を継ぐ者として、しっかり勉強してもらうがいいな?」


「もちろんだよ!ミシェルと結婚できるなら、何だってするよ」


そう言って、私の頬に口付けをしたレオ。一気に顔が赤くなるのが分かった。もう、どうして親が見ている前でこういう事をするのかしら。



「レオ、ミシェルと婚約出来て嬉しいのは分かるが、節度を保った行動を心がけろ」


お父様がレオに釘を刺した。


「そうだぞ、レオ。そう言うのは2人きりの時にしろ。いいな」


おじ様の言葉に、明らかに不満そうな顔をするお父様。何はともあれ、私は念願だったレオと婚約出来て、物凄く幸せなのであった。

久しぶりに会ったレオと、そのまま婚約という流れになりました!


次回はレオ視点です。

よろしくお願いしますm(__)m

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