第21話:ミシェル嬢を僕のものにしたい~ユーグラテス視点~
母上はレオとミシェル嬢に近づき、話しかけている様だ。しばらくすると、母上がミシェル嬢を連れ出した。明らかに不満そうな顔で母上を睨みつけているレオ。
「さあユーグラテス、僕がレオを引き付けておくから、ミシェル嬢のところに行っておいで」
「兄上、ありがとうございます。行って来ます」
急いでブルーローズが咲いている場所へと向かった。そこには母上と楽しそうに話をするミシェル嬢の姿が。
僕は母上を探していた様に見せかけ、声を掛けた。
恐る恐る振り向くミシェル嬢。僕の顔を見た瞬間、明らかに怯えだした。その姿を見た瞬間、体中の血液が一気に沸き上がるような興奮を覚えた。僕はやっぱり、ミシェル嬢のこの顔が一番好きだ!
あぁ、ずっとミシェル嬢を側に置きたい。もうレオの元になんて返したくない!今までに感じた事が無いほどの感情が溢れ出す。
気をきかせてくれた母上が、2人きりにしてくれた。彼女に触れたい…そんな思いから、少しずつ近づいて行く。
「ねえ、ミシェル嬢。どうして僕の事、そんなに怖がるの?」
ずっと疑問だった事を本人に聞いた。
「第二王子様、お願いです。それ以上近づかないで下さい!」
それ、僕の質問の答えになっていないよ。そう思いつつも、ゆっくりと彼女にの方に向かって歩いて行く。ご丁寧に、目に涙を溜めて僕を見つめるミシェル嬢。
なんて可愛いのだろう!増々彼女が欲しい。その柔らかそうな肌に触れたい。そんな思いから、彼女に手を伸ばす。
ついにミシェル嬢の頬を、美しい涙が伝った。もう少しで触れられる!そう思った時だった。
「ユーグラテス、ミシェルから離れろ!」
声のする方を振り向くと、鬼の形相で走って来るレオが目に入った。ミシェル嬢も嬉しそうにレオの方に向かって走って行く。クソ!良いところで邪魔が入った様だ。
仕方ない、今日のところは諦めるか!ミシェル嬢とレオに別れを告げ、僕は再びパーティー会場へと戻った。
会場に戻ると、兄上が飛んでいた。
「ごめん、ユーグラテス。レオに振り切られた」
申し訳なさそうに頭を下げる兄上。
「ねぇ、兄上。母上はどこですか?」
「母上なら王宮に戻ったはずだよ」
「そうですか、ありがとうございます。そうそう、僕は急用を思い出しましたので、これで失礼します」
兄上も僕の急用が何なのか理解した様で、特に何も言わなかった。兄上は僕を随分と可愛がってくれているからね。きっとこれからも、僕の味方でいてくれるはずだ。
急いで王宮へと戻ると、母上の部屋を訪ねた。
「あら、ユーグラテス。随分早かったわね。ミシェルちゃんはもういいの?」
「あの後、すぐにレオに邪魔されましたから。だから、ほとんど話せませんでした」
物凄く悲しそうな顔をした。きっとお節介な母上の事だ。僕の気持ちを理解してくれるはず。
「そうだったの。ねえ、ユーグラテス。明日にでもミューティング公爵家に、結婚の申し込みをしようと思っているのだけれど、いいかしら?お母様もすっかりミシェルちゃんの事を気に入ってしまってね。ただ、ミューティング公爵家は、親友で従兄弟でもあるスタンディーフォン公爵家の3男、レオの申し込みを断っているから、一筋縄では行かないと思うけれどね」
さすが母上だ、僕が何かを言わなくても勝手に動いてくれる。
「母上、ぜひお願いします。でも王族からの申し込みを、公爵家が断るなんて事あり得るのですか?」
通常王族からの申し込みを断るなんて事、常識的に考えてあり得ない。
「そうね、普通は無いわね。でも、ミューティング公爵家に場合はちょっと特殊でね。公爵がびっくりするほど優秀で、陛下の信頼も絶大なの。だから、陛下も出来るだけ公爵の嫌がる事は避けているのよ」
なるほど!父上はあまり仕事が出来るタイプではないからな。公爵が居なくなると困ると言う訳か。
「それに、公爵は娘のミシェルちゃんを誰よりも大切に思っているの。だから、ミシェルちゃんがこの人と結婚したいって言うまでは、婚約者を作らないと決めているのよ。だから、レオがいくら結婚を申し込んでも、首を縦に振らないの」
「それじゃあ、ミシェル嬢はレオを好きではないという事なのですか?」
「それは本人に聞かないと分からないけれど、少なくとも公爵はそう解釈しているのではなくって?」
なるほど。
「母上、僕、ミシェル嬢に好かれる様に、頑張ってみます!」
「まあ!あなたが自分から何かをしたいなんて、初めてね。お母様も全力で応援するわね」
とにかく、どんな手を使ってでもミシェル嬢を手に入れよう。その為にはどうすればいいのか、これから考えないと。幸い、母上や兄上も協力的だし。
それにしてもミシェル嬢の今日の姿、思い出しただけでも興奮する。早く僕のものにしたい!
待っていてねミシェル嬢、君を絶対僕のものにするから…
次回からミシェル視点に戻ります!
よろしくお願いしますm(__)m
 




