第14話:俺の大切な幼馴染【前編】~レオ視点~
レオ視点です!
俺の名前はレオ・スタンディーフォン。公爵家の3男として生れた。そんな俺には、物心ついた時からずっと一緒に居る幼馴染の令嬢が居る。名前はミシェル。
父親が従兄弟同士なのと、母親が親友同士という事もあり、しょっちゅう家に遊びに来ていたミシェル。もちろん、ミシェルの家にもよく遊びに行った。
少し我が儘なところはあるが、素直でまっすぐなミシェルが、俺は大好きだ。いつから好きになったかなんて、もうわからない。物心ついた時から、ミシェルの事がずっと好きなのだ。
だから俺は父上に
「ミシェルと結婚したい。俺をミシェルの婚約者にして欲しい」
そう頼んだ。
でも父上は
「そうだな、ミューティング公爵がミシェルと結婚してもいいって言ったら、結婚できるよ」
そう言ったのだ。
そうか、おじさんに頼めばいいのか!
そう思い、早速おじさんにミシェルと結婚したいから、婚約者にして欲しいと頼んだ。
でも
「レオの気持ちは嬉しいけれど、結婚相手はミシェル自身に選ばせようと思っているんだよ。だからごめんね。レオ」
そう言われてしまった。
そうか、ミシェルに言えばいいのか。そう思った俺は、今度はミシェルに
「大きくなったら俺と結婚しろ!」
そう伝えた。
でも
「嫌よ!私は王子様と結婚するのよ」
そう断られてしまった。その時は悔しくて
「お前みたいな我が儘な令嬢、王子が相手にする訳ないだろう!」
そう叫んでしまった。
それからと言うもの、どうしてもミシェルを見るとイジメたくなる。本当は大切にしたいのに、どうしても酷い事を言ったり、からかったりしてしまうのだ。
小さい頃は可愛かったミシェルだったが、年齢を重ねるにつれて次第に傲慢で我が儘になっていった。さらに、甘いものが大好きで運動嫌いなミシェルは、プクプク太っていき、6歳の頃には既に子豚になっていた。
そんなミシェルを皆が相手にする訳もなく、さらに癇癪が酷くなる。7歳の誕生日パーティーの時は、大暴れしたミシェル。さすがにミシェルの父親もまずいと思ったのか、それ以来ほとんど表には出さなくなった。
よしよし、それでいいんだ。ミシェルは俺と結婚するのだから、別に他の奴らに好かれる必要はない。ミシェルの父親も、そのうちミシェルには俺しかいないと気付くだろう。
そして俺は7歳で騎士団に入った。2人の兄たちも騎士団に入っていたので、ごく自然な流れだ。騎士団内でも、ミシェルの評判は最悪だった。
「おいレオ、お前あのミューティング公爵家の令嬢と幼馴染らしいな!大変だな。見た目が豚なだけでなく、性格があれじゃあなあ」
俺を同情する騎士仲間たちに若干の苛立ちは覚えたものの、ここまで嫌われてしまったミシェルには、やっぱり俺しかいない。このままいけば、ミシェルは俺のものだ。
そう思っていたのに…
あれは一番上の兄、アレックスの誕生日パーティーでの出来事だ。久しぶりに会ったミシェルは、見違えるように美しくなっていただけでなく、教養も身につけていた。
最初はどこか頭を打ったのだと思ったが、どうやらそうではない様だ。明らかに周りの令息たちの目の色が変わったのが分かった。
さらに父上がミシェルに
「好きな男でもいるのか?」
そう聞いたときのミシェルの反応!ふざけるな。俺はずっとミシェルだけを思って来たんだ!ミシェルは誰にも渡すものか!
そんな思いから、ついミシェルを問い詰めてしまった。“好きな人はいない”そうはっきり告げたミシェルが信用できなくて、しつこいくらい聞きまくった。そのせいで、ミシェルを怒らせてしまったが…
とにかく、ミシェルを太らせて子豚に戻さないと!そう思い、食事を勧めた。そこでもミシェルは、お上品に食事をするではないか!一体ミシェルに何が起こったのだろう。とにかくその日は、ミシェルから離れる事はなかった。
時折、令息共がミシェルを狙って近づいて来たが、思いっきり睨んでやったら逃げていきやがった。
なんとかパーティーを終えミシェルは帰ったが、一体何が起こったのだろう。
その日の夜
「いや~、ミシェルには本当にびっくりしたよ。まるで別人の様だった」
父上が母上に今日のミシェルの様子を報告している。
「そう言えば、マシェリがそんな様な事を言っていたわね。ミシェルちゃんが最近令嬢として自覚を持ちだしたって。どうやら、メイドたちとの関係もかなり良好の様よ」
「確かにミシェルは変わってきているね。俺に挨拶をした時も、随分と令嬢らしくなっていたよ。俺の嫌味もスルーしていたし。レオ、これは大変だね」
俺を見てクスクス笑うアレックス兄さん。自分は婚約者が居るからって、いい気なものだな!
「何々、ミシェルってそんなに変わったのか!俺も会いたかったな」
「おお、変わったぞ。きっとキースもびっくりするぞ」
その後もミシェルの話題で盛り上がる家族たち。俺はそれどころじゃなかった。とにかく、何とかしないとミシェルを取られるかもしれない。
それからと言うもの、時間を見つけてはミシェルの家に行き、ミシェルにお菓子を食べさせた。そう、元の体型に戻す為にだ。でも俺の気持ちとは裏腹に、どんどん令嬢らしくなっていくミシェル。
さらに友達まで出来たと言って喜んでいた。
このままでは、本当にミシェルを誰かに取られるかもしれない。そう思ったら我慢できず、再びミシェルの父親に直談判した。
「おじさん、お願いだ!ミシェルを俺の婚約者にして欲しい。もちろんもっと勉強も頑張るし、ミシェルを守れる様もっと強くなるから。お願いします!」
必死に頭を下げる俺に、困った顔のミシェルの父親。
「レオ、前にも言ったけれど、ミシェルの結婚相手はミシェルに決めさせたいんだよ。すまないね。でも、私も君が息子になってくれたら嬉しいとは思っているよ」
「だったらどうして俺をミシェルの婚約者にしてくれないんだよ!父親でもあるおじさんが、一言ミシェルに伝えればいい事だろう!」
ついおじさんに食って掛かってしまったが、それでも頑なにミシェルの意志を尊重したいと言い張った。
こうなったら、ミシェルに好きになってもらうしかない!そうだ、今度騎士団の試合がある。自慢じゃないが、俺は今回この大会の優勝候補だ。カッコいい姿を見せれば、ミシェルも少しは俺を意識するかもしれない。いつも断られているが、今回は首に縄を付けてでも見に来させよう。
そう思いミシェルを誘ったら、びっくりするほどあっさり“行くわ”と言われた。一体何なんだよ、こいつは!それに、どうやらお菓子を作っている様で、甘い匂いをさせている。
ミシェルに催促をし、何とか手作りのお菓子を手に入れた。それにしても、ミシェルがお菓子を作っていたなんて知らなかった。それも、使用人に配っているだなんて!
ふざけるな!ミシェルの手作りお菓子は、全て俺のものだ。ミシェルには次は使用人には配らず、俺によこせと伝えて公爵家を後にした。
それにしても、どんどん奇麗になっていくミシェル。でも、ミシェルは俺のものだ。物心ついた時から、ずっと好きだったんだ。今更誰かに渡すつもりなんて、さらさらない。
とにかく来月の大会は絶対優勝して、ミシェルにカッコいいところを見せるぞ。
マシェリはミシェルのお母さんの名前です。
次回もレオ視点です。
よろしくお願いしますm(__)m
 




