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プロローグ

短編https://ncode.syosetu.com/n1929gg/を連載にしてみた。

短編は15歳からスタートだったけど、こっちは12歳から。

ぼちぼち更新。

公爵邸の朝は早い。


チカッ


真っ暗な部屋の中、微かに魔法の光が照らす。この光が彼の目覚まし代わりだ。

ゴソゴソと動く影はテーブルランプに手を翳すと、部屋が明るく照らされた。

ベッドを出て着替え、身繕いを済ませたのは、一人の少年。


ここはボンブドゥール公国内、ボンブドゥール公爵邸。

彼は公爵の公女であるスプリング・スノウ嬢の専属執事、フォート。


制服は完璧の着熟し、階下の厨房に顔を出し。


「おはようございます、皆さん。今日も宜しく御願いします」


厨房にいた家人達は、笑顔のフォートにシャキッ!!

整列で最敬礼。その中でまだ勤務2日目の新米が、うっかりして。


「おはようございます!!あ・・フォート様!!」


彼は静かに近付いて、唇に人差し指で『しー』の仕草をする。


「様はダメだからね?呼び捨てでお願いする」

「申し訳ありません!!」

「さあて、お嬢様のお召し物を選ぼうかな。君。お嬢様の朝食を用意して」

「はいっ!!」


彼の後を2名のハウスメイドが従いついて行く。

公女の更衣室に入ると、ショーケースをじっと見て・・・


「今日のお召し物は、爽やかな一日に相応しい飾りで飾って差し上げて。髪は軽やかなウェーブに整えて差し上げる様に」

「はい、畏まりました」


彼は指示すると、髪飾りのリボンとアクセントのブローチを取り出した。


「ではお嬢様を呼んでくるから用意を頼む」


更衣室の隣がスノウ・スプリングの部屋、足音を立てずに進んで・・コンコンとノックする。


「お嬢様。私です。朝ですよ」


返事は無い。懐中時計を見ると、6時40分。再度ノックしても、返事は無い。


「・・・開けますよ」


スンとした彼の顔がじわじわ変化、暗くニタリと笑う。

ドアを開けると、部屋の主は未だ布団に包まっている。


ああ、着替えを7時10分までに終えないと、朝食が取れませんよ。

フォートはそっと主人の耳元に口を近寄せて囁いた。


「お嬢様。起きてください」

「んー」


モゴモゴと寝返りを打つのを、じっと見つめ・・再度囁いた。


「スノウお嬢様・・起きてください・・もう朝ですよ」

「ん・・?ん〜〜〜・・・」


目がしょぼしょぼして、ふにゃふにゃな表情の主人は、どう見ても威厳の欠片も無かった。

そのしょぼしょぼした目が徐々に回復していき・・いつものキリッとした目に戻り・・

フォートと視線が、というか彼との顔の距離が、あと数センチで付きそうなのに気が付き。


「ふぉ、フォート!!レディの部屋に、執事とはいえ男性が入ってくるのはやめてと言ってるでしょう!!」


ビクーーーン!!

猫がびっくりした時に跳ね上がる様に、主人は飛び上がると右手をブンブン振り回して文句を言うが、呼ばれた執事はしれっとした顔で、恭しく身繕いの用意を始めた。洗面器に水を注ぎ、タオルを腕に下げて主人を優雅な仕草で手招きする。


「お嬢様、さあお顔を濯いで。身繕いして目を覚ましましょう」

「だから!!こういう事は、侍女や女中にやらせなさいっ!!」


執事はゆるゆると首を振り、はぁと溜息で両手をやれやれと持ち上げる。


「彼女達はお嬢様のお召し物の用意をしています。私がお召し物を着せる役にしても良いと」

「〜〜〜〜・・もう!分かったわよっ!」


ベッドから勢い良く這い出し、スリッパをペタペタ音を立ててこちらにやって来た。

その前に執事は水に1、2滴オイルを垂らす。美顔効果もあるエッシェンシャルオイルだ。


「本日は公爵領のホワイトローズです」

「ま。良い香り」


主人は水滴を散らさない様に顔を丁寧に濯ぐと、彼を見ないまま手を伸ばした。

執事がその手にタオルをそっと乗せると、ぽんぽんと押す様に水を拭い、タオルを彼に押し付ける。

彼はそれを受け取り、ドアを開ける。


「今日はアイスグリーンのリボンを選びました。お気に召して頂ければよろしいのですが」

「フォートのセンスを信頼しているもの。ありがとう」

「畏れ入ります」


主人が出ていき、ドアが閉まる。

執事の手には、彼女が顔を拭いたタオル・・・


ポフッ


彼はタオルに顔を埋めた。そして、すりすりすり・・


はーーーーーーーーーん!!スノウの、スノウの顔を拭いたタオルーーーーー!!!

くんかくんかくんか・・・すはーーー・・・


先ほどまでのスンとした顔が、デレデレ顔に崩れている。この醜態は誰にも見せられない。


あー、お寝坊なスノウの、モニョモニョな顔が、もうたまらんのだーーー!!


「さて」


堪能したタオルをペイッと放り投げ、靴を脱ぐと、ビョーーーン!!

彼はベッドにダイブした!

そしてゴロンゴロンと転がり、布団に潜ってくんかくんか・・・すはーーー・・


「ああーーー!!スノウの体温ーーー!!あったかいーーーー!!幸せだーーー!!」


そして2分。

どうやら存分に堪能したのだろう、ゆっくりと這い出して、靴を履くと・・


シャアッ!!シャシャシャーーー!!

勢い良くシーツを引っぺがし、新しいシーツでピシッとベッドメイキング!!

手に持つシーツを彼は自分の部屋に放り投げ、古いシーツを持つと水場の洗濯カゴに放り込んだ。

主人の部屋に戻る頃には、丁度着替えが済んだ彼女が待っている。

彼は先導してダイニングルームにお連れし、お食事の用意をする。


主人の朝食は、いつもサクッと焼いたクロワッサンにフルーツ、そして彼が注ぐオリジナルブレンドの紅茶で締め括る。もちろん彼が厳選し、ブレンドした紅茶だ。


「良い香り・・フォートの入れる紅茶が一番美味しいわ」

「滅相もありません」


満足げに微笑んでお茶を嗜む主人を微笑んで見守る、彼の至福の時間は瞬く間にすぎて、登校時間となる。

朝食を済ませ、学園にご登校される主人をエントランスホールでお見送りして。

これが彼の毎朝のお役目、今日も無事完了した。


執事の顔だった彼の表情が、一瞬でキラキラと眩いオーラを放ち、右手を高く上げる。


「皆の者!用意を!」

「はっ!!!」


すると家人達がすっ飛んで来た。

靴が取り替えられ、ズボンを脱がすと中には制服のスラックスが現れて、ベルト装着、上着は制服のブレザーと取り替えられ(中のシャツは学園のシャツのまま)、ネクタイを取り替え、手袋をはめて、カツラを外して櫛で整えられ、ミストを軽く吹き付けて・・

みるみるうちに、5人掛かりでお召し替え、完了!!


「皆の者、感謝する!!では、行ってくる!!」

「はいっ!!アルフォート様、いってらっしゃいませ!!お気をつけて!!」


家人達はエントランスホールにずらりと並んで礼!彼にお見送りをするのだった。

彼は馬に乗ると軽く手を上げて彼らに会釈すると、馬を走らせた。




さて、この謎の執事・・その正体だが・・

実は!スノウお嬢様の執事、フォートは仮の姿!

真実の姿は、ボンブドゥール公国の隣、ブルボン王国嫡男にして第一王子、アルフォート・ルマンド・ブルボンである!!そしてスノウの婚約者でもあるのだ!


王子ともあろう者が、なぜに執事?それは遡る事5年前・・・・





彼とスノウが出会ったのは、二人が10歳の時。5年前の祝賀パーティーでの事。

可愛いスノウに、王子は一目惚れしたのだ。

彼は父である国王におねだりし、スノウとの婚約を成立させたのである。この時彼は12歳。


だが隣国とはいえ、なかなか会える機会も無く・・

しょんぼりする息子を憐憫した国王は、提案をしたのだった。


「15歳になったら隣国の学園に留学しても良い」

「3年も待てない!!」


とてもじゃない、我慢ができなかった王子は、単身隣国に向かった。

そして公国の領主、スノウの父親ボンブドゥール公爵の元に行くと、


「護衛も兼ねて、私を執事にして欲しい!」


こう嘆願した訳だ。


彼の申し出に、公爵夫妻は心が揺れた。

それは隠蔽されていたある事件・・半年前に起こった、スノウの誘拐事件だった。

スノウは怪我ひとつ無く保護され、犯人はさっさと死刑となったが、両親には大変衝撃だった。

拐われた時に眠らされていたので、怖い思いを感じる事が無かったスノウは、これといったトラウマもなかったのが救いだが・・

事件を知るや王子はこれ幸いと、執事になる事の利点を猛アピール。


「俺が公女を守る!私はこう見えて魔法も剣も出来るから」


そしてニカっと笑って、胸を手でパン、と叩いた。


「安心しろ。俺に任せておけ」


すると・・・顔を真っ赤にしてフルフルと震えていた公爵夫人が、


「きゃーー!!クライ様ーーー!!同じ台詞ーーー!!」


突然絶叫を上げたのだった。夫人の奇声にちょっとビビった王子だったが・・


なんでも夫人が昔読んでいた少女小説の、主人公『クライ』がヒロインに言った台詞と同じだった、それがツボだったのだとか。夫人の初恋は、この『クライ』だったそうで・・


これが功を成し、王子アルフォートは執事&護衛に採用されたのだった。


父親でブルボン王国の国王も、呆れながらも承認してくれた。


「当然、剣も学問も手を抜くでないぞ。少しでも手を抜いたら連れ戻して、15歳からの留学も無しにする」

「勿論です!父上!」



こうしてアルフォート王子は、執事『フォート』として公爵邸に勤務する事となった訳だ。

彼の正体は、スノウ以外家人達も全員知っている。

家人達にも奥様直々に説明があり・・同じく女中や侍女達も大喜び!!男衆もニヤニヤとして反対していない様子だった。


『皆でお支えいたします!王子様、頑張ってくださいませ!』


これには王子も頬を染め、照れた。


「ありがとう。俺の至らない点は、指摘してくれるとありがたい」


家人達に混ざり、使用人と同じ暮らしを始めたフォートだった。


この時アルフォート王子・・執事フォートは12歳。



こうして・・

彼の公女を守り、仕え、甘やかす日々が始まったのだった。


話も徐々に増えてます。他の話も読んでちょ。


pixivでも変な絵を描いたり話を書いておるのじゃ。


https://www.pixiv.net/manage/illusts/

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