7話 お食事(前編)
ここから始まるストーリー(キラッ
あれからまた二ヶ月程が経っていた。
二ヶ月あまり過ぎていたのにも理由がある。
次のスキルレベル60に到達する為の期間だ。
この二ヶ月、特に代わり映えのしない生活を送っていた。
朝は規則正しい起床し、ゆっくり準備してから出社。帰社も定時には会社を出て素早く帰宅。就寝までの残りの時間を堪能する。そして日をまたぐ前に就寝。これが一日のサイクルになっていた。
昔までは自宅を出るギリギリに起きてから即時準備に取り掛かり、満員電車に揺られながらギリギリ出勤。帰社の時間は終電前まで働き、また満員電車に揺られて眠たい目を擦りながら帰宅。夕飯も食べず風呂にだけ入り就寝。そしてまたギリギリに起きるって言う切羽詰まった生活をしていたのだ。
それでも余裕がある生活と言うのは充実感が違う。
プロジェクトが成功して仕事にも余裕が生まれ、
そのおかげで私生活にも遊ぶ時間が生まれる。
遊ぶと言ってもアウトドアな生活を送るわけではなく、
部屋に引きこもり、溜まったラノベや漫画、アニメを読破していく事が俺を満たしてくれる。
その時間が精神を保たせるのでまた次の仕事も頑張ろうと言う気持ちになる。
余裕がある生活と言うのはこんなにも素晴らしい物なのかと最初の頃、スキルを獲得して少し経った後に驚いていた。
今思ってみれば人間というのは余裕が無いと本当に精神衛生上宜しくないんだなと昔の自分に感心していた。
そしてまた余裕が生まれた人間には、女性との交流も増やしてくれるのだなと。
先日、連絡を交換してからちょくちょくやり取りをしている道長さんとなんの縁があったのか、食事に行く事になった。それが今日。
スキルレベル60への到達と道長さんとの食事が被ってしまったのだ。
勿論、男として女性との食事を蔑ろにする訳が無い。
ただこの間の事もあり、何かあってからでは遅い。
この前は助けられたけど、このスキルレベル60への到達がなかったが為に助けられなかったなんて事にはなりたくない。
なので少しだけ躊躇していた所だ。
そんな悶々とした思考も露知らず、道長さんから連絡が来た。
その連絡からはもう直ぐ最寄りの駅に着くのだそうだ。
本来、食事をすると言うのであればそれなりのレストランでも予約するのが男の甲斐性なのだろう。だが少しでも危険を背をっているのであれば自宅近くの方が何とかなる。
この為に複数箇所に指定場所を設定もした。勿論安全経路を確保出来る場所にだ。
他と違う箇所に設定したとすると、彼女の最寄りの駅の、それも人が寄り付かないだろう近くの公園を設定した。
さて、そろそろだろうと思い彼女が来るであろう最寄り駅まで徒歩で進んでいく。
「やぁこんにちは道長さん」
「や、やぁこんにちはです重咲さん」
「それじゃあ行こうか」
「あ、ハイ・・・あっ」
「今日は一日のこんなだけど大丈夫? 」
「だ、大丈夫ぇす。ちょっと吃驚したたげなのではい」
「じゃあ行こうか」
この短い挨拶の間に何があったのか、想像は出来まい。
今日の為に事前連絡して、手を繋ぎながら街中を歩いて行きましょうと決めて居たのだ。
期間が空きすぎて突拍子な事だと自分でも思うがこれはまた別のお話。
因みに余談だが、この話のきっかけは道長さんだったりする。それも先程の話の続きにでも。
さて、これから食事になる。
道長さんは休みでもあまり外に出ないのだそうだ。
その理由が、親の過保護。
先日の拉致未遂が発端な訳ではなく、元からなのだそうだ。
なのであまり外食をした事がないらしい。
ファーストフードも友達との数回程度なのだ。生粋の令嬢だな。
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