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私の名前は白築結依。都内の公立高校の一年生、だった。



そう過去形。


何故なら現実には絶対あり得ないと思えるような異世界トリップとやらが自分の身に起こったから。


いきなり知らない場所にいて、そこにいるのは見た目がまんま外国人の大きな男の人。私のことなんか全く見もせず一緒に来た従姉妹の優香ちゃんだけに話しかけていた。怖くて怖くてしょうがなかった。それに不安だった。これからどうなるのか、このままいないものとして放っておかれるのかな?それに、元の世界にちゃんと帰れるのかな?そんな事を考えてると、入り口の扉がバーッンって開いて更に大きな男の人がたくさん入って来た。


優香ちゃんを見るとこんなどこかもわからない場所に、なんでいるのかもわからないのに、全く怖がってないどころか目がキラキラしていた。

そうだった、優香ちゃんは大のイケメン好き。よく見るとどの男の人もとても整った顔をしていた。



皆んな私に気付きもせず話をしてここから出て行こうとしている。


どうしよう、置いていかれちゃうよって不安でブルブル震えていたら、男の人の中でも特に綺麗な?美人な?色気のある男の人が私に気付いてくれた。そして優しく声をかけてくれた。でももうその時の私は限界で足の力が抜けて倒れてしまった。でも床とこんにちはする前にその人が助けてくれて、そのまま違う部屋まで抱っこして運んでくれた。

そう抱っこ。お姫様抱っこみたいなのじゃなくて子どもにするような縦抱きだ。

もしかして小さな子どもに間違えられてる?


その時の優香ちゃんの目がものすごく怖かった。



優香ちゃんは従姉妹だけど、正直私のことを多分従姉妹だとか、同級生だとかそんなこと全く思ってないと思う。


両親が死んで、お母さんのお兄さんである叔父さんの家に引き取られたけど、叔父さんの奥さんである叔母さんも娘の優香ちゃんもなんでか私のことを嫌ってた。だから、家にいる間は掃除、洗濯、ご飯の支度は全部私の仕事。ちょっとでも遅れたら叔母さんからご飯抜きにされちゃう。お小遣いもないからお昼ご飯は持って行くべきなんだけど、そんな余分な物を作ると図々しいってまた怒られるから、結局お昼は食べれない。中学校までは給食があったからお昼がなくても、ご飯抜かれても大丈夫だったんだけどな。最近は一日一食とか、全く食べれないこともよくあったからどんどん体重が落ちていった。鏡を見るとガリガリの気持ち悪い自分がうつるから鏡を見るのが嫌いになった。


たまに叔父さんがお小遣いを内緒でくれたり、食べるものくれたりしてたけど、それも見つからないようにだから滅多になかった。



正直、知らないところは、知らない人は怖いけど、あの家に帰らなくて良いのはちょっぴりだけ嬉しいかもしれない。叔父さんに心配かける事だけが心残りかな。





別なお部屋に入ってお話を聞いた。帰れなくても特に困らないけど、やっぱり不安で、怖くて涙が溢れそうなのを一生懸命我慢してたら実はこの国の王子様だったアルバート様が背中をずっと撫でててくれた。なんだかこの人の側にいるのは胸がホッコリするなってちょっぴりあったかい気持ちになってたら、どんどんいろんな話が出て来て、またもや不安が溢れて来た。

それでも一生懸命話を聞いて、自分で考えなくちゃって思ったんだけど、なんだか色んなことがごちゃごちゃしてきて、全然考えれなくなってきた。どうしよう、どうしよう、ってそればっかり。でもそんな気持ちもアルバート様は気付いてくれて、ゆっくり休んで考えれば良いって優しく言ってくれたんだ。

アルバート様がそっと手を握ってくれたけど、お父さんとも違う、大きくて少し硬くて、でもとってもあったかい手だった。




お父さんとお母さんがいなくなってから、こんなに優しくしてもらったことなかったからとっても嬉しかった。


それでもそんな気持ちも優香ちゃんの言葉であっという間になくなっちゃった。



ねぇ、優香ちゃん。

どうしてそんなに簡単に引き受けるなんて言えるの?

そうやって最後にはいっつも私にしわ寄せが来るんだよ?それに私がしたことも全部自分でしたことにして、私は役立たずだって皆んなに言うでしょ?

今度もまたそうするの?

それにどうしてこんなにたくさん知らない人がいるのに、そんな酷いことが言えるの?わからない。優香ちゃんの気持ちが全然わからないよ。

私たち従姉妹のはずなのに。どうしてこんなに違うんだろう。




これから先のことも想像がついてやっぱり涙が溢れそうになってたら、あの初めにいた男の人、タイラー様?だったかな。あの人が私のことは必要ないって。

でもね、この世界に呼んだのはあなただよね?私だって来たくて来たんじゃないもん。魔物とか瘴気とか訳わかんないし、これからの生活のことだって不安で怖くてしょうがないのに、どうしてそんな無責任なことが言えるの?



すぐに返事をしない、すぐに聖女を引き受けない私が悪いのかな?






でも、アルバート様や国王様はゆっくり考えていいって。

最終的には受けないといけないとは思うけど、その前に気持ちの整理をちゃんとつけたい。中途半端な気持ちで受けて、途中でやっぱり嫌だ、なんて絶対したらいけないと思うもの。優香ちゃんやタイラー様がどんなことを言っても、私は私でちゃんと考えて答えを決めよう。


お父さんとお母さんがいなくなってから、初めてこんなに優しくしてくれた人たちだから。そんな人たちの少しでも役に立てたら良いなって思えるの。

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