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他にも書きかけのお話があるのに新しいのを描き始めてしまいました。

少しずつでも進めていけたらと思います。

あまり上手ではないので期待せず読んでいただけたらと思います。

聖女召喚の儀

ーそれはこの世界アニエスに定期的に現れる強力な魔と 瘴気を祓うことが唯一できる聖女と呼ばれる者をこの世界とは別に存在する世界から強制的に召喚するための儀式。

その儀式を行うことができるのはこの世界と同じ名を持つアニエス国にある中央神殿の最高神官長だけであり、責任者はアニエス国王とする。



そして今日、この世界が誕生して幾度となく行われてきていた聖女召喚の儀が再び行われようとしていた。

ー国王と神官長の許可もなく。




「タイラー王子、本当によろしいのですか?」


そう声を発するのは色白でひょろっと細く背が高いこの国ではごくありふれた金髪碧眼の神官服を着た男だ。歳は40になろうかというところか。

おどおどとし、自信なさそうにしているものの、これでもこの神殿の副神官長である。名をバーニスと言う。

そしてバーニスが問い掛けた相手は同じく金髪碧眼ではあるものの体格はガッチリとし、背は高く見目麗しい男だ。そしてこの国の第2王子である。年齢はバーニスの半分、20歳である。


「ふん。構うものか。

いいか、今この国には魔物が溢れ瘴気があちこちから噴き出している。それなのに未だに召喚の儀は行われていない。ここで俺が聖女を召喚し、魔物を退治し瘴気を祓えば父上も俺のことを認めて王太子になることができるだろう。

勿論、バーニスの手柄でもあるからな。その時にはユクト神官長を廃し、バーニスを神官長に推薦してやろう」


ニヤッと笑い及び腰になっているバーニスをその気にさせる言葉を紡ぐ。

当然この言葉を聞いたバーニスはすっかりやる気である。




「わかりました。タイラー王子のため、そしてこの世界の人々のためにも行いましょう」


そして部屋の中央にある魔法陣と呼ばれるものの前で己の神力を使い召喚の儀をついに始めてしまったのだ。






その頃王宮で第1王子であるアルバートと共に執務に当たっていた国王であるアーサー王は、突然の巨大な神力の放出を感じ取った。勿論側にいたアルバートも同様だ。

2人は顔を見合わせて頭を抱えた。


「あの馬鹿、ついに召喚の儀を執り行いおったわ」


「そのようですね。バーニス副神官長とコソコソしていたので恐らく執り行ったのは彼でしょう。

しかし彼の力量で行うことができるものでしょうか?」


「うむ。神力自体は神官長と同等かそれに近いとは思う。ただ、精神面が圧倒的に弱いのだ。あれではせっかく成功するだけの神力を持っていても何らかのミスは犯すだろうな。頭の痛いことだ」



「父上、神力がかなり高まってきていますし、とりあえず召喚の間に向かいましょう。ユクト神官長ももう向かっている頃でしょうし」




そうして2人は重い腰を上げ地下にある召喚の間に向かったのだった。







その頃召喚し間では眩い光が部屋一杯に広がっていた。そしてその光が収まった時、部屋の中央、召喚の魔法陣のある場所にあり得ない光景があった。それを見てタイラーもバーニスも言葉もなくただ見つめていた。



そもそもこの召喚の儀は聖女の条件に適ったものを呼び寄せる陣が刻まれている。聖女の条件とはその身にこの世界の者ではあり得ない膨大な聖魔法を宿しており、そしてその条件を満たす者はこれまでの召喚ではいつもたった一人だったのだ。


しかし魔法陣の上には2人の少女が立っていたのだ。

1人はこの国の者と変わらない金色の髪に薄茶の瞳、女性らしい凹凸のあるスタイルの良い見目麗しい女性と、背中の中程まである黒髪にこげ茶の瞳、小柄な背の少女だった。ただこの少女、随分と痩せており顔色も悪く、せっかくの愛らしい容姿を損なっていたのだ。



お互いが呆然としていたのも束の間、その女性が声を発した。


「あの、ここはどこでしょうか?一体何があったのでしょうか?」


そう言って薄っすらと涙をにじませるその表情は男心をくすぐるものだった。


「あ、ああ、これは失礼をした。

ここはアニエスという世界だ。あなたのいた世界とは別の世界になる。詳しいことはちゃんとした部屋に移動してからする。

とりあえず知らぬ人間についていくのも不安だろうから自己紹介だけでもしよう。

私はこの国の王子タイラーという。そしてこっちがあなたをこの世界に召喚した神官バーニスだ。

あなたの名前を聞いてもいいだろうか?」


そう言って手を取るのは金髪の女性。


「えっと私は白築優香です。あ、こっちでは名前が先なのかな?」


「ああ、名前が先で家名が後になる」


「あ、じゃあ優香 白築です」


では行こうかと手を引いて進むもののもう1人の少女のことは誰も気にしない。いやバーニスだけはチラチラと顔色を悪くして伺っている。

が、そんなことは気にしない2人が扉に足を向けたところで外側から扉が開いた。



「何をしている!ここには誰も通すなと言っただろう!」


てっきり警備を任せた騎士だと思いそう怒鳴りつけた先にいたのは



「何をしている、タイラー!!」


「あ、ち、父上っ」


先程神力を感じ取ってやって来た国王アーサーと第1王子アルバート、そしてこの国の人間にしては小柄な白髪の老人だった。



「ひっ!

ゆ、ユクト様っ」


その老人を見て慌てたのはバーニスだ。先程までのおどおどした態度からは考えられない俊敏さで老人の前に飛んでいき両膝をついた。


「バーニス」


しかしその老人はそう名前を呟いたきり言葉を発しない。

その事に更に慌ててしどろもどろになりながらもどうにか説明しようとするものの


「あの、これは、その………」


それっきり何も言葉が出ず代わりに額からは大量の汗が出ている。



はぁ



そう溜息をついたのは老人か国王か。


「とりあえず場所を移すぞ。このまま聖女殿をこんな場所に立たせておくわけにもいくまい。それに説明もまだなのだろう?」


国王のセリフにとりあえず安堵の溜息をついた。

が、


「ん?何だ?」


そう言ってアルバートが部屋の奥を覗いたことでまたもや汗が吹き出るのだった。


「あ、いや、あの、これはそのっ」


しかし、自分でもよく分からないことを説明することも出来ず意味のわからない言葉を発することしかできなかった。そして



「何?


聖女がもう1人だと?」



部屋の中、魔法陣の上には先程から放置されていたもう1人の少女が所在なさげに、そして誰にも説明してもらえず、声もかけてもらえず不安がピークに達して真っ青になり、今にもその大きな目から涙が溢れそうになっていた。



その姿を国王、そしてユクト様と呼ばれた老人も目にし、先程までの落ち着いた、だけど呆れた空気は霧散し驚愕の眼差しを向けるのだった。


しかしその瞬間少女の身体から力が抜けたのがわかり慌ててアルバートが駆け寄る。崩れ落ちた少女の身体を支えて顔を覗き込むとボロボロと涙を零し不安に青ざめた顔が呆然としているのに気がついた。

とりあえず抱え上げたもののその軽さに更に驚く事になる。



(この少女は幾つなんだ?随分と軽いが)


心配そうに時々顔を覗きながらも国王の元へと歩いていく。

その姿を憎々しげに見るのはもう1人の優香と名乗った女性。しかしタイラーが振り向いた時には先程までの不安そうな顔に戻っていた。



そしてその一部始終を老人が見ていた事には女性は全く気がついていなかった。


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