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「――カツも美味い。最高ね、ここ」
答える代わりに、僕は海老の天ぷらを一口齧った。本当はとても美味しいだろうそれの味を、僕は何一つ感じ取ることができなかった。
「……僕にも、親友と呼べる人がいるんです」
佐治さんの目がわずかに細まる。
「梓、っていうんです。もし、もしも、梓が、加志間さんと同じ目に遭わされたとしたら」
僕は絶対に法山を殺す。梓はきっとそんなことを望みはしない。いや、それどころか僕に対して激怒するはずだ。だがそれでも――僕は自分の全てを費やして、法山を殺す。
「――ありえるわね」
運命が扉を叩いた時のような音が、僕の脳内で鳴り響いた。
「アイツは今はアタシを標的にしてるみたいだけど、もしアタシに興味をなくしたら、次はアンタの番かもしれない」
――右手に持っていたはずの割り箸がどこかに消えてしまった。しかし、右手を目で見て確認すると、そこには確かに割り箸が握られているのだった。割り箸の感触はゆっくり、ゆっくりと戻ってきた。