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文明トカゲ  作者: ペン牛
八 懐旧の澱
196/263

17

「アイツは自分の手で直接殺す、なんてことはしないのよ。徹底的に追い込んで、追い込んで、生きているよりも死んだ方が幸せになるよう、きっちり環境を整えてくる。そのせいで美咲の旦那さんはギャンブルと女に狂って借金だらけになった挙句浮気相手に刺されて亡くなった。男の子は薬漬けになってから命に関わる自傷を繰り返してたけど、最後には焼身自殺した。美咲も脳腫瘍になって――苦しみながら死んだわ」

 言葉が、出てこない。いや、そもそも何を言ったらいいのかが全くわからなくなった。佐治さんが言ったことの全てが、あまりにも、あまりにも壮絶すぎて、そして何よりもおぞましいのは、

「――それらは、全て、法山のせいなんですか?」

「そうよ。そのくらいアイツには楽勝だってこと、アンタが一番よく知ってるでしょう」

 あぁ、そうだ、わかっている。法山ほどの力を持つトカゲにとっては、人の運命を操って破滅させることなんて、蟻の巣をいじくり回すくらいに簡単なことだ。

「アタシは美咲から、美咲自身にかけられた保険金を受け取ったの。この金でどうかアイツを殺してくれって。自分が味わった絶望の、十分の一、百分の一でいいから、どうか絶望を味わわせてから殺してくれ、ってね……美咲、本当に綺麗だったのよ? もしアタシが女だったら、こんな風に綺麗に年を取りたいって、本気で憧れてたくらい綺麗だったのに」

 アイツを殺してくれってアタシに縋りついてくる美咲の顔は、夜叉の方がよっぽどマシだったわ――そう呟いて、佐治さんはカツ丼のカツ一切れを一口で食べた。

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