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僕の席には佐治さんが持ってきてくれた水が置かれている。
「水、ありがとうございます」
「……あー、そりゃこのくらいはするわよ。アンタのおかげで無料で泊まれるわけだしね」
佐治さんの顔を改めて見る――少し、やつれているようだった。
「痩せたんじゃないですか?」
「……そう見える?」
佐治さんの声は珍しいほど弱気なものだった。
「はい」
わずかの間の沈黙。
「――やっぱり、法山のせいですか?」
空気が凍る。吐く息が真っ白になった外よりもずっと寒い。
「……だったら?」
射るような佐治さんの視線。先程までの穏やかさは何処に行ってしまったのだろうか。僕は恐怖に身を竦ませて――けれどもう一歩、踏み込んだ。
「加志間美咲さんについて、教えてもらえませんか」